ヴィトーンは、紫檀だろうか、木のしっかりした家具が素朴に置いてある、静かな静かな宿でした。ワットマハタートの精霊を浴びるような朝。持参していた目覚ましをかけて6時から自転車に乗り、遺跡の反対側、西側の丘へ登ってワットサパーンヒンへ向かいます。一面に朝日。
ここは、日本の女の子が殺害されたという場所。最後の景色がこの場所ならきっと天国にいる、そう思いました。朝イチのサパーンヒンで、昨日のイタリア人男性二人とまたバッタリ。またいつか、別の場所で!と手を振って別れました。帰り道、地元の人の屋台で目ん玉が落ちそうなほどじっくりと観察、散策。北側の覗き大仏様を拝んで、宿へ戻ります。
あと10分で来るはずのバス 来ない アユタヤへつながる夕焼け雲
バスを乗り継いでピッサヌルーク駅へ向かおうとすると、宿の人が直通のバスがあると言います。周りの自転車屋さんからもあと10分と言われるので、石のベンチで待っていると・・・バスが来たのは2時間後でした。そこから1時間。ピッサヌルーク駅では、アユタヤ行きの電車は洪水で全線ストップとのこと。トゥクトゥクに乗ってバスターミナルまで。乗り込んだバスは一等のようでエアコン付き、水とクラッカー付き、トイレ付き。途中の休憩所で、やけに全員が食事をとるなぁと思っていたら、バスの乗客にはご飯が付いているらしい。乗客の人が身振り手振りで教えてくれました。少しずつ、今日も雨が落ちます。あれよあれよと言う間に、両頬をビンタされるかのような勢いのある雨に。ま、さ、か、ね。と思っているとやっぱり、高速の途中がアユタヤの停留所でした。ふくらはぎまでたまった洪水につかりながら、小屋へ。びしょ濡れでただ立ち尽くす。しばらくすると近くの小屋のおじさん達が手招きするので行ってみると、まずはここに座りなさい、そしてタクシーに乗りなさいと眠っていた運転手を起こしてくれ、無事にアユタヤの町中へたどりつきました。
朝、2時間もの間バスを待つ間に、ようやくタイという国の手触りを得ました。宿のお兄さんは、あと10分と言いながら、丸々2時間、バスの来ない道路を見つめ続けていました。たった2時間が、私にもきっとTPにも、大きなそして永遠の何かを運んで来てくれました。