最後の夜

monna88882011-10-03

スクイレブンでは朝食が出ます。パンやスイカを泊まり客がみんなで黙々と口に入れます。素敵なドイツ人女性とスペイン人男性がどうやらバッタリ再会したみたい、目の前で喜び合っています。だんだんと重みを増したリュックを背負って地下鉄でルムピニーまで。寝ている宿の主人を起こして見た部屋は、ボロボロ網戸の共同シャワー。今日はタイ最後の日。ベッドカバーがチクチクする素材。ちょっと一度落ち着こうと、近所の食堂へ入ります。おじさんは調理中なので、冷蔵庫から勝手にドリンクを取りますよと声をかけて。


        


ゆったりとした対応、理想郷の食堂です。途中でファンもつけてくれて。このあたりはゲストハウス天国らしい、日本人のおじさんが声をかけてくれました。150Bで泊まっているとのこと、でも我々は今日がタイ最後の夜なので、検討した結果ホテルへ。2000Bも出すのは初めてです。地下鉄の駅から徒歩3分、ピナクル・ルムピニーは西洋風の豪華なホテル、東側の眺めは最高です。荷物を全部置いて、トゥクトゥクで30Bサラデーン駅あたりを散策します。食堂で鶏モモ焼きと青パパイヤサラダ120Bを食べて、屋台で20Bおやつをつまんで、スタバで休憩90Bして、色んな通りを歩いて。またホテルに戻り、ひと休みしてパッポン通りへ繰り出します。いつの間にか、今日が最後の夜になっている、本当だろうか。


晩ご飯をどこで食べようかと、終わりのある旅を実感しないように、ウロウロと歩いていると・・・スコール!ここ2日間は降っていなかったのに、バンコクも私達の旅にスコールを与えるのね。そう思いながら、大通りの銀行前で雨が止むのを待ちながらトゥクトゥクのお兄さんと話し込みます。何時から働いているの?夕方4時から夜1時まで。昼まで寝てる。君たちは子供つくらないの?うちは11歳の子と5歳の子がいる。幸せね、と言うと目を伏せています。隣りの駅まで10Bで乗せて行くよ、それは安すぎて怪しいと何度か訴えて。ホークスのオーティズ系の顔、私のつたない英語で完璧に会話が成立する。今日はバンコク最後の夜だからタイ料理を食べたい、駅の近くでどこかいい食堂を知ってる?と尋ねます。雨は止まないけれど、よし出発といぶかしげな顔のTPを引っ張って出発!スコールの水たまりを踏みながらトゥクトゥクは猛スピードで進みます。あ、駅過ぎたよ!と言うと、いいレストランがあるから!とますますスピードアップ。でもちょっと遠くない?遠いよ!というとあと3分と言う。でも私たちは普通の食堂に行きたい、そこ、高いんじゃない?というとそうでもないと答える。でもだんだん駅から離れてるよ!何だか怖いよ!必死に訴えつつレストランの名前は何?あー、思い出せない。オーティズはガンガンに飛ばします。遠過ぎるよ!と叫びながらどんどん暗い小道へ入って行って。少し、死を意識しました。ぐるりと回って着いたところは地元警官やリッチな人がいるレストラン。メニューを見ると一皿300B以上。日本の感覚では一皿5000円くらいに思えます。次々に何も知らない観光客が怯えて連れてこられています。私は運転手に歩み寄って、バンコク最後の夜って言ったやない!ここは高過ぎるよー!と訴えると、彼は悲しげな顔になりました。真っ暗闇でタイマンです。それからウワーッと泣いたふり。じゃあ送って帰るという彼の言葉に背を向ける。すかさずTPがもう行こうと私の肩を抱いて歩きはじめました。



地球の歩き方によく載っているレストラン詐欺。とはいえ私が勝手に払った10Bと、色んな思いを込めたチップ20Bだけで済んだ。TPは止められんやった俺の責任などと言っています。え?そんなことないよー。豪雨の中、「ここは、どこだろう?」歩いて歩いて歩き回って一軒のバーの軒先で雨宿り。チラチラ後ろを見ると、日本人らしいカップルが。意を決して声をかけると、ヤッター、日本の夫婦だった。地球の歩き方を見せてもらって、自分たちの居場所を確認します。北海道出身のYさんと奥さん、マラカスの小さい玉が紐でつながった楽器を、吉祥寺のライブハウスで演奏して旅行に来たとのこと。話してみると、私達に負けない?同学年仲良し夫婦じゃん。だんだんと氣持ちがほぐれて、上京したら泊まりにきてねと言いました。乾杯を交わして、ビックリするような紐マラカス演奏も披露してくれて、菊の花のような握手で別れます。


タクシーでホテルに戻る間、ゆっくりと見る街。最後の最後にオチがついた、でも良い結果になった、TPから誉められました。あたしゃ騙されたって、いい方へ持って行くんだ。いつでも、これからも。嬉しくなりすぎて、夜中。ついホテルを抜け出して地元の店であれやこれや生活用品を買い足し、地元のバーでビールを飲んでいるとTPが迎えに来ました。よくこの場所がわかったなぁという場所で。さ、す、が、TP。妻想いだね!と腕を組んで高級ホテルへ戻ります。さっき、だまされた時の嘘泣きよと言うと、わかっとった。と男の顔で答えています。ぷぷ、TPは久しぶりのY夫婦との日本語会話で自分たちの旅の顛末を、終わらないお喋りで語り続けていたっけ。最後の日、つまり明日からはまた私達の日常が始る日。完璧な采配で、最後の夜はホテルでカップラーメンを食べました。よくもまぁ、探しに来てくれたね。ありがとうZZZ…ZZZ…友達へのお土産をリュックに詰めながら、ZZZ…アスは、ニホンねZZZ…