DantonParis

monna88882013-10-28

夕べの宿、ペラヨにリュックを置いたまま身軽になって、カタルーニャ広場まで出て朝食を食べました。一人前9ユーロ!震え上がるほど高い朝食です。思い返せば、旅行の前日に5千円だけユーロに交換するとたったの35ユーロになってしまって悲しくなったっけ。今1ユーロは130円台。それがスペインの両替所では179円になっているのでグラナダのヒロシアドバイスに従って両替よりもうんとマシという初めてのキャッシングに挑戦しました。街中のATMで、海外旅行保険が付帯されているからと作った丸井カードを差し込んで、暗証番号を入れるとちゃんとユーロのお札が出てきました。たったの35ユーロはコーヒーやらビールやらパンやらで紙くずのように消えて行ったのです。この国に来て買ったものはまだガウディものがたりという絵本だけなのに!



その「ガウディものがたり」というお土産屋コーナーで買った絵本を昨日、寝る前に読んだところ胸が詰まるほど感動しました。そこで、昨日はサグラダとカサミラの衝撃で精根尽き果てて、もうこれ以上自分の中に入れると爆発しそうで恐ろしかったカサバトリョというガウディ作のアパートへ行きたいとTPへ切り出します。予定を変更して早速、アパートへ行ってみると、手すりや壁の触り心地、光の入り方、景色の見え方、どれもこれもどれもこれもがすっと入って来て、その優しさに包み込まれます。カサバトリョのお土産売り場でこの国に来て初めて、日本人旅行者の女性たちが普通に話しかけてくれました。写真、撮りましょうか?と。短い立ち話でもその氣安さと壁の無さに心がなごみます。



お天氣もいいので、グエル公園まで歩きます。この国で何度も見かける、リンゴを食べる人がまた。電車の中でも、特に旅行者は何も買わずにリンゴを食べていました。グエル公園まで歩くこと、旅行前に観たDVDではすぐ近くに思えたのに、歩いても歩いても到着しない。



途中で道を尋ねながら、ウノ、ドス、ウノ、ドス、と自分を励ましながらようやくたどり着いたグエル公園、中へ入ってみると肝心の公園は情報誌に載っていなかった入場料を取られることがわかりました。ひとり8ユーロ。たどり着くまでに疲労困憊したので、公園は外から見るだけでいいと言うと、TPは入場券を買いに入り口まで戻ってくれると言います。待つこと数十分。やはり、入ってみて間近で眺めなければわからない手触りがあるという大きな教訓を得ます。モザイクの並び方、景色の見え方、そして何より空氣が少し、その色と匂いが違う・・・!



ベンチに捨てられていたペットボトルまでも、ひとつの作品のよう。


公園の中には、幼稚園も。いつの間にか日も暮れたので、グエル公園からカタルーニャ広場まで歩いて戻ります。帰りは下り坂の一本道のはずなのに、途中で職場へのお土産を買ったりしているうちに、いつの間にやら扇状に道を間違えてはるか遠い彼方、最初にAVEが到着した駅の方まで来ていました。



地図から外れた場所で、自分たちがどこをどう歩いたのかすらわからず、今どこに居るのかすらわからなくなったとき、通りかかったバル、DantonParis。ひとりで店を切り盛りしているデンゼルワシントンかと思うような清潔な笑顔の男性が出迎えてくれました。豚皮とししとうをウノ、ウノと指差し注文すると、両方とも唐揚げになって出て来ます。その美味しさったら!


ふっくらした肉マンのようなものを頼むと、ホットサンドのようにペシャンコになって出て来たり。この観光客の多い国では何度もすれ違う観光客からジャポネーゼジャポネーゼと聞こえてきたり、物売りの人からアンニョンハセヨと声をかけられたり、店の人からも中国人か日本人かを聞かれたりし続けていたっけ。それなのにこのお店は場所もどこだかわからない街、どこの国出身かとも聞かれずに、一品ずつテーブルに置くたびに「ボナペティ」とさり氣なく出してくれるし、お客さんも地元の人だけ。外のテーブルでも若いカップルや老夫婦がビールの小瓶ひとつだけを注文して長い間語り合っています。チャンネル替えてくれ!適当に頼む!ワリカンだといくら?次々と入ってくるお客さんたち。デンゼルの手が空くのを待って、スペイン語会話集で「道に迷いました」を指差すと、サッと老眼鏡をかけて、すぐにSi、とうなずき、どこへ帰りたいの?泊まっているところはカタルーニャ広場の近く、地下鉄の駅はありますか?と尋ねると、地下鉄よりもバスがいい、その道を2ブロック歩いたらバス停があるから59番か14番に乗って、カタルーニャ!と運転手に言えばいい、そう何度も繰り返して教えてくれます。


お腹いっぱい、胸いっぱいで「ラクエンタプルファボル(お会計お願いします)」と言うと、ビールをお替わりしたにもかかわらず、わずか10数ユーロ。それなのにTPと二人分の財布をかき集めても現金が足りず、カードも使えないそう。あわてた私は、すぐに現金を下ろして来ます!と、思わず、有無を言わさずTPを人質のように置き去りにして、店を飛び出したものの、どこへ行けばいいのやら店の前の交差点で途方に暮れていると、驚かさないようにちょうど良いボリュームとタイミングで後ろから声をかけてくれて、一番近いATMまでの道を教えてくれます。


教えてもらった通りのバス停で、ちゃんと「カタルーニャ!」と告げてバスに乗って戻る道。信頼されたことの嬉しさ。明日は早朝の飛行機なのに、まだまだウロウロしたくて眠たいのに遅くなっても石の街をぐるぐると歩き続けて。時間に爪を立てて静止させたい。グイッと。