TP、ローマでスリにあうの巻

monna88882014-10-23

ひと晩中、揺れていたように思う。夜中に目が覚めました。立ち上がってみるとおととっと壁にもたれかかってしまうほど揺れています。船は出港したんだ。部屋を出て壁づたいに歩いて甲板へ出てみます。夜の海は自分の目が見えなくなったかと思うほど真っ暗。今どの辺りにいるのかさっぱりわからない。また部屋で横になったり起き上がったりを繰り返すとようやく朝日が上って来ました。今日も一日お願いします。
  
フェリーの中を探検すると、ショップの商品も棚から落ちてしまっています。やっぱり揺れていたんだ。6時半にはナポリへ到着する予定だったけれど、そう思いながらもベッドに横になるといつの間にか二度寝の熟睡をしていました。ぱち。目を開けると時計は9時半になっています。あわてて外に出てみるとそこはもうナポリだったので腰が抜けるほど驚きました。丘に向かって並ぶ色とりどりの建物、教会の屋根、港で働くナポリの男たち。急いで部屋に戻ってTPを起こします。な、ナポリにおるよ!外に飛び出したTPも腰が抜けるほど驚いた顔で戻ってきて、あわあわと下船の準備をします。結構人が乗っていたんだ、何百人かいるみたい。ぞろぞろと降りた人たちはそれぞれの目的地に向かってスタスタと歩き出しています。わたしたちもその流れに乗って地図を広げながら初めての街へ歩き出します。
  
ひっ、ポケットが切り裂かれたバッグが捨てられてる!スリに注意とは聞いていたけれど。震える思いで70ユーロの入ったズタ袋を握りしめます。

わ、テレビの中の景色みたい。どこを見てもナポリ、歩く人全員が大声でお喋りをしているナポリ、何もかもナポリ。試しに入ったカフェでは誰もが命がけのお喋りに夢中でさっぱり相手にしてもらえません。ナポリにあてられて熱が出そう、カフェの椅子に座り込みます。そんな中TPは私がどうしても食べてみたいと言った店頭のパイを、店の人を何とか連れ出して指差して買って戻ってきてくれました。「コーヒー、注文のレシートをカウンターに出したらその場でビリッて破られてさぁ、いつまで待っても出て来んと。でも何とか伝えてレジの人が話してくれてやっと出て来た」くたびれたTPの顔は灰色に近い色になって。道路脇のテーブルで食べるパイはオレンジピールがたっぷり入ったレモン風味のサクサクパイ。信号のない道路をこれまた命がけで渡る人たちを眺めながら、この味は一生忘れないだろうと思ったりします。地図を見間違えて入った路地の危険な匂いも、大通りの賑やかさも、車だらけの街もピザを食べるために列をつくる人たちも全部がナポリ。ピザをちゃんとフォークとナイフで食べるのもナポリ。お喋りの声とエンジン音を全身に吸収します。

FRESSIA ROSSA。高速鉄道の切符を買うだけでも券売機と格闘。ユーロ紙幣がスイスイと吸い込まれて。TPとは座席の列番号が違うと思って乗り込むと席はお向かいでした。この後の目的地、ローマだって駅がいくつもあるので、ちゃんとテルミニ駅で降りられるよう目を皿にしてホームを見落とさないように。

2時間ほどでテルミニ駅に到着、西洋人だらけの駅の書店に平積みされているハルキムラカミになぜか温泉に入ったような安堵感。駅を出た瞬間、テラコッタ色の遺跡がいくつも、目の右端から左端まで夕日に照らされています。これがローマなんだ。高い建物がないから近くを見ても遠くを見てもローマなことに驚きながらも、まずは宿探し。最初に訪ねた宿では部屋があとひとつしか空いていないとのこと。主人のラッファエロさんは英語が得意、日本の人が好きな様子。ちょっと安心。

ラッファエロは私のつたない英語も理解しようと努めてくれます。明日は満室だから連泊じゃないならと案内された部屋は今のハイシーズン中は210ユーロ。「この部屋はわたしたちには良過ぎる」と言うとローシーズンの70ユーロでいいよと言ってくれました。明日はここから歩いて5分のところにもう一軒B&Bがあるからもし良かったらそこに泊まって、ここより安いよとのこと。明日までに考えとくと答えます。部屋で休んでいると、ネット予約した別のお客さんの声。ラッファエロとの会話が漏れて聴こえてきます。ドイツ人カップル?部屋に難癖をつけてまけてくれと言っているよう。30分も交渉が続いてもラッファエロは70以下には絶対にまけられないと言い返しています。ラッファエロ、わたしたちには底値を言ってくれたんだね。グラッツェ

日が暮れかける頃。歩いてローマの街へ繰り出します。どこを見てもローマ。アン王女がジェラートを食べたスペイン広場ではたくさんの観光客にもみくちゃになりながら見下ろす街。バチカンが見える。そしてインド系?な人たちが盛んに売り込もうとしているものは、自撮り専用の伸び縮み棒。けっこう売れてる。地下鉄にも乗ってみました。混み合った電車で近くに立っている白髪紳士が、目が合った私に何かを教えてくれようとしています。キョトンとしているとTPの隣りに立っている若い女の子を指差して何かを言った瞬間、たまたま発車前に開いたドアから女の子は飛び出して行きました。TPいわく「肩掛けバッグにその子が自分のバッグをかぶせてきて、おかしいなと思ってカバンをめくったら、まさに俺のバッグのファスナーをピーッて開けよったけん、その子の手ごとつかんで閉めさせた」そう。紳士にお礼を言うと何てことないよという顔で奥の方へ去って行きました。地球の歩き方には、満員電車だったら乗らないくらいのつもりでと書いてあったっけ。ローマのレストランで食べるカルボナーラはアルデンテを超えてほとんどお湯につかった粉みたい、それがまた美味しく、いえボーノ。やっとイタリアに来た実感が少しずつ湧いてきた。宿に戻って目を閉じると、目の中にはテラコッタ色の遺跡が夕焼けの色と混じって、どこまでも広がっていました。