ローマが与えた試練2つ

monna88882014-10-24

目覚ましを6時にかけても、その前に目が覚めます。どうしたあたし。窓を開けてここがローマなことに呆然とします。まずは地下鉄に乗って朝のバチカン市国へ。ひとつ手前のレパント駅を出てすぐのカフェで朝ごはんを食べます。まずレジで注文をして、そのレシートを持ってカウンターで出してもらう仕組み。何度かチャレンジしてコツがつかめてきたので「ドゥエ カフェアメリカーノ(コーヒーふたつ)、ドゥエ コルネッティピッコロ(クロワッサンみたいなのふたつ)」と注文するとレジのおばあさんはじっと私の目を見て「スィー」と神妙にうなずいてくれました。通じた!もうこれで今日の仕事は終わったも同然。突然イタリア語を喋れるようになったのかしら?サンピエトロ寺院を目指して歩いても歩いてもずっと朝の空氣。ローマは朝が長いのかも知れません。
 
キリストさんはこれほど豪華な建物を本当に望んだんだろうか?というほどの絢爛な世界。サッと見て寺院のてっぺんまで階段を上がります。
 
ローマを独り占め氣分。今日訪ねるところを遠くから見て。朝のお祈りも終わって、嘆きのピエタへ近付くことができました。とにかく大、大人氣。日本語で「一日中見ていたいよね〜」とおじさんの声が聴こえます。チェックアウトが10時半なので、また地下鉄に乗って宿に戻ります。
 
宿の女性が、ラッファエロからという電話を渡してくれました。「今日どうする?クリーニングレディーに歩いて6分のB&Bへ案内させるから、見てから決めて。60ユーロでいいから」シャワー共同はちょっと嫌だったけれど、まぁ行ってみるかと歩き始めます。歩けども歩けども。10分は歩いたでしょう。ひと目見て、いいねとチェックインします。またラッファエロに電話をつないでもらうと、60プラス外税と言うので、ちょっと待って夫に相談すると答えるとなぜか、それならいい60でいいとまけてくれました。こんなに広い部屋で過ごすのは久しぶり。ひとやすみしながら窓からの景色、100均のような1ユーロ均一のワゴンを眺めます。ローマっ子が一所懸命品物を選んで買ってる。タッパーが売れ筋みたい。
 
ラッファエロもやって来ました。どう?氣に入った?氣に入ってくれたら日本の人にも宣伝しておいてね、僕は日本へいつか行きたいと思っている、東京を見てみたいんだと言うので、そう言ってもらえると嬉しい、ありがとうと答えます。MARCANTONIOBNBという宿の名前。束になった宿の鍵ももらってどれがどれやら。とにかくその重たい鍵束を持って地下鉄に乗ります。TPがどうしても食べたいというカルボナーラが有名なお店へ行くと日本人のお客さんがいっぱい、そっと目を合わせてみんなでえへへと照れ笑いを交わします。シーフードのおすすめを尋ねると出て来たものは春菊とあさりのニョッキでした。ほろ苦でおいしい!とはいえお支払いのレシートが間違っていたのでスムーズには払えないし、水も有料だし頭の中はてんてこまいです。
 
日差しが強く、急に暑くなってきました。思い切って帽子を被ります。帽子を被っている人なんか誰もいない。高い建物がないということは日差しが直で目の中に入ってくるのです。アチアチ、アチチ。コロッセオの周りを2時間ほどかけて歩いて、真実の口の教会へ。こじんまりとして素敵な教会には中国からの団体さん、誰も割り込ませまいとギュウギュウに詰めて並ぶ姿がなんだか可愛い。口に両手を突っ込んで、フォロロマーノの遺跡群を眺めてコロッセオ、歩きに歩いて。戦って破れて埋められた動物たちをしのびます。どこを見ても遺跡、テラコッタ色の世界。また長い長い夕焼けの時間を経てパンテオン、でかっ!ナボーナ広場、カンボ何とか広場と夢遊病者のように歩く。くたびれたので映画館に入ってみました。イタリアのコメディ映画、言葉はわからなくても筋はわかります。ひとり8ユーロ。そしてトレビの泉はまさかの工事中!簡易池にコインを投げ込んで再訪を願います。水を抜いた池にコインを投げ入れている西洋人観光客たちは警備員の人からこっぴどく叱られています。
 
また歩くとスペイン広場に出ました。今日は早起きしてどれだけ歩いたんだろう。ローマはどこまでもローマ、お腹いっぱい。もう夜の8時だから宿の近くで何か食べましょうと地下鉄へ乗ろうとしたところ。

閉鎖されてる。何人か怒った人がいる。誰かが「ストライク」と叫んでいる。スト!?ストで地下鉄は全線ストップしているのです。こんなところで放り出されても、バスは行き先が読めず難しいしタクシーは乗らない方がいいようなことがガイドブックに書いてあるし。歩き回ったローマをまた歩いて宿に戻ることにしました。薄暗い道を呆然と歩く観光客の人々の群、地震の日の夜を思い出します。くたびれ果てて休んだベンチで泣いてみようかと思ったけど涙も出ません。

道に迷いながらやっと宿の近くに着き、食堂のおじさんがニッコリと話しかけてくれたので泣きそうになります。ピザ、コロッケ、すりみ揚げ、ワイン、色々と買い込んで宿へ戻ります。鍵束から玄関、内玄関、入り口、部屋のドアとクイズのように鍵をひとつひとつ開けてやっと部屋にたどり着きました。やった〜。もう夜中になっています。ホッとしてピザをひと口齧ると、あ、また春菊だったホロ苦。夜のB&Bは静か。シーンと静まりかえっています。トイレへ行ったTPが落ち込んだ顔で戻ってきました。「鍵がかかってる…」まさかぁと鍵束を持って試しにひとつひとつ入れてみたけれど、どうやっても何をやっても、食堂に置いてあった鍵を使っても押しても引いてもシャワー室兼トイレは開きません。あははと苦笑いで部屋に戻り、30分ほど落ち込んでみました。今日は死ぬほど歩いて、やっと帰ろうと思ったら地下鉄のストで、足の裏が限界になるほど石畳を歩いて戻ってきたというのにシャワーもトイレも使えないだなんて。近くのお店はもう閉まっているし、どうしたらいいんだ。しばらくの間落ち込んでいると、神様はトイレを使えないなどという試練をあたしに与えるはずがない、きっと何か乗り越えるためのヒントがあるはず、記憶をたどってみると宿を出発する前にTPがトイレへ入ったとき、もうひとつ隣りにトイレが見えたはず。TPにそう言うと、あそこは部屋だったよ、別の人が泊まっていると言うのを無視してそっとノックをして鍵束をひとつずつ突っ込んでも合いません。あきらめかけたとき、ふっとドアノブをひねってみると…キィ〜。ドアは開いていました。そしてシャワーとトイレが目の前にありました。真っ暗なはずなのにその空間全てが輝いて見えます。ありがとう神様!もう、部屋の花瓶におしっこして台所に流すしかないと思ったけれどそんなことせずに済んで良かった〜。追いつめられても、あきらめずに道を探そう、これからもきっとそうしよう、見えない神様にそう誓いました。