フィレンツェの花の夜

monna88882014-10-25

ベッド&ブレックファーストのBは朝ごはんです。日本のコモパンみたいなパンとクッキー。この宿、誰も泊まっていなかったんだろうか、人の氣配がありません。シンとした台所でエスプレッソを入れて飲んで出発です。

駅前では地下鉄職員とその仲間たちがデモをしていました。お陰で昨日は散々だったよと遠目で検討を祈ります。今日はまた高速列車でフィレンツェへ移動、自動販売機での切符の買い方も随分慣れてきました。1時間半ほどでもうフィレンツェ。電車で眠ろうとしても景色を眺めていると眠る氣になれません。農村やら山やらがずっと続いています。フィレンツェ駅から歩くと5分ほどでドゥオーモに着きました。
  
少しイスラムな感じの外観のピンクとモスグリーンの色の配置、その大きさにめまいがします。サンタマリアデルフィオーレ。あたしはこの教会を好きだと強く思います。そしてこの街を歩く人も好き。今日の宿ジャッポーネは66ユーロ。またいつの間にローシーズン料金にしてくれていました。窓を開けると道ぞいにドゥオーモが見える。リュックを置いて中心地へ繰り出します。
 
ドゥオーモの鐘楼に歩いて上ります。心臓の弱い人はご遠慮下さいの看板を横目に脱落者が数人出るなか上った塔からの景色は、足の裏がジンジンとしながらたどり着いた場所。どこを見てもフィレンツェ。ここでも観光客の何人かが写真撮りましょうか?と声をかけてくれるのでTPとのツーショットだけが何枚も重なって行きます。
 
地下のショップでエコバッグを買おうかどうしようか迷っているとTPが誕生日プレゼントで買ってくれました。15ユーロ。昼ご飯にサラダや魚料理を食べて、広場でお茶して観光に来た人たちを眺める。観光客はほとんどが西洋人だな。この国では誰もが写真撮ってあげようか?などと氣さくに声をかけてくれる反面、お礼を言うとプイッとすぐに去ってしまう。しつこくない感じ?何かを尋ねても答えてくれる人と、意味がわからないと肩をすくめてすぐに去る人がいる。怒っている人やら興奮して会話している人、お喋りに夢中な人、サッサとお客をさばきたい人、色んな人たちの国なんだと感じます。だんだんと薄暗くなる街、どこへ行こうかと相談してふと、もうすぐ閉館だけどミケランジェロ見とく?と軽い氣持ちで訪れたアカデミア美術館。そこは小さな美術館、また嘆きのピエタ素敵と思いながら間近でダビデ像を見た瞬間、腰を抜かしそうになりました。

思ったよりも大きい、そしてミルク色の大理石の鈍い光、あちこちで見かけたフィギアや模造品からは想像もつかなかったオーラを放ちダビデ君はただ何かを見つめ続けています。

ふくらはぎ、お尻、肩、膝頭、後ろ腕。どこから見ても角度によって感じ方が異なる、人間の身体ってこんなに複雑で細部までバリエーションが豊かな見え方をして、近付くと力強く、遠くへ行くとはかなく、何万通りもの角度があるのかと驚きます。これが彫刻なんだ、彫刻に生まれて初めて出会ったかのよう。熱に浮かされたように、ベッキオ橋まで歩きます。観光客でギュウギュウ。この国に時計もピアスもネックレスも忘れて来て心細かったので、ピンク色のピアスを買いました。アメリカの人がまけてくれと言っている横で買うとなぜか私までまけてくれていました。22ユーロ。石のピアスを耳に下げると突然、強氣が出て来ました。イタリアにどこかビビっていたんだろうか、何をしてもフィギアのように小さくなってビクビクしていたようにも思う。それがピアスをつけると、堂々と通常の人間サイズまでは大きくなることができるのが不思議でならない。
  
レストランがいくつか並ぶ裏通り、中でも何だか賑わっている店がありました。満席。外で待っているとお店の人に声をかけて。後から後からお客さんは訪ねてきますが、その度に店の人は「ジャッポーネが待っているから」と答えています。40分待っても席が空かないので去ろうとすると店の人はあと1分!と引き止めてくれ、食べ終わって出る人は「この店はベリーベリーベリーベリー最高だよ」とか「パーフェクト、どれを食べても最高!」と声をかけてくれるのです。待ちに待って注文したお料理は、牛モツ煮込みとボローニャ風何とか。メニューが読めないのでイタリア語辞典が大活躍。隣りに座ったイタリア人カップルは、わたしたちが頼む姿をじっと見て、その度にジャポネーゼについてのお喋りをしています。ガス入りの水を頼んでもガスについてのお喋りが止まらないのでウェイターに「イタリアではガス入りとガス無し、どっちが普通なのですか?」と尋ねると「人それぞれだよ、ガス入りと言っても普通の水に炭酸を入れただけだから本当に人それぞれ」とのこと。聞き耳を立てていた隣りのイタリア人カップルは、ひとつずつ料理が運ばれてきたところでよし、とうなずいて「チーズをかけるんだよ、君たちが頼んだものはどっちもティピコ。正解」と話しかけてくれました。ティピコって郷土料理って意味かな?どちらにしても正解を出せて嬉しくなります。カップルの男性は火野正平みたい。女性は倍賞美津子みたいで素敵。あたしとTPアジア人の一挙手一投足がお喋りの的となって見つめ合って燃え上がるようなお喋りの合間に、女性は男性のはげ頭に何度も熱いキスをしています。これがイタリア!

ひとくちごとにしあわせが立ち上る味だった、大満足で店を出るとやっぱりフィレンツェで驚きます。大道芸を二重三重に囲んでの大喝采、大声で笑って拍手をして帽子にお金を入れます。夢みたい。彫刻もいっぱい。ちょうどいいサイズの街でちょうどいい人数の観光客で、ちょうどいい氣候で、ちょうどいい夜の明るさ。宿の人も優しかったし、窓からの眺めは興味深いし。明日はまた違う街へ移動だって。ヤダな、まだまだフィレンツェにいたい。ベネチアなんか行きたくないと言ってみると笑ってスルーした後で、TPは倒れ込むように眠ってしまいました。この人もイタリアにあてられているんだな。寝顔を写真に撮ってみたりして、夜は更けて行きます。