まる一日機上の人

monna88882015-10-28

アムステルダム駅まで、早朝の空氣を胸にたっぷり吸い込んで歩きます。振り返って街を見て、ありがとうと何度もお礼を言います。駅構内のベンチで、サンドイッチとコーヒー、オレンジジュースの朝ごはん。電車で20分ほどで空港まで。飛行機のチェックインカウンターで、隣りの男性が係の人と揉めています。「これはパスポートじゃない」係の人がそう言っているものは、A4のコピー用紙を半分に折って作ったような小冊子、ちゃんと男性の顔写真と丸い判子が押してはあります。男性は、これが私のパスポートだと言って譲りません。荷物もなく手ぶら、迷彩柄のジャンパーは厚手で、細い顔に比べて何だか身体が異常に膨らんでいるようにも見えてきました。この人が爆発したらどうしよう、そう想像すると急に恐ろしくなってきます。通報されて空港職員に連れて行かれてる男性。もしかすると移民の人かも知れない。顔が真剣で、本当にロシアへ行かなきゃならない事情があるようにも見えました。

アムステルダムの空港では、出国検査で初めて「塩か何か持ってる?」とTPがカイロ(貼るタイプ)について調べられました。きっちりしているよう。また飛行機に3時間ほど乗ってモスクワへ。モスクワからは何かのスポーツ選手団が大きな身体でたくさん乗り込んできて、機内もズシズシと揺れるかのよう。時計をたっぷりと進めて、日本の時間に戻します。ここからは10時間ほど。ただただ、本を読みました。

プラットフォーム。映画にもなった『素粒子』は観たけれど、本を読むのは初めて、読もうと思ったことすらなかった本の世界は、多かれ少なかれ、似たようなことはあたしの知っている現実にもたくさん存在しているんだ、頭ではなく身体が深く感じ入っているのを、自分でも不思議に思いながら没頭して読み終わった本を閉じました。

途中で時計を見たら嫌になるから、もう永遠に飛行機に乗っているかのような覚悟で、寝たり、起きたり、食べたりします。