バス休憩のコツ、不機嫌マンダレー

ホテルで朝食を済ませて、荷物をまとめてロビーへ。10日もお休みをもらっているけれど、旅行するには全然足りないといつでも思います。贅沢な苦しみ。TPがマンダレーという街に行きたいと言うので、昨日の夜ホテルで予約した相乗りワゴン車を待ちます。ロビーで朝8時半から待機していると、9時20分に目を血走らせた運転手の人が、すぐ乗れ!途中で乗り換えるから荷物はそこら辺に置いとけ!とあわてて出発です。インレー湖、最高だったなと思い出に浸る隙すら無く、ワゴン車は砂煙を上げて爆走します。さてはこのオヤジ、遅刻したな?鳴り続ける携帯電話、もうすぐ着く!みたいなことを大声で叫びながら、何十台もの車をクラクション全開で追い越して行きます。もういいね、マンダレーに行けんでも、もういいね、そうTPと言い合います。20分経っても、30分経っても、40分経っても50分経っても追いつきません。あきらめかけた頃、ようやく道路脇に車は停まりました。ミャンマーの人たちがビッチリ乗ったマンダレー行きのワゴン車は、ドアも窓も全開にして、誰もが待ちくたびれた顔で、わたしたちを待ってくれていました。わたしたちのせいじゃないんだから、お待たせしてごめんなさいとは絶対に思わないようにして、普通の顔で乗り込みます。雰囲氣悪い。それでもワゴン車は走り出しました。

1時間ほどすると街の食堂で休憩です。何分?と運転手さんに尋ねると、20分とのこと。TPがトイレに行っている間に、ブラックコーヒーを2杯注文します。そして煙草に火をつけます。TPがトイレから戻ってきたら、私のおごり、そう言って優雅にコーヒーを味わいます(コーヒー豆を砕いたものをお湯で溶いただけのもの)。2杯で600チャット。コーヒー1杯30円未満。それからゆっくりとお手洗いに行きます。斜めがけしたバッグには、ジプロックに1回分ずつ切って折り畳んだトイレットペーパーを重ねて入れてあります。現地の人はトイレットペーパーを使わずに汲み置きの水で流すようだけれど、水ビシャビシャだと氣持ちが悪いので、トイレットペーパーを使います。トイレから戻って、優雅に残りのコーヒーを飲みます。完成した。乗り合いバスの短い休憩を、十分にゆっくり過ごす方法をあたしは完成させた。大満足でワゴン車に乗り込むと物売りの少年がやって来ました。あ、私の大好きなうずら玉子!隣に座っているおじさんに、うずらを指差して、お札を見せて、どれが適切かを尋ねると、500チャットで4個入りのうずら玉子を3パックが、ちょうど良い値段なよう。3パックは要らないと少年に言ってみたけれど、おじさんは通訳してくれて、やっぱり3パック買うはめになります。少年はおつりを返した方が良いかどうか迷うような顔をしましたが、TPが手を振ると、ニッコリと笑って、安心した顔になりました。うずらのゆで卵をむいて食べながら、そうだ、あたしはうずらのゆで卵を10個食べるのが夢だったんだ、そう思い出しました。ゆっくりとむいて、ゆっくりと11個、食べました(ゆで卵があまり好きではないTPが1個ちょうだいと言ったのであげた)。


ワゴン車は山道に入って行きます。車内ではちょっと音痴なミャンマー人歌手のCDがエンドレスで流れていて、車酔いしそうになります。赤土の崖崩れがずーっと続いている山道、流された家や車ほどの大きさの岩。道路沿いにはブーフーウーの掘建て小屋みたいな家が並んでいます。昼過ぎ、通り沿いの食堂で休憩です。またしてもたった20分、今度はコーヒーじゃなくてミャンマー国民食と言われるモヒンガー、それが無ければ鶏ラーメンを頼もうと決めていました。ヌードルスープ2つお願いします。出てきたものは得盛りライスが2つ。ちょっと待って、ヌードルは無いですか?と尋ねてもキョトンとした顔の店員さん。どうやらカレー専門店らしい。とてもじゃないけれどこの量のライスは食べ切れないからひとつにしてもらいます。

トイレへ。ミャンマーに来てから、TPも私もトイレに入るとブーブーおならが出るばかりで肝心の中身があまり出ません。ブーブーと音が響くのは本当に恥ずかしくてたまらないけれど、狭いホテルでは仕方なく、ブーブー聞こえるたびにお互いに爆笑して切り抜けています。やっぱりトイレではブーブー言うだけで、周りのミャンマーの人たちに恥ずかしくなります。

眠ったり起きたりしてようやく、マンダレーへ。ホテルの前まで送ってくれると言うので、地球の歩き方で適当に見つけた中心地に近いホテルを指定します。なかなか見つからず、運転手の人は何度も乗客のミャンマーの人たちに聞いて、スマホで調べてもらって、ようやくたどり着きます。流れるような英語を操る藤山直美似の受付嬢に、予約してないと言うとすぐに空き部屋を見せてくれます。どうやらミャンマーでは部屋を見せてくださいと言わなくても部屋を見せてくれる仕組みらしい。そして明日はどうするの?と聞かれたのでバガンに行きたいと言うとワゴン車を予約してくれました。ひとり9000チャットで5時間。マンダレーと言えば夕日が有名らしい。でも今日は曇っているから王宮の周りを散歩して、有名な寺の入り口まで行ってみたら?とこれからの予定まで決められてしまって、王宮へ向かいました。


王宮は、体育館が3〜4個ほど入りそうな幅のお堀でぐるりと囲まれています。TPはいい景色やねーと写真を撮りながら、やっぱり無理してでもマンダレーに来て良かったわ、ほら、これまでの街と全然違う、お金持ちが多いことない?ウォーキングしとう人がいっぱい、あっ、ミャンマーに来て初めて飼い犬見た!などと、とりたてて面白みのない街を、全力で面白がろうとしてるのか、あれこれとお喋りをしてくれています。予定をあまり立てない旅行でも、毎晩、明日はどうするかをあれこれ話し合います。私は経験上、私が行きたいと頑固に言い張ったところはあまり面白くなくて、渋々ついて行ったところの方が、まるで自分がずっと行きたかった場所かのように感激する傾向にあるので、渋々ついて来たマンダレー。今回は珍しくちっとも面白くない街に見えて、無口になっています。


中国から来た人たちが、ツアーバスを無理やり停車させてまで、車掌さんをうんざりさせてまで一眼レフのカメラで写真を撮りまくっているスポットで、TPも写真を撮っています。

寺の入り口、屋台で賑わっているところを歩いても、今夜はTPがどうしても行きたいという地元料理のレストランと決まっているので買い食いもできず、少しふてくされます。きっと移動が続いてくたびれているんだと思う。本当はもう一日ゆっくりして、ミャンマーの人たちみたいにお寺でお弁当を食べたりしたかったんだと思う。くたびれ過ぎて口を利かなくなった私を扱いかねたのか、TPはバイタク(バイクタクシー)を交渉してくれ、食堂まで連れてツーリングを楽しませてくれました。(神様、私の不機嫌に引きずられることなく、TPが旅を楽しもうと自分がやりたいことを全力で進めてくれていて、本当にありがとうございます)王宮が一辺1キロと考えると、2辺とさらにその先の先まで夜風を受けてバイクは走っています。その氣持ち良さは生きてて良かった〜という種類の氣持ち良さ。1台2000チャットは安かったかも知れない。バイタク運転手の青年たち(またしても長友似!)にお礼を言って、地元の食堂へ。

イヒヒ、おいしい。特にギンナンを炒めたものがおいしい。

この食堂、おいしいね〜!と喜び合います。g&gでビールを買ってホテルに戻ります。シャワー、出るには出るけれど水量が極端に少ない、身体についた髪の毛も流せないほどの水量ですね。


TPはシャワーも浴びずにくたびれて眠ってしまいました。私はインレー湖で買った黄色いカゴを眺めながら、このカゴを買って本当に良かった、お寺参りのときには脱いだ靴を入れられるし、何より、客引きの人たちからしつこく声をかけられることが激減した、このカゴのお陰でミャンマーにもっと近づくことができたと感謝しました。そして、氣に入らない場所で不機嫌になる自分のことを、一体どういうわけでそうなるんだろうな?と他人事のように考えてみて、考えてもわかんないや、そう思って、日記をつけてみたりしました。今回は久しぶりに紙の日記をつけています。紙に書いてみると、不機嫌だったことも全て面白かったことに変わるのが不思議。いつか読み返すのが楽しみです。