人口400人の島


宿のおじさんにタクシーを呼んでもらっていましたが、予定よりも早くドンドンとドアを叩き起こしてくれて、朝ごはんを急ぎで食べさせてくれて、予定より早く来たタクシーに乗せてくれて、宿の奥さんとふたりで両手を振って見送ってもらって、慌ただしく渡名喜島行きのフェリーに乗り込みました。早朝、一度起きて朝日を見に行ったのが良かった、この宿はSさんいわく防音にとても氣を配っていたようで、昨日は遅くまで外のテラスで宴会を開いていたグループがいたけれど、室内では全く、何の音もせずに熟睡できたっけ。

またフェリーに乗って雑魚寝部屋で二度寝三度寝、1時間ほどで到着した渡名喜島では、何となく予想していた通り、約束されていたはずの宿からのお迎えはありませんでした。公衆電話から電話すると「あっ・・・すぐ行きます」とのことで、やがて青年が車で来てくれて猛スピードで送ってくれます。赤レンガの風情ある一軒家に案内されて、決まりごとが書かれた冊子を渡されて早口で鍵やら晩ごはんやらの説明を受けた後で、TPが「それで・・・僕たちは、今日はここに泊まればいいんでしょうか?」などとトンチンカンなことを聞いたので、後から大笑い。島ならではの造りの一軒家に泊まるのが、今回の宿泊を選んだ醍醐味なのに、ここ以外どこに泊まるって言うと?と思い出してはまた笑います。どうやら、一見、打ち捨てられたような宿で、別棟のトイレとシャワールームには手のひらほどの蜘蛛がいて、裏庭の洗濯機には落ち葉が積もっていて、室内はしばらく使われていないのか虫の死骸がいくつも、土間の台所には殺虫剤やゴキブリホイホイが置かれているこの宿は、あくまでも受付だと思っていたそう。案内の青年は、キョトンとして、あ、はい、そうです、と答えていました。

てくてくと歩いて、貸自転車屋さんで自転車を借りて、この島の見どころを教わります。ウミガメを見られるらしい。自転車にはフクギの花がたっぷりと降り注いでいて、みんなで協力して乗れるように花を落とします。フクギの茂る道を通って、海岸、港、あちこちとサイクリングして、海に入って泳いでみます。サンゴが足に痛い。昼ごはんはたった2個所でしか食べられずそのうち1軒はお休み、もう1軒は今晩と明日の朝食べに行く宿の食堂。同じところだけで食べるのもつまらないので雑貨屋でカップ麺とさつま揚げを買って宿に戻ります。洗濯機の枯葉を取り除いて洗濯。日差しが強い!簡単な昼食を済ませて洗濯物もおおかた乾いています。外には白い猫が2匹。蚊やら見たことない虫やらを殺虫剤で仕留めます。

夕飯までの間、自転車で海辺まで。しばらく海岸を眺めて写真など撮っていると、カメラのレンズが突然調子悪くなってしまいました。どうしたものかなーとカメラの電源を入れたり落としたりして、ふと海を見ると、ニョッキリと、ネッシーのように、ウミガメの頭が出ているのが見えました。あわ、あわわ、「あ〜っ!」思わず声を上げると、ウミガメは首を水中に引っ込めてしまいました。TP、ウミガメがおる!ゆっくりと、いかにもウミガメの形でウミガメは泳いでいます。TPも、見えた!とふたりで海岸沿いをウミガメに合わせて移動します。やがてウミガメは沖の方に泳いで行って、見えなくなってしまいました。

また宿に戻ってもう一度洗濯をして、食堂へ。マグロの刺し身がたっぷり。島内に点在する宿に泊まっている別のグループとも一緒になりますが、最初に来た男性二人組は目を合わせてくれず、挨拶すらできません。モクモクと晩ごはん。次にきた40代前半の女性二人組は、目が合うと挨拶してくれたので少しお喋りします。女二人旅、すてきだな。昨日のSさんはひとり旅、それもすてき。

渡名喜島の名物は、わずか400人というこの島にお住まいの方たちの集落のメイン通りの、ライトアップ。日が暮れたら夜の散歩をしようと言っていたけれど、あらゆるところを蚊にさされまくるので早々に宿に戻ります。

この島の子どもたちは朝にお掃除をするそうです。

宿に戻って、布団に寝転びます。TPがテレビを点けずに過ごしたいと言うので、賛成。TPは私が貸した本「劇場」を読んでいます。薄目で観察していると、どうやら佳境なよう。寝たふりで観察を続けるとTPの目の表面に涙がプーッと盛り上がって、しばらくすると戻って、またしばらくするとプーッと凸レンズになって、また戻っています。パタンと本を閉じた音がしたので、起き上がって、感想を言い合います。

別棟のお手洗いに行くのも肝試し。えーん、やっぱり蜘蛛がおる!涙をこらえて部屋に戻ります。今度はTPの番。「あ、猫が来てくれた、わー、猫が来てくれたよ」などと可愛いことを言っている声が響いたので窓から眺めていると、白い猫と薄茶色の猫が、この宿の庭と通り道にしているようで、突然現れた侵入者、TPを睨みつけています。

戻ってきたTPには「よかったね〜」と言います。屋根の隙間からバタバタと蛾が入ってきて大暴れしたり、トイレへ行くたびにゴキブリみたいな大きさのものがゴキブリそっくりにぶーんと飛び交っているので恐ろしくなります。それでも、空には満月。そして満天の星空。眠るのがもったいないようだけれど、明日はまた那覇行きのフェリーに乗らねばならないので、眠ることにしましょう。グウグウ、四度寝。