3人家族の時代

朝、「ねえ、朝風呂行こう」と母から起こされて、行く!と飛び起きます。川棚グランドホテルの大浴場は、山頭火の句をあちこちに配置してあって、長風呂しても飽きません。その句をきっかけに母も昔の話しをしてくれます。「ばあちゃんんは本当に人のために働いてきた人やもんね」その精神はばあちゃんの母親、母の祖母がいつも自分のことより人のために一所懸命だったと、何度も聞いた話しも、また聞きます。「私が行ったら何度から梅干しとらっきょうを出してきてくれて。私が好きなの知っとって。すぐ糠袋持たされて、廊下の掃除をさせられた」



湯上がりには、ホテルの名物、朝食ビュッフェがお楽しみ。




そしてまた祖母のお見舞いに。祖母は抗生物質が効いて熱が下がったと、朝ごはんも食べたとのこと。もう早めの昼ごはんが始まるよう。「まぁ、みんなで来てくれたん?」ばあちゃんが喋った!あんたたち、ごはん食べた?


ちょっとお喋りしては、また遠い目になってしまうけれど、ばあちゃんはしっかり、ばあちゃんです。部屋に戻って介助の人が車椅子から抱きかかえてベッドに運ぼうとすると「ありがとう!」と大きい声で言っています。介助の人が「いつもこうしてねぎらって下さるんですよ、それが励みになってねえ」と言ってくださいます。「この娘は東京」と私を紹介してくれて。手をにぎると「姉ちゃん、手が温かいね〜」そう、ばあちゃんに似て、手はいつも熱々です。祖母は私のことを下の名前にさんをつけて呼んでくれたり、弟に対しての姉の愛称で呼んでくれています。

やがて介助の人も父も母も出ていくと、ブラウスの胸元をさぐるような手つきで「おこづかい」と言うので「大丈夫、大丈夫!ありがとう、そんなのいらんけん!」と涙が滝のように吹き出してしまいました。泣いたらばあちゃんは、もうすぐあの世に行かないといけないって思うかな?ティッシュですぐに涙をぬぐって。「姉ちゃん・・・肥えたねえ」とさすが、ばあちゃん。

1時間ほどばあちゃんと過ごして、ホームを後にします。

今はひとりになった、じいちゃんちに寄ります。母は、じいちゃんが父方の祖母の壺を預かっていると聞くやいなや、目を輝かせて、ここにあったんだ!と大喜び。箱を開けて、あら?もっとキラキラしとったけど、と不満そう。車のトランクに無理やり詰め込んで、さ帰ろうなどと言っています。鬼。

高速に乗って帰ると、追突事故があって思いがけず、20才の頃の通学路を通ることができました。「この店で、前の前の嫁の顔合わせがあって」などと家族以外の人には言えないような話しも出てきて。


くたびれたので、晩ごはんは鯛茶漬けです。父からの、うまかろうが?うまかろうが?攻撃にも、おいしい、おいしい。身がしまっておいしいね、わさびも一緒に浸けたのが良かったね、などと答えていると、母があんたよく付き合えるねとあきれています。弟が生まれる前の時代、まだ3人家族だった頃のままの夜です。