プラハの洗礼

レッドチェアーはとてもいいホテルだった。清潔で、過ごしやすくて。でも今日はもっと安い宿に挑戦するつもりなので、朝ごはんを食べたらチェックアウトの予定です。小さいホテルでは、宿泊客同士の挨拶も、ハーイなどと軽く言ったらあまり深入りしないこと、ニコッとだけして、それぞれ自分の世界に戻って行きます。

今回の旅行で、私もTPも何となくお腹がゆるいよう。水が違うのかな?ヨーグルトが濃くて美味しい。受付の女性に、昨日教えてもらったレストランを見つけられなかったと言うと、親切に「博物館に向かって、2ブロック歩いたらその角を左、最初の角を右」と身振り手振りも加えて教えてくれます。郵便局が目印ね?と聞くと、そうとのこと。今晩チャレンジしてみる、そう答えます。

チェックアウトを済ませて荷物を預かってもらって、さ、2日目のプラハはどこから始めましょうか?まずは近くのカレル橋へ。大きい川だけど何て川だろう。ヴルタヴァ川だって。ふーん、聞いたことないや。

また王宮。

そして教会。

ステンドグラス。大きい声では言えないけれどだんだんと、お城や王宮、教会に飽きてきました。こんな機会はめったにないのに、とんだ罰当たり者です。でも一度にたくさんヨーロッパ的なものを見すぎたせいで、お腹いっぱい胸いっぱい、もう詰め込むところが無いような感覚になってきました。


TPが行きたいというカフカが暮らした家。これも王宮の中に。

ようやくお城を抜け出して、またヴルタヴァ川のほとりへ。白鳥が山のようにいます。TPがどうしても行きたいというカフカ博物館へ。どうやら昔カフカの変身を読んでいたく感動したらしい。へ〜。


適当に歩いて入ったレストランは、観光地の中心地にありました。

この国のレストランでも、じっといい子で待つこと。ウエイターの人が来てくれるまで、じーっと待ちます。ハーイ!とにこやかな、感じの良い、感じが良さ過ぎて胡散臭いようなおじさんがやって来ました。チェコビールを2杯と、地元の料理を2皿。どう?美味しい?などとウエイターの人は何度も声をかけてくれます。そしてお会計・・・「サービス料は入っていないからね」と念押しされて渡されたレシートを見ると、頼んでいないパン(チェコの地元料理に必ず乗っているゆでパン)3つ分のお金も入っています。写真だとパン込みだったのに、別料金ってこと?計算していたよりも高いので、チップとして出そうと思っていた10%分のお金が5%程度になってしまったけれどまあいいか、店を出ようとしたところ、ウエイターのおじさんの顔がみるみる鬼の形相になって「・・・サービスに満足が行かなかったのか!」と声も低く大きくなってきました。ひ〜!どうりで他のお客さんも何組かモメていたように見えたっけ。どういう態度を取られても、これ以上のチップを出す義務も無いので、ただ嫌な思いをして店を出るだけ。甘くないんだ、世の中は、そのことが体感できているだけでも、幸せ。私にとっては。

ホテルの女の子が教えてくれた両替率のまともな両替屋さんでコルナを増やして、TPともよく話して、あと2泊、昨日のホテルに連泊することに。もっと安いところにも挑戦したけれど、受付がまだ空いておらず、やっと空いたと思ったら満室だったのです。受付の女の子にそう告げると、残り2室しか無くてベッドが3つある広い部屋だけど、連泊ならと同じ値段にまけてくれました。2泊分を払って、新しい部屋に入ります。広い!

一休みして、TPが行きたいというマリオネット劇場へ。複雑な道だけれど、あちこち歩いて少しずつ街に慣れてきました。ドン・ジョヴァンニの人形劇です。小さくて古い劇場はお客さんで満員、ブザーが鳴ると、舞台の下から白髪のおじいさん人形が出てきて、指揮棒を振り回して面白い動きをして観客を笑わせています。言葉はわからないけれど、何となくわかるみたい、良かった!途中休憩を挟んで、最後には人形遣いの人も登場して拍手喝采。客席から人形遣いの人たちが見えるところが良かった、人形が人間に見えた、そう興奮して感想を語りながら街を歩いて晩ごはんのレストランを探します。

ふっと、本当に一瞬、嫌な予感がしてチラッと振り返ると・・・人影がTPの肩掛けバッグのファスナーを掴んで、開けています。ウギャー!!!わー!びっくりしたー!!!こういうとき、私は咄嗟に叫んでしまうタイプ、大騒ぎしているのに、まだ状況はつかめていない。するとスリらしき人の相棒が、プッと吹き出して、ふたりで踵を返して暗闇に消えて行ってしまいました。

わ、スリ、スリやったね、地図を広げて観光客のフリしとったけど、バッグのファスナーが10センチほど開いていて。そこからレストランまでの道、恐ろしくて超早歩きで駆け抜けるように、誰も彼もがスリに見えて何度も振り返ります。

郵便局の角を曲がってやっと見つけられたレストラン、たくさんの人で賑わっています。ウエイターの人たちも誰もが感じよく、特に係は決まっていない様子、注文を受ける人も皿を運ぶ人も、ビールを持ってきてくれる人もみんな違う人だけれど笑顔が優しい。プラハは初めて?どう?味はどうですか?ビールはもういい?

それにしても、本当に美味しい料理。TPはローストポークサワークリームがけ、私は鹿の首肉の煮物、それぞれ分け合って食べるけれど、どちらも美味しいこと!いい店で良かったね〜、そう喜びます。

何度体験してもまだまだチップには戸惑います。昼のこともあるので、チップにマゴマゴ、今度はゆでパン代は別料金じゃない、10%程度の小銭が見つからずアワアワ、慣れてなくてスンマセンと卑屈な態度になってしまいながら、チップがよくわからなくてと自分でも滑稽なほどバタバタしていると、お釣りを返そうとしていたウエイターさんは、十分だよと言って、小銭を受け取ってくれました。ランチの鬼のような店と値段は変わらないのに、満足度は100倍だった、ホテルの女の子が教えてくれた店はやっぱりいい店だった、良かった。帰り道も街中の人がスリに思えるけれど、お腹の中はホカホカと温かくて、足取りも軽い。長いようでいて矢のように早い旅行、あと2泊しかない貴重な時間は、猛ダッシュで過ぎて行きます。

Bredovský Dvůr
http://www.restauracebredovskydvur.cz/restaurace/

何と読むのかわからないレストランだったけれど、たどり着くことができて良かった。グウグウ。