ミッションコンプリート

朝起きて、水を買おうと外に出ます。セブンイレブンがあちこちにあるのでアイスコーヒーを買ってみます、40バーツ。この国で、ここ数年で大きく変わったと感じることは、ブラックコーヒーが普通に飲めるようになったこと。7〜8年前の旅行では、マクドナルドでも甘いカプチーノしか無かったと書いています。都心だけかも知れないけれど、驚くことです。

ふと、そうだ電車で端っこの方に行きたかったんだと、そのまま一日フリーパス券を買って端っこから3つめ辺りの駅まで約20分、140バーツ。大きい日用品店があると検索していたので、降りてみます。前回買えなかったゴザを、今回はどうしてもゲットしたいのです。ロビンソンデパート。夕べの検索で、スピッツのロビンソンは、このタイのロビンソンから来ていると知り(知っていたはずだけれど忘れていたのかも)、ものすごく驚きます。そこで、ひとがいない場所で、大きい声でロビンソンに向かってロビンソンを歌ってみます。ところどころ歌詞はフフフン♪と。すると、あらためて何ていい曲なんだと自分で歌って泣きそうになります。福岡のMちゃんとマサムネファンになって燃えていたことが昨日のことのように身体から溢れてきます。

車だって何台も並べて売ってある、脳の縮尺がおかしくなりそう。ロビンソンデパートには総合受付があったので、手描きの絵(ゴザにおかっぱのひとが寝転んでいる絵)と、地元の言葉でゴザ、スアーと言って、売っているかどうか尋ねます。スアー、スアーは無いね、無いよね?と受付の4人で話して通りがかった他の店員さんにも聞いて、無いとのこと。じゃあどこで買えますか?と尋ねると、ここからバスで行った先の市場にあるそう。市場の名前「パクナムマーケット」のタイ語と英語、バス停とバスの番号を紙に書いてもらっていざ出発です。

教えてもらった25番(145番でも良いそう)がすぐに来たので乗り込み、女車掌にパクナムマーケットの文字を見せると、任せとけみたいな感じで頷いてくれます。適当に20バーツを払うとお釣りがジャラジャラと戻されます。千切れたゴミのようなチケットをよく見ると、6.5バーツと書いてあります。先払い制でどこまで乗ったっていいみたい。わーい。

バ・ス・・・。たのしい。窓全開、どこまでも乗っていたい。お向かいの乗客のおばあさんが私を興味深そうに見ているので、ロビンソンの受付で書いてもらったパクナムマーケットの文字を見せると大きく頷いて、ジェスチャーで何かを腹の中にしまう仕草を何度も地元の言葉で伝えようとしてくれます。そうか、財布を取られないように注意しろってことか、わかった、私も財布をポケットから出してしっかりカバンに入れて、腹に抱える仕草をして大きく頷きます。

10分ほどでものすごい賑わいの市場に到着しました。スリが多いのならカメラを出すのもためらわれます。急いでパシャッと撮って、すぐにカバンにしまいます。今回、出発の成田空港で本でも買おうとぶらぶらしていたとき、JOURNAL STANDARDで薄いのに丈夫で、軽いのにポケットが多い肩掛けカバンを買ったのです。ひとめぼれ。身体に吸い付くような一体感、肩の部分だけ幅広、サコッシュを大人っぽくしたようなただの黒いカバン。何ていい買い物をしたんだろうとうっとり。そのカバンを腹に抱えて、市場を歩き回ります。

食品が多いな、ゴザはここじゃないな。

お向かいの、家電や雑貨があるところに渡ってみます。

おや?ガス台。1,800バーツ。私もこんなガス台で調理してみたい。

ついに、おふとん屋にゴザはありました。母親と少年が店番をしています。ゴザを見つけて喜んでいると、一緒にうれしそうにしてくれます。小さいのと大きいのがある。大きいのはセミダブルベッドを少し短くしたくらいのサイズ、持ってみるととても軽く、これください!と言います。100バーツ。空港で両替したら400円、中心地で両替したら350円。


心の中で、また来ますね(何しに?またゴザ買いに?)と言いながらゴザを抱えて、また25番バスに乗ります。バスにいつまでも乗っていたくて、元のロビンソンデパートに着いても降りずにいたところ、バスは大きくカーブしてぐんぐん郊外の方へ進み始めました。どこ行きですか?と聞いてもどうせわからないだろうから、黙ってバスに乗っています。やがて、喉が乾いたのでバスを降りてスーパーに入ってみます。

スーパーでトイレも借りて、買った水をごくごく飲んで、しあわせ、思わずつぶやきます。

歩道橋で道路の反対側に渡ってバスを待ちます。6.5バーツだって、夢みたい。やがて25番バスが来て、ロビンソンデパートに戻って総合受付で、買って来たゴザを見せると、みんな「わーっ」と拍手して喜んでくれます。両手でグーのポーズもしてくれて。ありがとうとお礼を言って、電車で中心地に戻ります。

電車の端っこまで来てヨカッタ。

電車のフリーパス券は140バーツ、セレブの乗り物。バスは6.5バーツ、庶民の乗り物。今日の目的はもうひとつ、The Chonabod Shopです。もう昨日近くまでは行ったから、だいたいの見当はついている。3〜40分ほど電車に乗って街の反対側まで、最寄りの駅ラチャテウィー駅で降ります。

適当な店で腹ごしらえをして。

45バーツ。バス停で、バスを待っていた女子高生ふたり組に、プリントアウトしておいたThe Chonabod Shopの地図を住所を見せて、ここまでバスで行きたいけど何番のバスがいいですか?と尋ねると、スマホで調べてくれ、近所の商店のひとたちに聞きに行ってくれ、23番と調べてくれて何やら地元の言葉で文字を書きつけてくれる親切さ。心からお礼を言って別れます。やがて23番バスが来て。

と思ったら元23番バスの3を消した2番バスでした。角を曲がってしまうと言うので無料で次のところで降ろしてもらって、本当に23番バスを待ちます。誰もいないのでまた大声でロビンソンを歌います。


23番バスに乗って、女車掌に女子高生が書いてくれたメモを見せると大きく頷いて、ウィンクまでしてくれます、6.5バーツ。見覚えのある雑貨屋の通りでバスを降ります。

昨日、タクシーが入った袋小路を通り過ぎて。昨日、雑貨屋に電話をかけてくれたタクシーの運転手さんたちは今日はいなかったので、お礼が言えません。

ついに。お店のドアを明けて「サワディー」と中に入ると、白髪の女性がにっこりと出迎えてくれます。昨日電話したの私です、2度も、すみませんと言うと、ほとんどお休みは無いけれどたまに休む、ごめんなさいね、いえいえ、と会話してからゆっくりと店中の雑貨を眺めます。写真を撮ってもいいですか?と聞いて。

すてきー。

すてきー。

す、て、きー。石膏の胸像があったので、これ誰ですか?と尋ねると、バンコクで最初の美大を作ったプロフェッサー、もう亡くなったけれど生きていれば126歳、私と夫もそこの卒業生なのよと教えてくれます。へ〜。自分たちが卒業した大学に敬意を払えるって何てすてきなことなんだろう。夫婦で経営している雑貨屋だそうだけれど、今日はご主人は留守みたい。氣になる商品について、素材とか由来をポツポツと質問してポツポツとお喋りします。「今度来るときは、直接電話してください、お休みだったら悪いから」。職場で留守番をしてくれている女性に小さいポーチなどを買って、TPにもTシャツを買って、自分にはネットのバッグとMacBook Airがちょうど入る手提げ(入るかどうかご主人のパソコンで試してくれた)を買って、絶対にまた来ようと思いながら店を出ます。

わーい!

またラチャテウィー駅までバスに乗って、6.5バーツ。帰りのバス停がわからなかったのでクリーニング屋さんで尋ねて教えてもらいました。次は、このラチャテウィー駅を拠点にしよう!私が今泊まっている宿は、白人男性と地元の女性が腕を組んで入って行くのを何組も見た、どうやら連れ込み宿なんだ、だから安かったんだな。

大渋滞だってバスなら何てことない、ただ楽しいだけっ!

部屋に戻って、もこみちでキレイに磨き上げてある床に、ゴザを広げます。うっとり。荷物を広げたり、寝転んだり正座したりします。一氣に私の部屋になります。

ホテルの無料トゥクトゥクに乗って駅まで、元隣席のT君が教えてくれた中古レコード屋に行ってみます。電車で2駅。


ズドラングマレコード。おしゃれすぎて鼻血が出そう、店員の青年も佐藤健かと思うほどの色氣。CDを10枚視聴して、4枚買います。支払いのとき、佐藤健に手間を取らせたくないと思ったのか、カードで払えば良いものを現金で支払ってしまい、うっかり財布が空っぽになります。

ホテルに戻ってビールを飲みながらT君に「CD屋、行ってきましたよ」とチャットで写真を送ると「右上の僕も迷ったんです、今度貸してください」とお喋り。何だかうれしくなってゴザ買ったことや、バスに乗ったことをチャットすると、T君はタクシーの中でスマホを落として出てこなくて落ち込んでいたとのこと、明日僕もゴザ探してみますね、とか返事をもらって色々喋っているとテンション上がってきましたね?と、ビールを飲んでいることがバレたのか、僕もビール買ってきますと言うのでチャットを閉じます。恥ずっ。友達氣分であれこれチャットしていたけれど、同僚でしかもずいぶん年下だった、先にこちらが閉じるべきだったと深く反省します。おばちゃん、という言葉が肩にのしかかります。

それはさておき、明日の朝は早い、ホテルのロビーで両替をしてもらって現金をゲットします。荷物を整理して、目覚まし時計をかけて。また近所のラーメン屋に行って、先日は女性だったけれど今日は男性、ラーメン40バーツ(あれ?こないだの倍?)、やがて店の女性も帰ってきて、また来てくれたのと喜んでくれます。(あんたの旦那、ぼったくったよ、とは言わずに)

3泊。短いようで長かった。ロビンソンの歌詞など検索して、もう一度小さい声で歌ってみます。るーらら、宇宙の風に乗るー