メロンドーム

朝起きると、自分がいびきをかいて眠っていたことがわかりました。だって喉が痛いから。

すでに起きていた母は待ちかねたように「お風呂行こう」と言います。お風呂から上がると「朝ごはん行こう」と言います。母はパンを2つと、納豆、さらに白ごはん、「あら?温泉玉子かと思ったら生玉子やん」と言いながら生玉子をかけたごはんに「カレー食べよう」とカレーを入れて混ぜて食べています。食欲旺盛!部屋に戻ると、テレビのDボタンで、いつも見るという占いを見せてくれます。「ほら、面白いやろ?」うお座B型(母)と、さそり座B型(私)、てんびん座B型(弟)の占いを毎日チェックしているそう。さそり座B型は、小さいミスに注意、とのことでした。

部屋に戻ると「出発しよう」と、どうやら山鹿へ行きたいらしい。こないだも行ったのに、またしても山鹿。「お母さんってさ、その時々でブームがあるよね。今は山鹿と、佐賀、甘木。前は、平山ブームもあったし、熊本のミルクロード、久住、その前は小国とか湯布院ブームもあったし」「あっはは、あったあった。黒川温泉ブームも」「七山温泉ブームも、三瀬温泉、ぬる湯、別府時代も、杖立も小田温泉も、鉄輪」というより、九州の温泉で母が行っていないところって、どこだろう?今度、九州の地図を買って、母に◯を付けてもらおうと思います。

山鹿に着いてもまだ、温泉が開くまでは時間があるので、道の駅に寄ります。「ここは来たことない」と言って車を停めて、入った瞬間に「あ、来たことあった」とか言っている母。

細い大根が売られています。

私が今日、ヒヤッとしたこと。今日は休みではなく、平日だから通常のリモートワークをする日。車の中でパソコンを開いてみると、やっぱり、このところお休みがちなXさんが今日もお休みです。

ということは、私がその方の業務を代わりにやらねばの日。母は「お米屋さん行こう」と車を停めます。私もお米を買おうと「玄米でいいのは」と尋ねると「これ!」発芽玄米、3キロでたったの1500円です!安い。「生協なら同じもんが2300円よ」お買い得なので、4袋買って宅配便で送ることに。送り状を書いている間、「お会計は」「あ、一緒で」と聞こえたので「お会計は別々にしてください!」と遠くからレジに向かって声をかけると、「せっかく一緒でってお母さんが言っとっちゃけん、出してもらいい」と店の方。ふぅ。母がペイペイで、と言うと店の方が「えーっ、その年でペイペイって、お母さん、若かばい!」と驚いてくれ、母はまたしても褒められて、褒められるために旅行しているかのようになっています。

母が「あれ、撮った?私の車のシール」と、くまもんのシールの写真を撮るように言います。私が不思議なのは、母は私に「あれ撮りい」とか「あれ撮った?」とよく声を掛けるけれど、私がブログをやっていることを知らず、私はただの写真撮りたがりだと思っているのでは?ということ。

私が「お隣の席のひとがお休みになったけん、どこかテーブルがあるところで仕事せんといかん」と言うと「メロンドームに、テーブルがあるよ。心配しなさんな」

果たして、本当にメロンドームにはテーブル席があり、電源までお借りすることができました。コーヒーを買って飲みながら仕事。母はゆっくりと店内をめぐっている様子。時々戻ってきては、「まだメロンの時期じゃない」とか「明日のパン買った。おじいさんが赤いメロンパン2つと、黄色いメロンパン2つ買っとったから、それおいしいんですかって聞いたら」「いいもん見つけた、道の駅の地図」とか言って、1時間以上の時間を堪能している様子。しばらくすると「お腹すいた。ここでごはん食べよう」と、昨日、八代の物産館で買ったお惣菜、夕べは昼ごはんが遅くて多すぎたから食べられなかったものを「レンジがあった」とか言って温めて来て、私と半分こにして食べ始めています。

「この白和え、おいしい!」「わ、煮物もおいしい」私はとにかく全集中で業務をこなします。私は、少し悲しくなります。せっかくの帰省で、貴重な時間を、仕事しなければならないことに。同時に、恵まれているとも思います。旅行中だって、お給料をいただけるということに。何度も来た、私が何とも思わないこのメロンドームで、仕事する日が来るとは。

ふたつばかり、急ぎのことをやって、よし、私も昼ごはんです。母が突然「あ、思い出した!味噌!」昨年、ひとりでメロンドームに来たときに、促進販売で買った味噌が、弟妻と私からの評判があまりにも良いものだから、また買いたい、店のひとに聞いてくるとのこと。果たして、味噌はありました。

ようやくひと仕事終えて、次は「さくらの湯」です。「あんた来たことなかった?」「なかったかも」

山鹿では、映画も撮影されたらしい。機会があれば観てみたい。さくらの湯は、完全に昭和レトロに振り切った、素晴らしい温泉でした。お湯がぬるぬる。たっぷり1時間。

温泉を出ると、隣には記念館。「あんた、入って来たら?」

母はいつでも、待ってくれます。

「八千代座、あんた行ったことない?入って来たら?」いつでも母は私を待ってくれます。

やはり、思いの詰まった劇場には、心が震える何かがあります。

桟敷席に座って、ゆっくりと舞台を眺めながら、でも私はリモートワーク中、気が急きます。車に戻ると「さ、福岡に向かってゴー!」「おー!」と帰路に。

と思ったら「やっぱりだんご汁食べて帰らん?」とまたしても道の駅へ。「確かに、休にお腹すいてきた」「朝ごはん、いっぱい食べたけど、やっぱりお腹すいたね」「あの、お忘れでしょうけど、私たち、メロンドームで昼ごはんも食べていますよ」「あ、そっか!あーっはは、おかしい」母は涙を流して笑っています。

大、大、大成功の旅行やったね。「あなた、明日帰るんやね」いつもセンチメンタルな感じのことを言う母。同時に「あなたが高校生の頃やったろうか?私がほら、貧乏な国をめぐる船の、世界一周するの、あれに行けば?って言ったら、お母さん、本当に冷たいねって言ったよ」「ピースボート?」「そんなの。やっぱ、寂しかったんやろか?」「そうかもね」じんわりと、少しずつ思い出して来ました。母から長期に渡って会えなくてもいいと思われたということがショックだったことを。「私はね、本当にいいと思ったんよ。世界中をめぐって、気軽に言ったけど」私はそのエピソードを母が覚えていた、私にショックを与えたということで母がショックを受けていたことを、不思議に思います。どちらにしても、またしても父の話しを、弟の話し、死んだばーちゃんと、おばーちゃんの話し。「いくらでも思い出があるね!」と何度も何度も、同じ話しを繰り返して、大笑いし続けます。