男のひと

我が家の裁縫箱は全部お菓子の缶や箱です。お中元で届いたヨックモックの缶をＳさんが「好きそうだなーって思って」と残しておいてくれたのものが、当たり前のように糸入れ缶として年季すらかもしだしつつあります。今日はＴＰの靴下の穴をかがりました。勤め先のエレベーターで一緒になった男の人が「アチアチー」と騒いでいたので「暑いですね」と小さな声で返すと「地下でラーメン喰ってこれ乗ったら、たまらんくらい暑い！最悪やで」と言うので爆笑しました。モテそうな男の人。どの会社かはわかりません。

地下鉄の駅を降りると、前から何度も図書館で一緒になった車椅子の男性がいました。ボーッとしていたのでしょうか、ふと頭を下げて挨拶すると、向こうも首を傾けて挨拶してくれます。あ、挨拶されたと慌てて頭を下げると、向こうも挨拶されたとばかりにまた頭を下げてくれました。横断歩道を介助の人に押されながら渡って行く後ろ姿。図書館では女性性器の本を熱心に読んでは、時々首をカッと後ろに振り下げ、逆さの顔でこちらを裁くかのような野生の目で見つめて、また本に戻っていたっけ。色っぽさにクラクラとしながら、買い物して帰りました。

困ってるひと

職場近くの丸善で買いました。本屋の前を通るときには、目を両手で覆って、お経をあげながら通り過ぎるようにしていてもなお、こんなに魅力的な帯の本なら買わずにいられなくなります。難病を負った女子大生の病院体験記、手の指も間接も免疫不全で腫れまくって、頭だってスカスカに脱毛して、お尻すら溶けて穴が開いたというのに、はっきりと文章として残すこの人のまっすぐさに胸がすく思い。

もうすぐ、長かった歯医者生活が終わろうとしています。子供の頃の銀歯は全部やりかえた、前歯の隙間も埋めてもらった、親知らずも全部抜いた。ＴＰは昨日、親知らず！？と驚いていました。じゃあ今まで何と思いよったと？と尋ねると、氣が狂って色んな歯を抜きよるかと思ったと言いました。いくらなんでも私は何でもない歯を抜いたりはしませんっ！時々は歯をイーッと見せて、イタリア人のような微笑みを周りに振りまきたいと思います。