いる、いらん。全部いらん。

どうやら私は夜中に起き出して、父のベッドと母の昼寝布団の間で寝ていたらしい。ちょっとおかしくなっているようです。お父さん、おはよう!!!

 

朝、父が週イチ出勤で顧問をしていた会社の方々が10名ほど、仕事前に隣の県からわざわざお見えになりました。全員、座らずに立ったままで、それぞれに悲しんでくださっています。私も父の手帳をお見せしたり、父の作った棚を紹介したり、父の人となりをお伝えします。中でも「勉強が嫌いな自分に、免許を取れと言ってもらえたお陰で、合格して、今は長崎新幹線に携わってます!◯◯さんのお陰です!」と手を握って伝えてくれる青年に号泣。耳元で「◯◯の方、いらしたよ!」と言うと、目を開けて反応する父に全員で大喜び!

 

でも待てよ?密かに、毎日のようにお見舞いに来ていただく方が多すぎる(父にそれほど人望があるとは信じられない)と思っていたら、別の部屋から母が「もういつ呼吸止まってもおかしくないって先生が!来てやって!」とあちこちに電話しているのでした。本当に皆さんに申し訳ないけれど、母を止める権利は私には無い。

 

入れ替わりで、ケアマネさんがいらっしゃいます。母いわく「嫌なババア」は、「口腔ケアしようと思ったけどお父さん口開きたくなさそうだから止めときましょうかね」とか「身体洗うとしんどそうだから、止めときますか」とか言って、何もしてくれそうにないので「どちらもお願いします。父がとても氣持ち良さそうにするので」と頼みます。もちろん私もお手伝いします。…確かに嫌なババアかも知れない…

 

また入れ替わりでまた前職の会社の方々が来てくださって。。。(母よ、、、呼びすぎだろう)

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午後、母が「木の葉モールの、チキン食べたい」と言うのでケンタッキーまで歩きます。

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私の室見川

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あっ!!!私が合羽橋まで探しに入って見つけられずにアマゾンで注文した、蓋付き容器がてんこ盛り!さすが福岡!母のために、5つほど買って帰ります。(その分、タッパーをたっくさん捨ててやるんだ)冷蔵庫に、座薬を管理するために貼るホワイトボードも買います。母がごみ袋をぶら下げているマグネットが落ちて仕方ないので、強力マグネットのフックも買って帰ります。日傘をさして、汗を拭き拭き。まだまだ福岡は真夏の氣温です。

 

家に戻ると、京都から伯父と伯母が来てくれていました。「おじちゃん、おばあちゃん!」と嬉しくなります。「大変やねえ」と慰めてくれます。母は伯母に、これまでの一連のことを電話で話しただろうにイチから聞いてもらっています。私はケンタッキーを食べてから、お喋りしっぱなしの母の前にカゴを2つ置いて「左のカゴから、必要なものだけを右のカゴに入れて」と伝えて、せっせと台所掃除をします。母、お喋りしながらも「何ね、これ?いつ買ったんね?」と100均で買ったまま未開封でそのまま腐らせたようなグッズやらを捨てています。顆粒ダシも20袋くらい出てきて「何ね、何で私こんなにダシばっかり買ったんね」とか言って。「あ、それは要る!」「いらん」「いる」「いらん」段々と母は声を出すだけになって横着し始めています。その間もずっとお喋り。タッパーも40個くらいあったのを15個くらいに減らします。最期の方のカゴになると「もういい!もう全部捨てて」とか言っています。ゴミ袋6袋の成果。

 

伯父はまた、散歩に出かけると言うのでタオルを渡します。いつも2時間は帰って来ません。

 

夕方、弟が会いに行った、元妻のところにいる甥っ子姪っ子から電話が入ります。受話器を父の耳元に寄せて、1分ずつ喋ってくれます。寝ていたはずの父は、その時だけ目を開き、ピタッと動きを止めて、聞き入っています。甥っ子姪っ子それぞれに「私は◯◯(弟)のお姉さんよ。小さい頃に会ったけど忘れたでしょう?でも、応援しとうけんね、がんばってね」と言うとふたりともが「えっ、あ、はい」みたいに驚いています。でも良いでしょう、知らないひとでも応援してくれている伯母がいるということは。

 

夜、伯父と伯母はホテルに泊まると言うのでタクシーを呼びます。

 

晩ごはんは何を食べたんだったっけ?母が買ってきた浜かつの弁当かな?それとも何も食べなかったかも知れない。今日も母は父の痰を吸入し、私は父の目が開いたときに氷を口に入れて(もう氷すら食べなくなってきた)、たくさん話しかけて、寝たり起きたりうつらうつらの父のベッドの背を上げて夕日を見せたりして。弟の3人めの奥さんと子どもも到着したんだっけな。甥っ子は人見知りなので私と目を合わせてくれません。ふんっ!

 

いよいよ明日は、大阪から弟の妻のお兄さんとご両親、東京からはTPがやってきて、全員集合です。父はまだ、薬漬けの無意識でもグッと力を込めて起き上がろうとしたりしています。

楽しい介護

朝が来た!お父さん、おはよう!母は食欲無いと言ってもホットドッグ作ってくれるので半分だけ食べます。「キャベツ、切ってくれたと?ありがとう」と言うと「私だってそれくらいするよ!」と目を三角にしています。どうやら私は、旅行用に有給休暇を取っていたらしい。今日も明日もお休みです。わーい。

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父がまだ喋ったり歩いたりしているときに、弟の妻のご両親とお兄さんと、京都の伯父伯母で10月9日の土曜日に食事会をしようと計画していたことは知っていましたが、それをキャンセルしていないと知って、誰が何時に来るかはっきり教えてと言って喧嘩になります。弟と母はいつも、何でも曖昧にして本音を言わない癖があるからムカつく。TPも電話で、福岡に行こうか?と言ってくれていますが、急にいろんなひとが集まったらTPも居場所が無いのではと心配していると、弟が「来てもらってよ!お願い。俺も男の兄弟がおらんけん、TP君のことを本当の兄のように」とか歯が浮くようなことを言っています。父も弟も案外、いろんなひとを集めて食事したりするのが好きらしい。私は人数多いの好きじゃない。TP、職場で休みを交換してもらって9日に来てくれることに。

 

今朝も看護師のKさんが来てくれて、血圧がしっかりしていると教えてくれます。今日も身体をきれいにしてもらって、口腔ケアもしてもらって、父は清潔になって氣持ち良さそう。私までうれしくなります。また、銀行のことをちゃんとしておいた方が良いとのことですが、お陰さまで父は退院後すぐに銀行の方を呼んで、全て解約しているので安心です。

 

 

ふとベッド脇の棚にあった、父の3年手帳をめくってみます。もう10年も前に、最初の一冊を私がプレゼントしてからずっと続けてくれているそう。TPと私の海外旅行の日程が、赤いボールペンで書いてあって泣きます。「ギリシャ、出発」「ギリシャから帰国」などと。弟の帰省などは黒いボールペン、重要じゃないらしい、イヒヒと思います。手術やら大事なことは赤で書いてある。

 

昨日、ベッドを上げ下げしているときに棚から落ちて枠が壊れた鏡を捨てようとすると、母が「それは捨てないで!あんたがプレゼントしてくれてお父さん、氣に入って毎日使っとったんだから」と言うので木工用ボンドで修理します。

 

「正直さ、お父さんが起き上がれなくなってから、ゆっくり寝られるね」と母が言うので「そうそう。こないだみたいに、一日中歩き回られたら、こっちが先に死んどったね」と話して笑います。父が寝たきりになったので、私は少しずつ台所を片付け始めます。父が手術前に坊主にしたと言って送ってもらった写真を見たとき、父の坊主よりも台所の物の多さ、汚さの方が目に入ってたまらなかったので。またどこかにバイクで出かけるという母に、無印のゴム手袋を買ってきてもらいます。無印のゴム手袋初めて使ったけど、なかなか良い。いや、まじで良い。まずはシンクの上を片付けていると「その下の棚開けてごらん。ゾッとするよ」と母はどうやら私に全部片付けさせようとしています。

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母は片付けを手伝おうともせずに「銀行の窓口のSちゃんからもらったHABAの化粧下地がいい、これ2本目」とか言っています。

 

お昼、父の大学時代の先輩が来て下さいました。ずいぶんお爺さん。「おーい、◯◯!何でこんなことに」と寝たきりの父の手を取って泣いてくださいます。「苦しそうやな。この状態を見ると、がんばれとは言えん」と思いを伝えて下さるから感激します。母が「手術室にはね、自分で歩いて入ったんですよ。入ってくるねーって手を振って見送ったら、2時間後に電話がかかってきて、もう手術できませんって言われて」

 

入れ替わりで、父の大学時代の別の先輩と後輩の方が来てくださいました。しっかり話しかけてくださり、学生時代の思い出話しを教えてくれます。母が「手術室にはね、自分で歩いて入ったんですよ。でも氣丈でしたよ。手術できないって伺ったときも、あとどれくらいですかって自分で先生に聞いて」先輩は「こいつはそういう男ですよ。皆に氣ぃ使って、本当に周りのみんなのことを考えてばっかりで。おーい〇〇」と先輩が声をかけると、一瞬笑顔が見えます。笑った!とみんなで喜びます。そして、グッと肩に力を入れて起き上がろうとするので、みんなで感激します。

 

また入れ替わりで、父の会社の後輩が来てくださいます。皆さん涙ぐんで。母「手術室にはね、自分で歩いて入ったんですよ」もういい!一日何回おんなじ話し!?f:id:monna8888:20211007123305j:plain

お客さんが来てくださるのはうれしいことですが、弟が買ってきてくれたちゃんぽんはすっかり伸びちゃっています。

 

今日も父の目が開いたらベッドを起こして氷を食べさせます。ガリガリと丈夫な歯で噛みながらも、時々うつらうつらするのでほっぺたをペチペチしてごっくんさせます。咳が出たと思ったら「氷くれ」と喋ったのでびっくりして慌てて氷を入れます。喋った。びっくり。すぐにうつらうつら。

 

夕方、父の唯一の友人夫婦Sちゃんがまた来てくださいます。母、Sちゃんに「お父さんがあれしたら、車をさ、軽に変えようと思う」と相談。今の乗用車もSちゃんに手配してもらったとのこと。また両家で積み立てていたという旅行用貯金を、父が几帳面に表を作って管理していたので、半額を戻します。

 

在宅医療の先生も来てくださいます。酸素を導入することに。父が管が嫌いなので心配していると「人工呼吸器と違って、無理やり呼吸させるものじゃなく、酸素を出すだけのものですから、お父さんも今より楽になると思いますよ」とのことで安心します。酸素は夜、届くらしい。

 

夜、銀行のSちゃんがまた電話をくれて、父の耳元に電話を当てて声だけ聞いてもらいます。ニッコリと笑ったように見えます。

 

また、弟が低い声で話しかけるとそちらを見て笑っています。今日は私には笑ってくれんやったと頭に来ます。

 

今日の私の仕事。電球交換、ゴミ屋敷の整理。ゴミ袋が4袋、出ました。

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晩ごはんは、食欲ないのでサバ。母「半分残しとってよ、私も食べる」

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酸素が来た。看護師のKさんがセットしてくれます。酸素の管を鼻に入れると、父はとても楽そうな表情になります。私は看護師さんの中でKさんが一番好き。話しやすいし。Kさんも、お母さんを癌で亡くされたそうで、そのときの話しも聞かせてくれます。「旅行中に電話がかかってきて、慌てて帰ってきたけど間に合わなかったんですよ。こちらのお父さんは、本当に幸せと思うよ」と。

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痰の吸入器も写真に撮ってあげましょう。コンパクトミシンサイズで、とても使いやすいです。在宅の介護には、小さいテーブルがあると便利だと思います。身体を拭くためのお湯を用意するタライや、いろんな道具をベッド脇に準備する際に、作業がしやすいから。他にも、父の身体の位置を変えるのに、身体の下に入れてスルッとすべらせるシートが便利。少しずつ介護の知識や知恵が増えてきて、もうちょっと続いてもいいな、楽しいなと思い始めました。

訪問看護師さんたちに夢中

朝起きて、父と母に「おはよう」と言います。「おはよう」と母から声が返ってきます。母から「あんた、覚えとう?夜中にトイレに起きたら、あんたがそこの廊下に寝とって、私はあんたが死んだかと思ったよ」とのこと。ぞっとします。覚えていないから。そしてやがて、父が歩きたがっている廊下に、私なら寝そべりかねないなと思ったから。そこから掘り下げられなかったので、それがウチ、そう思います。やがて弟も起きて、在宅勤務の準備(上半身だけ正装)。

 

私は今日は定休日。「お父さん、今日は水曜日やけん、お休みで、ずっと一緒におられるよ」と声をかけます。おい!目がうつろ、私の顔すら見ない。「お父さん、どんな景色見とうと?」眉根を寄せて、苦しそう。

 

今日も訪問看護師の方(Sさん)が来てくれて、身体をきれいにしてくれます。身体を横にしたりするのを手伝います。おちんちんもお湯をかけて洗ってくれます(水を受け止めるのはおむつ。すごい吸収力)。身体を洗ってもらうと、どういうわけか父は落ち着きます。

 

母がまた出かけたと思ったら、100均で隙間掃除のおそうじ棒とやらを買ってきています。「お母さん、隙間掃除の段階じゃない、まずは大きいところから」と笑います。

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父が少しでも目を開けたら、介護用ベッドの背もたれを上げて、氷いる?と聞くと、うんとうなずきます。慌てて氷を口に入れて、ゲホゲホ。喉につまらせて死なんといてよ!と応援します。くたびれたので、父の隣の床で昼寝します。目が覚めると父が熱で苦しそう、母と相談して父をごろんと横向きにして母が熱冷ましの座薬を入れます。熱が高いのが一番、疲弊するそう。何度もベッドを上げ下げしたり、ずるずると下がる身体を上の方に持ち上げたりします。腕も上げたり下げたりして運動させます。まだ喋れるときにもベッドを上げ下げしたりして遊んでいたら、父は笑ってくれていたっけ。「俺をおもちゃにして遊んでくれ」と言っていたので、おもちゃにして遊びます。鼻にティッシュを詰めてみたり、目やにを拭いたり。

 

とにかく、夕方が長い。父はベッドの手すりを掴んで何度も起き上がろうとするのに起き上がれないのが悔しそう。でも在宅介護は、全く退屈しない。どれだけ父の顔を見ていても飽きない。どんどん変化するから。母が台所で大きい声で電話していると、眉をしかめてうるさそうにしたりします。

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晩ごはんはうな丼。宮崎のおいしい鰻屋さんのうなぎを解凍して焼いて、タレを入れる感じ。弟も私も、母がうなぎを出すたびに父が、ぬるい!!とかつゆが多すぎる!!とか怒鳴りだしてそこから数時間怒りが収まらないものだから、すっかりうなぎはトラウマです。それなのに母はうなぎを買って来ちゃうから。「お父さん、うなぎ頂くよ、ありがとうね」うなずいてくれます。「お父さんはあんたたちが帰ったら、銀行行って金下ろしたか、うまいもん食わせろよ、◯◯(私)のビールは買ったか?って何度も」と母がもう何十回聞いたかわからない話しをまたして、ひとり涙ぐんでいます。

 

夜、在宅医療の先生が来てくれ、脈やら心音やらを聞いてくれ、座薬も入れてくれます。ご家族の皆さんちょっとと玄関へ。父に聞かれないように。父は眠っているように見えても耳は良いらしい。玄関で先生が「…ずいぶん、進行が早くてですね、座薬を入れる際に指で確かめると、腸のすぐそこまで癌が来ていて」もういつ呼吸が止まってもおかしくない状態と教えてくれます。父はここ数日何も食べていないし氷だけだから、そう聞いてもそれほどショックは受けません。「癌が破裂したりしたらどうなるんでしょう」と尋ねると先生はハの字の眉毛をさらに下げて悲しそうな顔をし「とにかく、お父さんに何か変化があったら、いつでも電話してください」と言ってくださいます。

夜中、また訪問看護師のSさんが来てくださって、状況を確かめてくれます。母はもう痰取りのプロ。「私何度も痰取ったよ!上手よ。するーっと管が入る」と自慢しているので「痰の吸入器持って全国回れば」と言って笑います。もう父は起き上がって歩くことも無いので、ポータブルトイレを返却します。弟が看護師さんの車にポータブルトイレを運んで、何やら話し込んでいます。弟も介護関係の会社に勤めているので、勤務状況などを聞いているらしい。我が家は今、訪問看護師さんたちに夢中で、すごいお仕事だと大尊敬しています。母は「ひとりだけ、嫌なババアがおる」とか言っています。母よ…弟は「あんたの周りは悪人ばっかやね!」と叱っています。

痰を出す

夕べ、夜中まで頑張ったから今日は有給休暇をもらいます。復職できるかいな?私。母が、父が吐血しているとサラッと言っています。ベッドシーツに茶色いシミ。f:id:monna8888:20211006083053j:plain

夕べ、母の友人が大変でしょうとパンを大量に買って持ってきてくれました。が、みな食欲無いのでどうしましょ、と思っていたら、母も弟ももらったパンをムシャムシャ食べています。うらやましい。

 

弟は今日も在宅勤務。父の部屋に、飲み物を用意して、ウェブカメラに映る上半身だけ正装して下はジャージ。

 

看護師さん来訪、吐血は血の色が茶色いので古い血が上がって来て出ただけで心配ないとのこと、安心。身体をきれいにしてもらい、口腔ケアも。頭を支えたり手伝うものの口の中が吐血のせいか茶色いものが出てきて、オエッとえずいて母に交代してもらう。父、全く喋らないが意思疎通は出来ている感じ。

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地下鉄に乗って。

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わざわざイオンへ。母に白髪染めしたいと言うと、母はオススメの安い毛染め専門店一択、母からの紹介初回割引で1600円くらいで毛染め。帰りは歩いて。中学生の頃、自転車に乗って友だちの家に行ったりしたっけ。

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思い切って歩いて帰ります。

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弟が車で、英(はな)のスパゲッティを買ってきてくれました。弟なりに、食欲の無い私を氣づかってくれているのでしょう、蓋を開けた瞬間、懐かしい匂いで氣絶しそうになります。この店、誰が探して来たんやったっけ?鉄板焼の赤坂は私が誰かから教えてもらった店らしい。どちらにしても父は、今日は口を利きません。

 

夕方、今度は母が毛染めへ。根本が真っ白でアニエス・ヴァルダのよう。その間、父は何度も起き上がろうとします。そのうちの何度かは成功して、ベッドの上で起き上がることはできます。「氷、いる?」と尋ねてみるとかすかにうなずきます。口に小さい氷を入れてみると、しばらく、ん?何だこれは?みたいな顔をして、氷だとわかるとガリガリと噛んでゴクッと飲み込みます。「もう1個いる?」と聞くと、うんとうなずくのでまた口に入れてみます。父は喉が乾いているんだな!続けて、いくつか氷を入れてみると、うっと苦しみ、ゲッッホゲホゲホと咳。痰がからんで苦しそう。「ごめんごめん」しばらくしても、まだゲホッと痰を出そうとしているので「お父さん、がんばって!痰がからんで死んだら、私が殺したことになるとよ」と言うと、がんばって飲み込もうとしてくれます。夕方が一番長い。普段はカーテンを閉めていますが、夕方だけはカーテンを開けて、夕焼けを見せるようにしています。父も、窓の方をじーっと見ています。

夜、弟も仕事を終えてふたりで顔を見ていると、父の口が開いたと思ったら、白い舌のような餅のようなものが見えています。一瞬、舌を噛み切って自殺しようとしているのかと思ったら、よく見ると痰!慌ててティッシュでつまみ出し、「お父さん、痰出してくれたと?」「自分で喉から持ち上げたと?」「えらい!」「がんばったねー」と弟と父の頭をなでて大喜び。

 

とは言え、痰が出るのは最期が近い証拠、父は一歩ずつあの世への階段を、あのヨタヨタした足で上がっているのでしょうか。上半身を起こしたり、倒したり、寝返りを打ったり、苦しいようで頭を横に振ったり、ため息をついたりしています。母が座薬を入れて、何とか寝てもらいますが、まだ痰が心配。

思い切って看護師さんに電話します。「ちょうど、痰の吸入器を持ち帰っているので、これから持って行きます」とのこと、ありがてー。ここ数日、毎日のように夜中に電話して薬の指示をもらったり、実際に来ていただいて先生に指示をもらったりしてくれています。看護師さんたちには頭が上がりません。

 

夜中、看護師さんが来てくれて、母と痰の吸入を習います。私は4回挑戦して1回成功。失敗すると「アイタタタタタ」とか細い声が出ます。

 

今日も、缶ビールを飲みながら父の使っていた部屋の二階のベッドで眠ります。母は父のベッド横に昼寝座布団を敷いて、父が起きだしたら自分の足を踏んで氣が付けるように片足を放り出して寝ています。夢の中にいるみたい。

ゾンビ

本日は月初の締めなので朝早めにお仕事開始。父のベッドの隣りに小さい台を置いて、パソコンを開いて、作業を始めます。

 

弟が寝ている和室を見ると、弟も上だけ制服に着替えて、後ろに緑色の幕を張ってリモートの準備。「ここ、エアコン無いし暑かろ?お父さんの部屋行ったら?」と言うと覗きに行って、緑色の幕も着脱式の棒状のカーテンレールにするっと入るので「ここ、最高やん」と喜ぶ弟。「親父の部屋が一番信頼できる」そう、母の部屋は長年開かずの間(中居くんのうちわがバーっと飾ってあって洋服が壁一面にあって、とにかく物が多い)、それに引き換え、父の部屋(元私の部屋)は、父が私の荷物をすべて私に送ってきて、私は99%を捨てて、父は自分の荷物を入れて(少ない)、快適に過ごしているのです。ベッドマットまで捨てちゃって、ベッドに薄い布団を敷いて寝ていたらしい。

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朝、母がおうどんを半分、作ってくれました。完食すると喜んでくれます。

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本来の始業時間までまだあるので、近所を散歩します。登校する中学生たち。みんな私の後輩だ。がんばれ中学生諸君。

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お隣の駅に行って、戻る道、山が見えてわーっとうれしくなります。実家に越してきたころは、まだ私の部屋の前は田んぼで、毎日山が見えていたので氣分はハイジだったっけ。

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中学生の頃の帰り道に、目印にしていた家がまだあったのでうれしくなります。

 

家に戻ると、母は弟に特製ホットサンドを作っていました。薄焼き玉子、キャベツ、ハム、チーズ。弟においしい?と尋ねると、うん、とのこと。母は子どもの頃からどういうわけか私より弟の方を贔屓しているのに、弟は母を子分扱いするからいつも喧嘩しています。喧嘩するほど仲がいい。

 

仕事を始めてみて、チームのAさんから「大変なときにすみません、ちょっと相談したいことが」とオンライン打ち合わせのチャット、もちろん大丈夫よ!と会議します。「どうですか?」と聞いてくれるので「お陰さまで、顔見たら安心した」と答えると「怖いですよね、うちも癌家系なので怖いなーって」「本当に?そう、怖いよー、でもだんだん弱って行くし、刻一刻状態が変わって行くから、飽きんよ」とお話し。チャットの履歴を見せてくれて、どう進めたらいいか迷っていると言うので、私も一緒に迷いながら、最後に「わかった!こうしようか」と方向性を見つけて、何よりそこで迷って私に共有してくれたAさんに感謝して、オンライン会議を閉じます。素晴らしいメンバーだ。

 

さ、お仕事お仕事。仕事をしていると、父がベッドから起き上がろうとしています。トイレかな?とポータブルトイレに座らせようとすると断固拒否。「お父さん、どこに行きたいと?」と聞くと「うちの」うちのトイレに行きたいようなので、私の肩を持ってもらって電車ごっこでトイレまで、イチニ、イチニ!イチニ、イチニ!とリズムよくすり足で歩いてもらいます。が、途中で膝がカクーッと抜けて「カクカクする」とか言っています。

 

トイレから戻って除菌シートで父の手を拭いて。お仕事お仕事。「お父さん、ちょっと集中するけんね、応援してね」と言うと、うんとうなずいてくれます。

 

母は、病院へ薬を取りにバイクで出かけています。エアコンつけて、父の様子を心配しながら猛烈に仕事を進めます。今回、無理を言って長期の帰省(在宅ワーク)を許してくれたチームメンバー(私の部下^^)たちが、いかにフォローしてくれているかが、チャットの様子でわかります。

 

感謝感謝で仕事をしていると、父がまたベッドから降りて立ち上がり、廊下の方にイケイケみたいな感じで顎で示すので、また電車の体制でイチニイチニと向かったところ、階段を上がろうとするので驚きます。「お父さん、やめとこう」と言っても、頑として譲らず、ひとりで手すりにつかまりながら上がろうとしています。ふにゃふにゃの足で、カクンカクンする膝で。父は、介護用ベッドで夜を過ごすことが負けだと思っていた節があります。私が帰省して2晩くらいは自分の部屋で寝ていたんじゃなかったっけ?記憶もあいまいになります。それが、意地でも二階に上がりたいと行動で示すから、私も後ろから、危なそうなときだけちょっと支えて、上の階まで。手すりにつかまってふうふう息をついている父を置いておいて、弟の仕事部屋(父の部屋)をノックして「お父さん、来るよ」と小声で伝えて、また父の元に戻って電車で弟の仕事部屋に「おじゃましまーす、お父さん来ました」と、父をベッドに寝かせます。

 

氣の毒なのは弟。これから大事な会議があるそう。私もパソコンを持ってきて、ベッドに寝ている父の横で腹ばいになって仕事をすすめます。「お父さん、無茶せんでよ。私も弟も忙しいっちゃけん」父は二階まで上がってきたものの、きついきついきついと小声で言いながら、ベッドに横たわっています。が、また起き上がって立とうとするので、弟とふたりで立ち上がらせて、また下の階に降りる手伝いをします。うーうーと言いながら、狂氣の顔で必死に階段を降りる父。。。一体何がしたいんだ。

一階のベッドに寝かしつけ、横で仕事をしていると、再び父が起き上がり、私の腕を手すりのように扱って立ち上がり、もう一度二階へ行こうとします。が、踊り場で座り込んで、うなだれています。すると、手でコップを持つジェスチャーで、クイッと傾ける感じにするので「お茶?」と聞くと、うんとうなずく。サッとストローを差したコップを取りに戻る私。どんだけ王様なんだよ!ストローから麦茶をたっぷり飲んだ父は、よしとばかりにまた、階段を上がろうとしています。ヨタヨタ、フラフラ。小さい声で「おっとっとっと」とか言って。私はもううんざりして、手を貸しません。万が一後ろに倒れたときの支えになるよう付いて行くだけ。膝カクカクでも何とかバランスを取りながら上がる父。再び弟の部屋へ。「やっぱねー!また来たん?何か嫌な足音するなーって思いよったんよー」と父はまた自分のベッドにゴロリ。もう今度は、付き合いたくないので弟におまかせして一階で仕事します。

 

薬をもらって帰ってきた母は「あれ?お父さんは?」と言うので「二階」と答えます。驚いて、笑っている母。

 

すると、また父は一階に降りてきて。「お父さん、私は仕事しようと。お父さんとこうして一緒におられるのも、在宅を許してもらえたお陰よ、ありがたいね、応援してくれる?」と言うと、うんとうなずくものの、何だかまた起き上がりそうな氣配。

 

 

午後、母は在宅専任の先生から、電話で新しい薬を処方されて受け取りに外出。弟は来年転勤が明けて福岡に戻る手続きで外出。何だか、嫌な予感。介護用ベッド脇で仕事をしていると、父がムクッと起き上がり、立ち上がり、ポータブルトイレは嫌がって、廊下に出て、浴室の方へ。(キター、ワンオペのシャワー!!)前と同じようにシャツを脱いで、紙パンツを脱いで、浴室に介護用風呂いすを置いて、倒れないように支えて座らせてシャワーを浴びせます。すっかり老人の猫背で、前の方は自分でシャワーをかけていて、途中で浴槽に手をかけて立って、尻を突き出しています。は?何?洗えって?と思いながら、石鹸を泡立てて肛門と、癌が広がって腫れ上がっている睾丸を、そーっと洗います。

 

父が、恥ずかしいと思っていないのだから、私も、全然恥ずかしくない、むしろモノみたいな感じで、当たり前に。弟とも、父親の下の世話できる?絶対ムリなどとお喋りしたっけ。でも今はワンオペだから。シャワーを浴びて外に出ようと思っていたら、父は空の浴槽に入ろうとしています。呆けたかな?「お父さん、お湯張ってない。ごめんね、明日は張るけんね」と言うとしゃがんでくれます。シャワーを止めて、上がろうとタオルで身体を拭いていたところ「ちょっと温まって出ようかね」と、ガクガクの足を勝手に空の浴槽に入れて、よいしょとか言って座ってしまいました。ガクガクの足で。仕方ないので、湯船にお湯を入れます。ダーッと入るお湯、父は座ったまま段々と増えるお湯を自分のお腹(癌でパンパンに膨らんでいる)にかけています。そうか、父は癌の部分を温めたかったのか。「お父さん、ごめんね氣づかんで。お湯に入りたかったっちゃね?これからはお風呂に入ろうね」と言うと、満足そうにうなずいています。お腹までお湯がたまったところで「もうお湯止める?」と聞くと首を横に振る。そして、背中を倒して長くなって、なるべく全身がお湯につかるようにのびのびとしています。お湯を張りながら、ダッシュでパソコンで弟にメール。「お父さん、またシャワー!しかも湯船まで!」ダッシュで浴室に戻ると、全身お湯に浸かって、なんとも満足そうな表情。「お父さん、ごめんね。明日からは、毎日お風呂に入ろうね」うんと大きくうなずく。10分弱お湯に浸かって、満足した表情で立ち上がった父は、浴槽に掴まって大きくひとやすみの深呼吸。待ちます。お風呂から「よっこらしょ」と出て、またひとやすみ。ようやく立ち上がってくれ、身体を拭いているところで弟がダッシュで帰ってきてくれました。「お風呂入ったん?入りたかったら入りたいって言ってくれよー」と二人で笑いながら「紙パンツ、替えた方がいいっちゃない?」「でも紙パンツのパットの付け方知らんもん」「えっ、どっちが前?」「ちょっと説明書見てくる!」「Mって書いてある方が後ろって」などとてんやわんやで父に紙パンツを履かせて、姉と弟は協力し合って父をベッドまで運んで、寝かせます。

 

ようやく戻った母に、事の顛末を伝えると喜んで、「そうね〜、傑作やね。お父さん、お風呂入ったんね、あんたも大変やったね」とのこと。ちょっと介護の時間が増えて仕事の時間が削られているので、チームのチャットに明日お休みをもらいたいことを伝えて快く了承をもらって、出勤簿で退出をして、今日中にやらねばならないしごとを続けます。

 

父、また起き出して二階に上がる。今度は、弟は会議中だからと遠慮したのか和室へ。身体が言うことを聞かないものだから寝転ぶときに膝から落ちて畳でゴチンと頭を打って「アイタタタタ」とか言って。また立ち上がる。「どうする?弟は仕事。お母さんの部屋に行く?」と聞くと首をぶんぶん振って全身で拒否します。そりゃそうだろ、モノだれけの開かずの間は怖いだろう。また弟の部屋へ。

 

もう、何が何だかわからなくなってきた。弟は本社へ外出。もう今日が何日かもわからない。明け方まで、父は立ち上がり、二階と一階を往復。今日は在宅看護の先生も途中で来てくれたっけ。とにかく辛そうなのに動きたがることを伝えると、辛さを取る薬を懸命に考えて処方してくれます。昨日、父のベッド横で寝てくれた弟は早く休んでもらって、私と母で明け方まで。母「お父さん!もういい加減にして。誰にも迷惑かけたくないって言ったのは嘘やったの?」私「お父さん、明日また一緒に遊ぼう?今日はもう寝たいけん。一日中、上がったり降りたりして、本当にくたびれたと」また立ち上がる父。なだめすかしてポータブルトイレに座らせたものの、すぐに立ち上がり、まさかのその場で放尿!小便小僧!!!めっちゃたっぷり出す!籐のカーペットの上で!雑巾!籐のカーペットの下まで拭いて!母リセッシュを狂ったようにあちこちに!母、血尿と叫ぶ!母「もう勘弁して!」私「お父さん、もう寝たい」在宅看護の看護師さんに電話して事情を伝えると、本人も辛そうなら眠れる注射をしましょうと、来てくださいました。看護師さんは、私と母の体調を氣づかってくださいます。たっぷりとお喋りして看護師さんも帰られて、眠れる注射を打たれてもなお、父は立ち上がり廊下に出ようとするー。母が機転を利かせて、途中で父の身体をくるっと反転させたら、介護用ベッドに戻って、座って、父の身体を引き上げてまっすぐにして、汗を拭いたりしたら父はようやく、眠ってくれました。今日は何度、寝たと思ったら立ち上がって復活したのだろう。まるでゾンビのように。

 

元私の部屋、現父の部屋のベッドに戻って、横になって今日もまた涙流しっぱなし、明日はまた母から「あんたブスになっとうよ」と腫れた目を馬鹿にされるんだろう。父親の謎の家中散歩を止めるときに、母が「お父さん、お父さんが死ぬ前に私たちが死ぬよ!」とか言ってたけど、おおげさすぎ、嘘ばっかり!と可笑しくなります。そういうことを思い返しながら、涙ダダ漏れで父のベッドで寝ます。長い一日。長過ぎるとも思える一日。

娘の特権

伯父は朝から室見川を散歩。元氣だな。朝ごはんは弟が買ってきたマックのハンバーガーらしい。散歩から帰った伯父は、ハンバーガーを食べたことないと言うので驚きます。コンビニは飲み物を買うだけだそう。「こないだ、カミさんに付き合ってスーパーに行ってみたら、同じ飲み物でもコンビニよりものすごう安いんやな。びっくりしたわ」こっちもびっくりしたわ。私は何も食べられません。

 

父は、今朝は口が利けなくなっています。「おはよう」と言っても、ぼんやりと私を見るだけ。でも「お父さん、おはよう」と言うとニコッとしてくれます。それでも、辛い辛いとだけ言っています。

 

看護師さんたちがいらして、薬の調整を先生と相談して下さいます。父が辛くなくなるように。その間、私が実家に着いてからずっと発狂しそうだったこと、家の汚さを何とかしようとまずは玄関掃除。干支の置物など母が捨てたくないと言い張るのを説得して、捨てます。母がどうしても残したいと言うものは渋々残しますが、ほこりや花の枯れたカスなどゾッとするのをウェットシートで拭き取ります。母は食卓に座らせておいて、目の前に出されたものを選別するだけ。伯父が笑いながら見ています。伯父は一旦仕事に戻るそうで帰宅、弟が地下鉄の駅まで送って行きます。

 

父の親友夫婦が来ます。両親たちとは毎月積み立て貯金をして毎年お正月を旅館で過ごしている仲。それなのに母は、あの奥さん氣が利きすぎて好かんとか言っているのでゾッとします。(弟いわく、あんたの周りは悪人ばっかりやね!って言ってやったとのこと)親友が昔の話しを語りかけていると、いきなり父が笑ったので皆でよろこびます。母が「カステラもらったよ、お父さん食べる?」と聞くと、うんと大きくうなずいて、起き上がるのでびっくり。急いで頂いたばかりのカステラを一切れ、フォークで小さくして食べさせます。おいしい?と聞くとうなずくのでまた皆で大喜び。母が渡した牛乳も、親友がストローで飲ませるとゴクゴク飲んでいます。良かった!

 

今度は下関から母の叔母たちが一家総出で来てくれます。もう最初から「おいちゃん」「◯◯ちゃん(父の名前)」を呼びながらベッドサイドに駆け寄り「なしてこんなことに」「まだ若いのに」「一番長生きすると思ったのに」「辛かろう」などと涙涙。弟は号泣しながらそのシーンを動画に撮っているものだから、何だこいつはと思ったりします。思い出話に笑ったり、父も反応を示したりして。最後、皆が家を出るとき、父は身体を持ち上げ、ベッドに掴まりながら立ち上がり、弟に支えられながら玄関まですり足で見送りに出たものだからまた全員で大号泣。(私はそういうときは泣けないタイプ)

 

弟は何かの書類を取りに外出。ふと見ると、父親がベッド脇で立ち上がろうとしているので慌てて母と介助、ポータブルトイレではなく、家のトイレに行こうとするので静止しようとしても言うことを聞かず「どけどけどけどけっ」と言いながらすり足でトイレに行こうとするので仕方なく付き合います。すると、浴室の方に行こうとするので母が「そっちじゃないよ」と言うけれど私は昨日のことがあるので「シャワーよ、シャワー浴びながらおしっこするとよ」と教えます。今日は、おしっこはせずに、首周りや胸などを洗っています。浴槽に捕まって立ち上がり、尻を突き出して母に肛門を洗わせています。ぷぷっ。母と協力して身体を拭き上げてベッドに寝せると、ほっとしたように眠っています。尻が氣持ち悪かったんだな。母が笑いをこらえながら「どうする?これが癖になったら」と大笑い。どうしよ。毎回シャワー浴びることになったら。こっちも大変なんですけど。

 

笑ったりしたら何だか、少し元氣が出てきました。昼は昨日の残りの巻きずしを食べて。私はゴム手袋が無いと水仕事できない派。「ゴム手袋買ってくる」と外に出ます。昔とは変わってしまった景色。

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歩いて歩いて、スーパーへ。

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ゴム手袋が売っていないので驚きます。

 

そのまま、ニトリを目指して歩きます。室見川を渡って。ニトリにもゴム手袋が無いので木の葉モールへ行きます。ゴム手袋があったので買います。そのまま歩いて、美香ちゃんの職場を目指します。でも途中で、やはり父が立ち上がったりすることが心配になって引き返します。1時間ほどの外出、家に戻ると母はぐったりとくたびれて昼寝しています。弟も和室で昼寝しています。父も夕日の中で眠っています。しばらく、しーんとした中で、家族の寝息を楽しみます。

 

私がごそごそと流し台の扉を磨いていると起きてきた母が「その扉開けてごらん、ぞっとするよ」開けると10年、いや20年越しみたいな液体や大量の鍋の蓋。「もう好きにして」と言うので「これは?」「いる」「これは」「いらん」「これは」「あ、それそんなところにあったんだ!」などと。たっぷりと掃除させられます。(昨日から45Lごみ袋2袋、30L1袋出している)

 

夜、まだ言葉を発していたときの父の提案で、ウエスタンのサイコロステーキ弁当を母が買ってきました。

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懐かしい味、子どもの頃から何度も通っていたお店。

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父用にも小さく切ったものと、小鉢に白ごはんも2口ほど入れて。父に見せてみると、自分で箸を持って食べ始めたので、家族で「おー」と声をあげて「やったやん」「食べられたやん」「すごいやん」と大絶賛。

 

家族劇団の劇団員たちが幸せムード満点のお芝居をした後で、さあ寝ようかというとき、やっぱり事件勃発。母がちょっとしたことでしつこく自分の意見を言うものだから私がキレて喧嘩に。弟も「やめろって。今だけは喧嘩すな」などと上から。じっと黙った後で、私は賭けに出ました。「だって」と母に爆弾を落とすような嫌なことを言ってやります。興奮して怒り返してくる母。すると父が「うぅうう、うるさい!やめろ!」と大きい声を出したのです。弟はロマンティストなので「もう、父を悲しませんなや!今だけはやめろって言ったやん、何でそんなこと言うと?父の願いはみんなが仲良くすることやろ?」と泣き始めます。私は「だって、お父さんに聞いて欲しかったちゃもん。お父さんは嘘が嫌いやけん、まだ生きとっちゃけん、お父さんにちゃんと聞いてもらいたかった」と父の元に駆け寄り「ねー、お父さん、喧嘩したっていいよね」と言うと父は目をパチッとあけて、うんとうなずきます。「ほれみろ!」と弟に言い返します。「お父さん、ごめんね、嫌な思いさせて。でも私はお父さんに聞いてほしかったと。許してくれるよね?」と言うと父はニッコリと笑ってくれます。「それはずるい」と弟。すると父が「何か、食べるもんあるか」と言うではありませんか。家族全員、大喜び。ハーゲンダッツ?かき氷?ガリガリ君は?と言うとうなずくので、ガリガリ君を1センチ分切って小皿に入れてスプーンで食べてもらいます。鼻の穴を膨らませて弟に嫌味な顔で笑いかけると、「悔しいけど今回ばかりは良かったわ」とか言っています。「でもその分、お前が父の寿命を縮めたけんね。エネルギー使わせて」とか言うので「逆やろ。元氣出たやろ」と言い返す。ほれみろ、お父さんは短氣だけど、相手にも反論があるなら正直に言って欲しいひとなんだ。それを母は喧嘩が面倒だからと「どうもすみませんでした。私が悪うございました」と三指ついて謝ったりと嫌味な態度で逃げてばかり、父の悪口を言ってばかりだから父はいつもイライラの矛先がどこにも刺さらずに爆発していたのです。高校生の頃、その怒りをこちらも怒り100倍で返して反論したところ、父はそれから一度も私を怒鳴りつけることはありません。娘の特権、何をやっても言っても父は絶対に許してくれるのです。だって、まだ父は父としてここにいるのだから。

ふくちゃんラーメン

母の看護ノートより

◯3時頃気がつくとベッド脇に立っていた。トイレかなと思うが何も云わず、ベッドに横になる。

◯再度起き上がる。聞くとションベンとのこと。ポータブルに座り尿のみ(3時半)ベッドへ。

◯昨夜せんば先生に座薬を入れて頂き、22時に眠れる座薬を入れてやっと良く眠れたようだ。

◯だんだん反応もうすくなり、どうしてほしいのかが解らず、はがゆい、、、、、

◯寝汗をかいていて更衣する2度22:30、23:00

◯7:30朝食XX(私の名前)と一緒にジョーダンを云う。

◯身体を

◯Sちゃん来宅

 

母のノートで、夕べのことを思い出します。父があまりにも痛い痛い痛い痛い、情けない情けない情けない、辛い辛い辛いと繰り返してベッドの上を転げているので、せんば先生に来てもらったんだっけ?そのときに玄関に私と母だけ呼び出されて「実はですね、先ほど座薬を入れた際に直腸を確認したところ、指の第一関節まで癌が進行していましてですね(うつむいて)、病院からは余命一ヶ月から三ヶ月と聞いていらっしゃるとは思いますが、それよりも短い可能性が、、、」と聞いたのでした。1ミリも驚かず、のたうち回っているのだから、そりゃそうだろうと思って「本人も、本当のことを知りたがっていますので、とにかく今の辛そうな状態を何とかしていただけたら」と伝えます。

 

朝起きて、いきなり母から「京都の伯父ちゃんのPCR予約して」と言われます。我が家には医療従事者の皆さんが毎日のように来るので、他のお宅に移さないよう必須の手続きだそう。

今日も休みたいなとは思いました。でもパソコンを開くと、やらねばならない仕事はそこにあるし、やれていない仕事はチームメンバーの方たちがちゃんと進めてくれているのでした。

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昔はもっと、家の周り中、田んぼだらけやったのにな。私があまりにも何も食べないものだから、母が「昼ごはんは、ふくちゃんラーメン行ったら?」と言います。どうやって行くと?と尋ねても母は「ほら、中学校に突き当たるでしょ?そしたらセブンとローソンあるじゃん、そこをまーっすぐ」と右に曲がるのか左に曲がるのかもわからないので、Googleマップで地図を確かめて日傘を差して向かいます。「行ってきまーす」と言うと「はーい」と父の弱い声が聞こえます。

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人氣店なので名前を書いて並んでいると、ヤベッ、秋冬の洋服しか持って帰ってなかったので、慌てて借りた母のホークスTシャツで出てきてしまった、何か恥ずい。

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父に「お父さんはいつも何食べると?」「俺はワンタン麺。ふくちゃんは、うまいと思うよ、ま食べてみて判断して」とのこと。30分ほど待つ間、屋外の日陰で扇風機の風を浴びながら、悟りを開きそうになります。待っている間に聞こえてきた会話「◯◯さん!」「おう、偶然やね、よく来ると?」「いや、ここは定期的に来ないかんでしょ」「そうよね、やっぱここが一番よね。いつも何食べると」「俺は替え玉して、もやし」「俺はニラばっかり。ニラをようけ食うけん、俺が席着いたら店員さんがニラの容器をいっぱいにしてくれるもんね」「ここはニンニクをクラッシュできるのがよかでしょうが」「絶対ニンニクは入れなね」お客同士でもふくちゃん大絶賛。ようやく名前を呼ばれて「ワンタン麺、半分にできますか?」と尋ねると半分はやっていないんですよとのことで、普通にワンタン麺を頼みます。そう、父から何度もお土産用のふくちゃんラーメンが送られてきたけれど、やっぱり本物は違う。でも、麺を少し残してきてしまいました。店内に「ふくちゃんラーメン、セブンイレブンで販売中」のポスターがあります。

 

帰り道、セブンイレブンでふくちゃんラーメンを探します。3件回っても見つからず。父に、ちょっとでも食べてもらいたくて。

 

家に帰ると、母から薬を取りに行く間にSちゃんが尋ねて来るけんあんた駅まで迎えに行ってとの無茶振り。はぁ?私、仕事中なんですけど。ベッドで寝ていた父は「ふくちゃんラーメン、どうやった?」と言うので「他の店のラーメンと全然違ったね、ワンタンも美味しかったー」と報告。並んでいる間もふくちゃんラーメンについて熱い会話が繰り広げられていたことを伝えると父大満足。午後、父のベッド横で懸命に仕事をしていると父が突然「2階に行く」と言い出します。どうやら1階の居間は介護用ベッドで、台所も丸見えなので恥ずかしいと思ったのでしょうか?2階に行くのも、棒になったような足で、私の肩を持って、ふらふらで一歩ずつゆっくりと上って。ベッドにどでんと横になると「そこのズボン取って」いつもは紙パンツ姿なのに。

 

14時。Sさん来宅。父のお氣に入りの、銀行の店員さんです。以前からSちゃん、Sちゃんと父母ともども可愛がっていて、月イチで夕食会を開いているとは聞いていました。私が最寄りの駅まで迎えに行くと(何故か薬局帰りの母もバイクにまたがり、あれが娘みたいに私を指差してブーンと離脱)、本当にかわいい方で、私は軽く状況を伝えながら会話します。「以前から、銀行のSちゃんとの食事会でーとかいつも聞いていて、本当に老夫婦に付き合ってくれてありがとうございます」「いえいえ、いっつもお父さんから娘さんのこと聞いていて、ひとりでインドに行ったとか、痴漢を追いかけたとか、もっとムキムキの方を想像してましたが違ってました」とか言ってもらいながら、やがて我が家へ。「老人夫婦のゴミ屋敷」に申し訳ないと上がっていただきます。Sさんは、持参した消毒で手を除菌して、靴を揃えて上がってくれたかと思ったら、父は長袖シャツで正装して2階じゃなくて1階のベッドに横になっていました。母は「家に帰ったらお父さんがおらんでびっくりしたよ!そしたら2階から降りてきて」やはり介護用ベッドの方が楽らしい。

 

Sさんは介護用ベッドに近づいて「◯◯さん!やっと会えましたね!」と手を握ってくれています。素敵な女性!そりゃー父も可愛がるだろうな。父ニコニコ。コロナで恒例の食事会ができなくなって残念などとと話しているうちに、父は眠ってしまいました。そこからは、Sさんのご両親のこと(お母さんが認知症になって、納豆を大量に買ってくる、父とはボケたもん勝ちやなって笑ってる)やら、銀行のオンライン化の話しや、熊本が災害に合ったときに福岡から応援に行っても同じ福銀のシステムだからすぐに対応できた、などなど、ものすごく面白い方で、いっぺんにファンになります。たーっぷりSさんとお喋りして、母が京都の叔父と迎えに行きがてらSさんを博多駅まで車で送ることに。少し目の覚めた父に「◯◯さん、また必ずお会いしましょう」と握手してくれるSさん。父、涙目。

そこから、私は仕事をします。父は眠っています。と思ったら、母から父の携帯に電話、出てみると「カーナビが突然壊れて真っ暗で」とPCR検査会場までの道順を教えてと言われます。25年ほど福岡から離れているのでわかんねー、でもネットで地図を見ながら「今、お母さんたちはどこにおると?」「ほら、何とかっていうほら、何で名前が出てこんのやろ」Googleマップで見たところ、伯父を迎えに行った博多駅から天神までの間にある施設…「キャッツとか見に行ったとこ?」「そうそう!」「キャナルシティ」そうそうとのことで、まずは大丸を目指してもらって、大通りに出たら左に曲がって、橋を渡ったらすぐ車を停めて、コメダ探してと伝えます。無事、たどり着いたようで、やれやれ。

 

それまでおとなしく寝ていた父が、ムクッと起き上がりました。そしてベッドからよろよろと立ち上がろうとします。「どこ行くと?」と尋ねると、ただ私を杖のようにして、行け、行けみたいに顎で使って。廊下でいきなり着ていたTシャツを脱ぎました。そして、紙パンツも脱ごうとするので手伝います。そのまま浴室にヨタヨタ(私は杖)と歩き、浴室で風呂イスに座っています。仕方ないのでシャワーを出します。イヤ、まじで父親の下半身とか勘弁なんですけど、薄目をキープしながら父に「シャワー終わったら声かけてね、私おらん方がいいやろ?」と聞くと、うなずきもしません。仕方ないので、父が洗えていない背中を石鹸で洗ってみたりしていると(薄目で)、父が浴槽の縁につかまって立ち上がり「…わるいけど、尻…」とか言ってます。キター、父の肛門を洗う日来た。目をつぶって石鹸を泡立てて、突き出された尻を洗います。何だかニュルッとする感覚、やがて、人糞の臭い。そうか、父はうんちが漏れたから洗いたかったんだと氣づきます。

 

でも勘弁して。おちんちんとか睾丸が癌で赤く腫れ上がっているのも見えちゃうし、辛いし。それでも、父は全く恥ずかしくないようで、ただきつそうにうなだれているだけ。ひとりでは立てない状態なのに、何かに捕まりながらも私からバスタオルで拭われて、急なことだったので父のタンスから急いで探しだしたTシャツに着替えて、新しい紙パンツを履いて(紙パンツと尿パットの組み合わせ、どっちが前だけわからない、初めてなんですけど)。さっぱりして氣持ち良さそうな顔で、また当たり前のように私の肩を持って、すり足で介護用ベッドまで戻ります。本当に勘弁して!

 

やがて京都の伯父が母の迎えの車から降りてきて。「体調どうか?」「悪りー」「辛いか?」「辛い」「そうやろなぁ、ワシもあちこち癌で手術してんねん、ボロボロや」という伯父は、父の4つ上。父は華やかな雰囲氣の伯父に、コンプレックスを持って生きてきたひとなので(父方の祖母と私の母いわく)その兄がわざわざ新幹線に乗って自分のために見舞いに来てくれたことが嬉しそう。伯父は「まさかお前の方が先に逝くとはな」と父をなで、父もうんとうなずいています。「でも筋肉はお前の方がわっしよりツヤも良いな」と二の腕をなでてもらって満足そうな父。

 

やがて弟も到着。お父さん、帰ってきたよ、帰ってきたけんねと手を握って声をかけるとうれしそうな父。皆で外に食べに行こうといいます。伯父が「車椅子あるんか」と聞くので無いと答えます。「無理やろ、そんな身体で」と言うけれど父が決めたことは絶対。父は知らんぷりで準備を始めるので、弟と二人で身体を支えて、靴を履いて、久しぶりの外出です。助手席に座らせて足を上げるのもひと苦労。王様かよ。

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伯父ちゃんと子どもの頃からの話しを色々して、皆で食べて笑います。私と伯父だけ瓶ビール。

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お会計は伯父。「病人に出させるわけいかんやろ」父も玉子焼き、白ごはんや刺身を食べたし、かかしみたいな姿勢で両脇から支えながらのギリギリ外食ですが、大成功でした。

 

家に帰ると、父は介護用ベッドに寝た途端、疲れが出たのかぐったりとして、口も利かなくなります。夜、看護師さんたちが来てくれましたがぐったりしたまま。心臓の脈拍も、血液の酸素量も問題なし。伯父も寝た後で、弟とゆっくり話しをします。父を看取るということについて、語り合います。お互いにこういう機会が持てて良かったね、お互いにこういう機会が持てて良かったね、

食欲ない

金曜日。仮眠を取って6時に下に降りると、父はほとんど死んだように見えたものの、顎をさすって「おはよう」と言うと目をパチッと開けてくれます。母が「お父さん、カステラ食べる?」と言っています。食べるわけないやんと思いながら顎をさすると唾液が出たのか、ようやく小さい声で「カステラ一番電話は二番、三時の」と歌い声。食べそうだなと、食べてもらいます。

母は「このホットサンドが評判いいんよ」とパンに、キャベツと薄焼き玉子、ハムとチーズを挟んだものを作ってくれ、半分だけもらいます。食欲ない。

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7時。勤め先に午前休をくださいとチャット。もう一度仮眠。9時、下に降ります。父の友人から電話、ほとんどしゃべれないのに母は父の耳元にスマホを当てて「ほら、お父さん、◯◯ちゃん」話しができないとなると、私にスマホを渡してきます。「もしもし、お世話になります、いつも遊んでいただいて」と挨拶。子どもの頃お世話になったおじちゃんなので、ゆっくりと喋ります。「あんたが帰ってきて、お父さん喜んどうよ。今、今を大事にね」と言ってもらって本当にそうだと思います。

 

8時。母は弟に今すぐ帰って来てって電話したとか言っています。弟は明日帰るそう。父の兄にも電話、明日帰ってくれるそう。母、常軌を逸しているなと薄々感じています。あまり大騒ぎすると、父の臨終が近づくような感じになるってことがわからないのかな?

 

仮眠を取って11時。パソコンを開くと仕事が山積みになっています。ひとつひとつ処理して、オンライン会議をして、「父が倒れたから実家に戻っている」と伝えると代理で担当してくれる他部署の方がいて。混乱しながらも整理します。がんばった、整理できた。

 

12時。ケアマネさんと看護師たちが3人来てくれました。父の容態を見て、先生に電話してくれています。足元が弱っていることを伝えて、とにかく、きついーきついーと言っているのを何とか解消してもらうようお願いします。母は父の状態を尋ねられているのに、「ええ、きついのにしっかりしてて、昔は…」などと過去の思い出なんか喋り続けています。本当〜に、介護士さんたちは大変だな。私は合間にちょこちょこと、勤務体制やら、何人を介護しているかなど尋ねてみたら「お子さんも数人いらっしゃいます」とのこと。そうか、癌で余命いくばくもないと言っても父は70代。もうコロナで死んでも本望とか言ってたけど、他の家のことを考えたら絶対にPCR検査は必要だったんだなと改めて。

 

15時。仕事がひとつ片付いた。父の介護用ベッドの横でずっと仕事をしていたものだから「ひとつ大きい仕事が終わった、よくがんばった私」と言うと、「よくがんばった。よかったな。俺は、もうがんばれん」と目を開いて言っています。「もうがんばれん?」と聞くと「これ、いつまで続くっちゃろうな。きつい」とのこと。「後、何日ならがんばれる?」と尋ねるとうつらうつらしながら「3〜4日」だそう。さては、弟が明日帰って来て、それからちょっと話しなどしたいんだな。

 

母が「お姉ちゃん、何か食べん?」と言うけれど、「そんなこと言われても、お父さんがこんな状態で、何も食べたくない、食べれんよ」と私は泣きました。父は「すまんな」と言っています。母は十八番のように「お父さんが、あんたたちにおいしいものを食べさせてやってくれって、ずっと言ってて」と泣いて。あーーーー、あーーーーーー

 

泣いたっていいでしょう。本当に何も食べたくない。

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とにかく、いろんなものをあれこれ食べさせたい母は、近所のスーパーの巻きずしを買ってきてくれました。巻きずし一個と稲荷一個食べます。父は、ゼリーに浸したバナナを数切れ食べてくれています。「明日、お兄ちゃんが来るって言うけど、うれしい?」と尋ねると、「それほどうれしいって感じではないな」と言っています。それでも、ふうふう、何でこんなになったんやろうかと恨み節のような独り言を小さくつぶやき続けて。

 

母は、また冷蔵庫にたくさんビールを用意してくれています。どういうわけか下戸の母と弟、お酒を飲む派の父と私。体質?ビール飲みます!と言うと喜んでくれる父。

昨日、私を支えてくれた本。

 

夜、父のベッドで寝ます。母は父の介護用ベッドで眠る父の隣りの昼寝布団で。私はビールを飲んでも飲んでも、なぜかちゃんと補充されている魔法の冷蔵庫(母が買い足してくれているだけのこと)から、何本も缶ビールを取り出して飲んで、眠ります。