
夜中、目が覚めて温泉にチャポン。朝目が覚めて、温泉にとぷん。流れっぱなしの温泉があるのって、何て素敵なんでしょう。

少しだけ、周囲を散歩してみます。

今が田植えの時期なんでしょうか?

お宿にいる犬の置物はすっかり色が抜けているのでペンキで塗り直してあげたくなります。

母も何度か温泉にチャポンと浸かったらしい。お待ちかねの朝ご飯、やっぱり全ての具材と味付けがいいのが不思議、水が良いのかな?またお風呂に浸かって、チェックアウトします。

さあ今日は忙しいよ。母の計画にすべて、付き合うのです。「まずは温泉汲む」それから、お米買って、メロン買って、スイカ行って、団子買って、ガソリン。いや、ガソリン、団子、とのこと。メモを取って、温泉、米、メロン、スイカ、ガソリン、団子、と唱え合います。

朝から強烈な猛暑。山鹿の温泉になぜ宮本武蔵像が?しかもおじいさんです。

まずは米。私はこのところのパールライスからのカリフォルニア米で、すっかり参っています。母がどうしても行きたいというお米屋さんの秘密は、店のおじさんが、好みを聞いてたくさん説明してくれるというところが味噌なんだな。私は硬めの米が好き、とくにおむすびにして美味しいお米をと言うと、石川のコシヒカリと、ミルキープリンセスを勧めてくれました。5キロずつ買って東京に送ります。店のおじさんが「娘さんはどこ?」「今は東京に住んでます」「今日はどこから?」「福岡です」おじさんは数年前まで福岡に住んでいたそう。「ご出身はどちらなんですか?」「宮崎の延岡」「えー、うちも宮崎に住んでましたよ」母に、宮崎に住んどったってと伝えます。母、はっきり言って耳が遠くなっている。自分が喋りたいだけ喋って、相手の声はあまり聞こえない様子、特に精米機の音が鳴ると、全く会話になりません。「えー、うちは三股でしたよー」と母がノリノリで会話しています。熊本のお米は去年、とても出来が悪かったそう、猛暑のせいですか?と尋ねるとそれもあるかもとのこと。中でも、森のくまさんという品種がとても味が落ちたそう。母は弟一家にあげる米を買って「何でー?さっきまであったのに」ポイントカードが無い無いと騒いでいます。私が先に済ませた会計のときのポイントカードを渡すと落ち着きます。

続けてメロンドーム。母は何とかという品種は売り切れていたけれど、何とかという品種は同じ甘さって、と2玉、買っています。

メロンドーム、何度来ても、その魅力がわからない。

続けてスイカ。スイカ市場を抜けて、

お店の方に尋ねると、スイカは梅雨明けまで。もう甘くない、とのこと。買わずに店を出たいけれど、母は何でもかんでも買おうとします。

とくに、TPに申し訳ないと思っているらしく本当ならスイカとメロンをセットにして送りたいらしい、私が荷物になるけん、いらんいらんと言っても、ちくわやら、油揚げやら、自分の好みのものをあれこれ買ってしまいます。玉子はさすがに断ります。母、レジの受付の女の子と長話しています。どうやら、ネイルを可愛いと褒められているよう。「これ?シール」「あじさいですね?私は花火」「わー、可愛い」「お客さんも可愛いー」

母が、安いという店でガソリンを入れています。「何でー?さっきまであったのに」とポイントカードが無いと騒いでいる声が車の中まで聞こえてきて、店のおじさんが自分のところのポイントカードを貸してくれています。

「あ、カンナ!」昔はどこにでもあったのにねーと、信号待ちの時間、母が懐かしがっています。

最後は、団子。だんご汁の団子を買うというので道の駅へ。

「そこで食べただんご汁が美味しくて、店のひとに美味しいですねーって言ったら、中で売ってますよって」今日は暑いから団子だけ買って帰るそう。私にも買ってくれます。

少し車を走らせると、また別の道の駅です。「今日はもうお父さんのとこ行くの辞めよう」どうやら父の納骨堂に行く予定だったらしいけれど、タケノコが美味しいという道の駅でタケノコ飯を買いたいらしい。母はレジで何らかのポイントを貯めようとして説明を受けて、諦めています。

季節じゃないものの、タケノコの煮物やら焼き鳥やら、あれこれ買って食べます。母は熱中症にならないようにと巨大なタンブラーをいつでも持ち歩いています。買ったお惣菜で美味しい昼ごはんです。ふと、お隣にいた車椅子の方に挨拶すると、どこに行かれるんですか?と声をかけて下さってお喋り。10年前、親戚一同が何十人も集まってなにかのお祝いをした後、看護師の仕事に行ったら、そこで倒れてそれっきり、麻痺して、もう情けなくてとおっしゃるので「左手も動いて、車椅子だっていいですよ、うちの父も車椅子でもいいから生きていて欲しかった」などと会話、そのうち旦那さんも参加して「まだ体が動くうちだったからよかった、これがお互いに年取ってから倒れたら、何も出来んやった」まだ家事の引き継ぎも何でも、一緒にできるから良かったとのこと。「最先端ですね!家事男子」とか言って大笑いします。「またどこかで会ったら声かけますね」とお別れ。母はまたネイルを褒められています。すごいんだな、ネイルのちから。

八女から高速に乗ろうとしたら、工事中で70分の渋滞とのこと。

母は「3号線で帰ろう」と、下道へ。

「あれ撮りい!撮った?」何でしょう、これは。私はこうやって福岡の知らない道を通るたびに、本当に九州のことを知らなかったと思い知らされます。いつも助手席に乗って、母や祖母、祖父と車で移動していただけで、その場所がどこかも意識していなかったので。「自分たちで旅行するようになって、地図を意識するようになった」と言ってみます。

太宰府から都市高。長い時間、母と免許といつ返納するか、老後はどこで暮らすかなど、笑いながら夢を語り合います。きっと余程ダメにならない限り、免許は返納しないだろうし、引っ越しもしないだろうけれど、それでも。

あー、楽しかったねーと帰って来て、仏壇に手を合わせます。「お父さん、今日は行けんでごめんね。今日はいろんな出会いがあったよ」お米屋さんのことと、車椅子の女性たちのことらしい。「お母さんさぁ、ポイントカードは行く前に、お財布で場所決めとったら?さっきまであったのにーって大騒ぎやったね」「だってさっきまであったのに」買ってきたお惣菜をつまみに、巨大ビール缶からビールを飲んで、足りない分はコンビニで買ってきてビールを飲みます。私はとうとう我慢できなくなっていた、本来の帰省の目的、掃除をします。まずはトイレ、洗面台、台所。とにかく掃除機をかけます。玄関で声がしたと思ったら、甥っ子が自転車用ヘルメットを被って登場、やがて弟もヘルメットを被って登場。弟は今日、沖縄に出張だと言っていたのに、早めに帰って来てくれたんでしょう。甥っ子に、100均で買った真っ赤なレジャーシートを「これ、私が探しに探して、選びに選んだレジャーシート」と渡すと、少し不思議そうにして、すぐ自分のリュックにしまっています。弟と甥っ子は、こないだ京都の叔父叔母たちと行った温泉旅行のときの湯もみの道具を作ると言って、板と棒を買ってきていて、父の道具箱から彫刻刀を出して穴を開けたりしています。私も参加して甥っ子に力の入れ方を教えます。「ここを伸ばして力を入れて、ここは、淵をすべらせて」大騒ぎしたら弟と甥っ子は帰って行きました。母「あんたは本当に、子どもに教えるのが上手やね」「本当?うれしい」私は保育園の頃から弟を育ててきたような感覚だから、慣れているのかな?そうやったら嬉しい。母はいつでも妹か娘のようなポジションでした。明日はもう朝起きたら、東京に戻らねばならないから、なかなか眠りにつけません。