東京の日の入りは九州に比べて恐ろしく早く、毎年のように驚きます。まだ17時台だと言うのに夜中のような暗さ、仕事から帰って自転車を停めていると、下の階のGさんがお弁当を持って出て来てくれました。「これ、ある。食べる?」おお、嬉しい!ちょうど晩ご飯作るのめんどくさいなと思っていたところ。天使かと思った。どうやらパート仲間の独自のルートで物々交換しているらしい。台湾出身のGさんとは全部の言葉が通じ合っているわけではないでしょうが、いつも雰囲氣で会話をします。数日経ってから、ああ、そういう意味だったのか!とわかることもあります。
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2012/07/18
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G家の一人息子は背の高い無口な高校生。ダンナさんはときどき家の前を寝間着でぷらぷら歩いている。普段から全くと言っていいほど生活の音が聞こえません。それでも夏は玄関を開けて蚊取り線香を焚いているし、日が暮れたら雨戸を全部閉める、夕方にはいつも何かをニンニクで炒めるいい匂いがする。細くて小さなGさんだけが働き者でいつも1階を出たり入ったり、出たり入ったりしています。一度、我が家からの水漏れでGさんちの台所に入ったことがありますが、そこには冷蔵庫ひとつだけ、他には何にも無い空間、別の世界に迷い込んだかのようでした。毎日いったい、どんな風に暮らしているんだろう。謎は深まります。