目に焼き付ける

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新しい朝が来た。さあ、リュックの中身をベッドの上に置いて、水筒に水道水を汲んで、身軽になってトロントの街歩きです。TPは2〜3日に一度取り替えていたらしいTシャツの最後の一枚を着ているよう。私は毎晩洗濯しているTシャツを下に着て、長袖を着て、薄手のジャンパーを羽織ります。トロントっ子たちに人氣だというコーヒーショップで、もうセントが何が何やらで手のひらに乗せてレジの女の子に「大丈夫、問題ないわ」と取ってもらった小銭で買ったブラックコーヒーとクロワッサン、ベリーのスコーンを頼んだけれど出てきたチーズのスコーンで朝ごはんです。すぐ隣りの工事現場へは、キャベンディッシュのガソリンスタンドにもあったコンビニ、Tim Hortonsという店でテイクアウトしたコーヒーを6杯、働くひとが買って運んでいます。思い返すと、いくつもの工事現場に何杯もテイクアウトされて持ち込まれる「Tim Hortons」の赤い紙カップがあったわ!長距離バスが途中停車するガソリンスタンドにもティム・ホートンズがたくさんあったわ!飲んでみたい、ティム・ホートンズのコーヒー。

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まずは、旅行前にトロント留学していたHさんが教えてくれたローレンスマーケットへ。今日はマーケットはお休みだから、場所だけチェックしておいて明日の朝、また来ましょう。

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次はユニオン駅。明日の朝、空港に戻るための電車が出る場所を確かめておきましょう。この、前もって場所を確かめておくことがとても重要、TPとそう言い合います。絶対にわかりそうな場所でも、当日行ってみると迷ったことが何度もあるから。今回も、ユニオン駅から思ったよりも遠い場所に、空港行きの電車のホームはありました。チケットを買っておきます。

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どこからでも見えているトロントタワーは、上るのにたくさんお金がいるようだから、下から見上げるだけにします。少しくたびれたので、タワーのふもとの花壇に座って水を飲んだりしている間、TPはひとりで散策しています。一服していると、遠くの方にTPが見えたので手を振ってみますが氣づかないよう、キョロキョロしながら歩いているTPの全景を、こちらも遠くから見ます。戻ってきたTPが「ブルージェイズの球場があった」と興奮しています。川崎はこんな街で野球をしていたんだ、球場の近くまで行って、じーんとします。

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歩いて、カナダで大人氣のスポーツ、アイスホッケーの競技場の近くをウロウロします。TPは、本当は野球やアイスホッケーを見てみたかったと言います。今はシーズンオフだから見られないけれど、その国でしか見られないものを観たいといつも言っています。「オペラとか、クラシックコンサートとか、サウナとか。全部、行ってみて良かったろ?」私はどれも最初は尻込みするけれど実際に行ってみると、誘ってくれたTPよりも感激しているタイプ。

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私がどうしても行きたいと主張したトロント島へ、ひとり8ドルの往復チケットで片道わずか15分の船旅です。トロント島には3箇所の船着き場があって、30分ごとにどこかに到着するよう。その仕組がわからないので、係の男性に「これは3往復するってことですか?」と尋ねると、違うよ、どこかの場所に到着したら、そこから30分とか40分歩いて、別の港からフェリーに乗ってもいいし、ゆっくりして同じ港からフェリーに乗って戻ってもいいんだよ、というようなことを、近くにいたお客さんも加わってみんなで教えてくれます。その、みんなが教えてくれたということだけで、じーんとします。

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複雑な地形の地図をさっと見て、

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「コヨーテが生息しています。普段は危険じゃないけれど」みたいな看板を見て、

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対岸のトロントの街を眺めて、

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実際に暮らしているひとたちがいる住宅街を抜けて、

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反対側の海岸へ。

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氣がつけば、無我夢中になって石を拾っていました。そしていつの間にか、石オーディションなど開催していました。「これ、職場のひとへのお土産にしよう」と言うとTPは「門ちゃん、石で喜ぶひとはあんまりおらんよ」とのこと、そうかしら、でもそう言われたらそうかも知れない。拾った石をいくつも元に戻します。

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トロント島の猫、全然人間を怖がらないんですけど。

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明日はもう、日本に戻るための乗らねばならないんだから。トロントの街をできるだけたくさん、細かく目に焼き付けておこう。

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トロント島にも食べられそうな野草がいっぱい。おいしそう。

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フェリーを降りたときには、あれほどたくさんいた観光客も、いつの間にか散り散りに、人っ子一人いなくなってしまいました。そして自分たちがどこを歩いているのかもわからなくなります。誰もいない場所で、全力で歌を歌ってみたりします。「このまーま、どこかとーく、連れてってくれないーか」ブルーハーツじゃなくてハイロウズ?いや違ったっけ、クロマニヨンズでもなくて何やったっけ?とか言いながら。

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別の船着き場へ行こうとしていたけれど結局たどり着けずに、また元の船乗り場からフェリーに乗ってトロントの街に戻ります。忘れたくない。トロント島の時間、全て忘れて頭がすっからかんになった時間。

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ぼーっとしたまま、地下街のフードコートへ。私が「重さで値段が決まるみたいよ」と言ってもTPもぼーっとしているのか、重たそうなハンバーグなど取っています。ふたつで2500円くらいのランチ。

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またティム・ホートンズがあって、長蛇の列。コーヒー飲んでみたい。

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トロントの街を隅々まで目に焼き付けるために、ひたすら歩きまわります。

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歩きに歩いて、大きい公園へ。ついにティム・ホートンズでコーヒーを買って。Lサイズでも1.8ドルくらい。何て安いの!カナダの物価に打ちのめされつつあった心も、すっかり元氣を取り戻します。

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カナダのスズメは、ほっぺたに黒丸が無いタイプ。そして日本のスズメの1.5倍くらいの大きさ、ぷくぷくと太っています。

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後で買いに来るよ、カナダの酒屋に心でそう言って、また歩きます。トロント大学の「ブックショップ」という看板があったので入ってみると、大学のオリジナルグッズやリュックや洋服を売っているショップでした。悩みに悩んで、私はリュックを、TPは試着をしてTシャツを買っています。「これからは、Tシャツは旅行先で買おう。そしたらお土産にもなるし、思い出にもなるやん」TPはうれしそうに言っています。TPは足を痛めたのか湿布を買っています。「サロンシップ買おう」とか言って。いい間違えているような氣がするけれど、くたびれて訂正する力も無いので、とにかくトロントを目に焼き付ける方に余力を使って。

印象的なこと。トロントには若いホームレスが多い。大声で叫びながら歩く危ないひとも多い。朝すれ違った叫ぶひとが、夕方もまだ叫んでいるので、本当にご苦労さまと心でねぎらってみます。旅行者では知り得ない、格差みたいなものとか歪みみたいなものがあるのでしょうか。 

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今日もまた、本を閉じるように突然夜がやって来ました。国土が広くて、山が遠いから突然に夜になるようです。歩き疲れて「もう、適当におそうざい買って、部屋に戻ろう」

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この国に来てから、ほとんどスーパーとかデパート的なものには入っていなかった、一体何をしていたんだろう、ほとんど移動していたんだろうか。

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どのおそうざいを買って良いものかよくわからないので、クスクス的なものと、パスタ的なものを選んで買います。そしてお店のひとはじっと目を見て私たちの注文を理解しようとしてくれるのだから、やっぱり優しいひとが多い国だとあらためて感じます。

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私は酒屋でビールを買い足して(ビールは日本とあまり値段が変わらない、少し高いくらい)、TPはジュースを買って、部屋で乾杯です。

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私は、無印のリュックを通勤にも旅行にも愛用していたけれど、花柄のリュックを見つけてしまったからにはもう、一応悩みに悩んでみたものの、絶対に買うしかなくなりました。65ドル。使うリュックは常にひとつだけと何故か決めてしまっているので、「この使い古したリュックを捨てんといかんくなるし」と悩んでいると「それなら俺がもらおうか、そのリュック。街歩き用に」とTPが言ってくれたので、目がパチっと開いたようになって速攻で買ったリュック。早速、旅の荷物を全部入れ替えます。タグにはビンテージフラワーと書いてあります。そうだ、私はこのビンテージな感じの花柄に滅法弱いんだ。

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またしても、TPが寝落ちしたので、ひとりでエントランスで一服しがてら、宿の中を散策します。共用のキッチンを覗くと、昨日受け付けてくれたKさんと他の泊り客がいたので少し話します。そう言えば、昨日の夜中、パーカーにパンツいっちょの女のひとが突然、部屋のドアをたたいて「すみません・・・すみません・・・電話貸してください」と言われたんだった、「部屋の中に、鍵も携帯も、財布も、全部置いたままロックしちゃって、締め出されちゃったんです。Kさんに電話したくて」と言ってたっけ、あまりにも深夜のことで夢かと思っていたことを思い出してKさんに聞いてみると「そうだったんですか!あのひと、常習犯なんですよ。ヤバくない?部屋に来たんですか?」とのこと。結局はロビーに電話があるのでそこから寝ているKさんに電話があって、部屋の鍵を開けてあげたそう。色んなひとがいるな。キッチンにはKさんの他に20代の女性が2人、それぞれワーホリと語学留学の長期滞在中らしい。パスタなどゆでて食事しています。(そうだ、TPがワーキングホリデーのことをワーカーホリックとか言い間違えていたけれど、それを訂正するよりも余力はトロントを目に焼き付けることに使ったんだったっけ、明日にでも言い直してあげねば)

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キッチンを出て、ベッドに入って本を読もうとしたらもう、限界が訪れたことがわかったので、おとなしく電氣を消して、寝ました。バタンキューっと。