高慢と偏見

湿っぽい部屋で、咳き込んで起きます。少しおしごとを進めて、朝散歩へ。風邪が悪化しないように祈るばかり、夜に用事があるので落ち着かない。そんなときにはコーヒーがあるとしあわせです、たとえそれがインスタントでも、40バーツ。

パソコンでおしごと。おしごとして良かった、危ないところだった。ひと山超えていざ出発!どうしても行きたかった雑貨屋があるのです。フロントのひとたちに地図と住所を見せて「ここに行くにはどうすれば?」と聞くと、タクシーの方がいい、バイタクでは遠すぎるとのこと。素直に従ってタクシーを呼んでもらいます。ただ、東南アジアはすっかり携帯社会、アプリでタクシーを呼ぶしか無いそう、ガードマンのお兄さんが自分のアプリで呼んでくれました。(うなぎパイ効果?)


アプリなら最初から価格が決まっているので安心、246バーツ。10分ほどホテル前の椅子に座って待ちます。大渋滞(地元のひとはトラフィックジャムと言っている)に次ぐ大渋滞、抜けても抜けても大渋滞、1時間半ほど乗っていたでしょうか、だいたいの住所は合っているのに肝心の雑貨屋がわからないのか、袋小路に入ってしまった運転手さんは首を振りながら「...ここ」とか言って降ろそうとするので「いいえ、ここではありません」と淡々と地図を見せてUターンしてもらいます。もう1本先もまた行き止まりの袋小路。また「...ここ」と降ろそうとするので、地図にある電話番号に電話をしてと頼みます。一度めは電話番号をかけ間違っているのがスマホで見えたのに、つながらない!と切れるので、間違っていたからもう一回と身振り手振りで伝えると、大きいため息&舌打ちで再度かけてくれ、ようやくお店につながったよう、大通りで「この辺」と言って降ろされます。もうお互いに疲れ果てているので、私も素直に降ります。地図が頭に入っているので、なんとなく方向性は間違っていないのがわかったから。

そこから商店街のひとたちに地図を見せて、あっち、こっち、もう2本先の通りとたらい回しになってもなお、雑貨屋は見つからず。あきらめかけた頃、暇そうな客引きの運転手さんたちが声をかけてくれました。最初に住所を見せると「郊外だよ」と言うので「ノー!そんなはずない」と返すとみんなで大笑い、どうやらからかわれたようです。今度は真剣に住所を見て、ああでもないこうでもないと話し合ってくれてみんなの結論は「そこの通り」と言うのは最初のタクシードライバーが入った袋小路、念のためもう一度入ってみてもやっぱりお店はありません。客引きの運転手さんたちのところに戻って、やっぱり無かったじゃん!お願い、この番号に電話して聞いてみて(どういう理論で?あなたたちが間違ったんだから責任とって、みたいな心境で?)と頼んだところ、当然のように電話をかけてくれ、しばらく地元の言葉で喋って、私にも代わって店主とつたない英語で喋って、どうやら今日は休業だとわかります。ガッカリ。でも明日は開いているそう。「それでも、場所がわからないんです」と言ってまた運転手さんに電話を代わると、ようやく今いるところからどうやったら着くかを現地語でやりとりしてくれ、電話を切ったら「セブンイレブンのベリー近く、黄色い壁」とわかります。3番通りとのこと、ホッ。この先だ。それなら、一旦ホテルに戻りましょう。ホテルまでタクシーでいくら?と尋ねると300バーツ、高い高い、私はここまで246で来たんだよ、と言うと笑っています。が、同じ道をまた1時間半もかけて帰るのは私も嫌なので、近くの駅までと再交渉します。200と言うので150と返します。交渉成立。まずは路上で一服、運転手さんにもタバコを一本お礼として渡します。

メーターを上げて20分ほど、最寄り駅に到着するとメーターには167バーツと出ていますが、本当に150でいいとのこと。無事、帰りの電車に乗ることができそうです。今回の収穫。フロント係のひとたちには手土産を、無理なお願いは暇そうなタクシー運転手に交渉を。昨日からあらゆることを、あらゆるひとが助けてくれようとします。みんながいいひとではないし、旅の恥はかき捨ての逆バージョン、旅人に対する恥は知ったこっちゃない、みたいな目にもチョコチョコ会うけれど、それは大した問題じゃないってことがわかりました。私は、見知らぬ地元のひとたちに、助けを求めたり適当なことを言われて文句を言い返したりすると腹の底から元氣が湧いて出てくるタイプだっ!

今回の出張で、ミーティングやら営業やらで忙しくしているひとも中にはいるのだから、遊んでばっかりではいけないと近くのカフェでWiFiをつないでオシゴトするフリ。ほっ、緊急事態はありませんでした。コーヒー50バーツ。電車に乗って戻ります。44バーツ。

まだ夜のパーティーまで2時間ほどあるので、ホテルの最寄り駅で大好きだけれど名前がわからないフルーツを買って、地元のひとを真似して、歩きながら食べます、25バーツ。

ホテルに戻って、シャワーを浴びて着替えます。そして今日のパーティー会場に向かいます、34バーツ。

元隣席のT君と受付で一緒になってホッとします。ひとが多いので。安心して一緒に喫煙所でまずは一服、バルコニーからの景色に和みながら、お互いに今日の一日をお喋りし合います。T君はレコード屋めぐりをしたそう、たくさん視聴して戦利品のCDを見せてくれました。ステキ!絶対に面白そうなジャケット!と興奮します。

そのうちに、会場にはいつものメンバーや見知らぬひとたちが続々と集まってきて。ここからが長い長い挨拶やら表彰やら写真撮影やらで2時間半後にようやく乾杯。見知らぬひとからもしかしてXさんですか?と社内ではザ・おばちゃんキャラのひとと間違えられて血の氣が引きます。おばちゃんカテゴリー・・・すぐに間違いに氣づいたようで「すみません、お会いしたことなくて声だけで」と言い訳されても私の落ち込みは戻りません、ということは私は自分をおばちゃんカテゴリーに入れていなかったという高慢さ。そのことにゾッとして、ザ・おばちゃんキャラのひとにも失礼だと落ち込みます。

そんなことよりもようやくお食事。ひと品めを食べて。

ふた品めを食べて赤ワインを飲むと。おや?なんだか氣が遠くなっている、明らかに体調がおかしい、というより吐き氣がする。同じテーブルだった女性社員たち、別のテーブルから呼び寄せて楽しくお喋りしていた男性社員のひとたちに「急に、氣持ちが悪くなったから、帰ります」と言って「えー、寂しいです!」と言われてエレベーターまで見送ってもらって一階に降りると、たまらない吐き氣、トイレに駆け込んでゲーッと吐きます。今食べたもののあとから、昼間に食べたフルーツが出てきます。トイレを出るともう一度吐き氣、超高級ホテルの超高級な個室のトイレで存分に吐きます。ヨタヨタとフロントを歩いていると、フロントマンが声をかけてくれ、何かお困りのことはありませんか?とのこと、私の顔色を見て、お水、と口にするとサッとペットボトルの水を持ってきてくれます、さすが超高級ホテルのフロントマン。

ありがたく頂戴して、もう一度トイレに駆け込んで。もはや自分の部屋よりも落ち着く超高級ホテルの超高級な個室トイレ。

ロビーで休んで。

フロントに併設されているカフェでコーヒーを注文して、117バーツ(サービス料込み)。もう一度トイレに駆け込んで、しばらく趣味の良いソファーに座って日経新聞などを読んでいると、奥まった場所なのにたまたま職場のひと、割と仲良く話す方ふたりが通りがかって声をかけてくれます。「お茶ですか」「日経新聞ですか」とどちらも面白いけれど「実は、氣持ちが悪くなってトイレで吐いて、休んで、フロントのひとが水をくれたんですよ、さすがですね、それで8割体力回復しました」と報告。ヨカッターと喜んでくれます。まだパーティーは続いているはずなのに、だんだんとクラブの雰囲氣、大音量でお喋りできなくなったから抜けてきたそう、やっぱり外れもの同士っていいわ、安心するわ。また週明けに!と手を振って別れて、路上のバイタク、適正価格をすぐに言ってくれたので安心して乗ります、150バーツ。20分ほど夜空を見上げながらのツーリング。今日の収穫。ホテルのロビーで休むのは申し訳ないと思ったけれど、申し訳ないから無理してすぐに帰ろうとするのは止めた、そう思ったこと。お陰で安心して休んで、職場のひとたちと心地良い会話までできて、安心してホテルに戻ることができた。

フルーツを、欲張って全部食べちゃったから消化不良を起こしたんだな、お腹がすいていたからって一氣に、良く噛まずに、歩きながら食べ尽くしたものだから。それにしても、いつも120点を目指していたからくたびれていたんだ、今日は80点くらいの楽しみでいい、行く前にふと、そう思いついていつもよりもフラットな氣持ちで向かった苦手なパーティー。レースのワンピースにしてヨカッタ、心地良く過ごすことができたし、氣持ち悪くなったらすぐに去ることができた、素直な身体だった。自分の中の高慢と偏見を発見して、克服することができた。心配してエレベーターまで見送ってくれた女の子たちにチャットでお礼を言うと、既読スルーされています。どうやら2次会は大盛り上がりのようです。


備忘1。今回の両替における教訓。成田の両替は1バーツ4円なのに、現地のショッピングモールでの両替は1バーツ3.5円。つまり、400円払っていたところが350円で良くなる計算。成田をうんと控えめにしておいてヨカッタ、次回は現地で両替することにしよう、ただし情勢はすぐに変わるから事前の検索も大事。

備忘2。パソコンを持ってきての旅行は、あれこれ検索できてスムーズ。でも部屋に入るといつまでもネットしちゃう。