朝起きて共同トイレに行くと、ゴミ箱のトイレットペーパーがうんと増えていました。他に泊まっているひとたちも多いんだな。共用のベランダで一服、朝ごはんの湯氣が煙突から上がっていてのどか、本当にここはウズベキスタンなんだろうか、まだ信じられません。
朝ごはんがついている宿なので食堂に降りると、すでに宿泊者が10人ほど、地元のひとが大半の印象、目玉焼きとトマト、パンなどを食べていますがカウンターには生食パンのみ、どういう仕組なのか誰も教えてくれません。TPは生食パンにバターだけを塗って食べ始めてしまいました。みんな玉子とか食べとうよ、絶対になにかあるよと言いながら奥の方を覗くと、キッチンがあって女性が「モーニング?」と言うので「イェス」と答えてようやく皿をもらいます。朝ごはんを食べるだけでもアワアワするんだな。小豆を煮たようなものには味がついていないようですが、これが地元の料理かな?と全部食べてみます。
チェックアウトの際、この国で必須だという宿泊証明書(レギストラーツィア)をもらおうとすると、キョトンとされてしばらく待たされたので、ちょっと不安。その証明書がないと帰りの空港で警察に捕まると言うのです。これだけは毎回、もらうのを忘れないようにせねば。今日は午後から飛行機でウルゲンチという都市に移動します。ウズベキスタンは国土が日本と同じくらいの広さ、効率良く回るために飛行機移動を選びました。お昼までタシケント散策。宿のひとに地下鉄の駅への行き方を尋ねます。右行って、左行って、右。その辺で誰かに聞くといい、とのこと。チェックアウトして右行って左行って右行って学生に駅を尋ねます。ロシア語会話帳にある地下鉄、メェートローと行ってみると、地面を指さされました。この下らしい。
警備についている警官に頭を下げて、ただ地面に穴が開いているだけの階段を降ります。KASSAという窓口がいかにも切符売り場みたいなので窓口のお姉さんに、2ピープルと言うと電卓で「2,400」と書いて見せてくれます。ひとり1,200スム、ひとり18円。物価がまだまだ掴めません。地下帝国のような改札を抜けて薄暗いホームに降ります。電車を待っているひとたちからジロジロ見られまくります。ソ連時代の車両と思われる鉄の塊がゴゴゴッとホームに到着、乗り込むと乗客からジロジロ見られまくるので十分に観察できるよう、荷物からノートを出して広げたり会話帳を開いたり周囲を観察するふりでゆっくりと一周して見せたりします。おさるのサービス。ガイドブックでは、ウズベキスタンの地下鉄は撮影禁止とあります。だから写真を撮ることができません。
まずはチョルスー・バザールへ。広い市場にはお菓子のコーナー、ウズベキスタンナンという丸い30センチ幅のパンのコーナー、人間の足一本分くらいの肉を売るコーナー、バケツいっぱいのチーズをすくって売るコーナー、野菜売り場など、売るものの種類ごとに分かれてずらりと並んでいます。ジロジロ見られまくるのでカメラを取り出すことも躊躇してしまいます。お手洗いに行きたくなったので、露天で人形を売っていたおばさんに「ホジャットハナ?」と聞いてみます。ウズベク語でトイレの意味。「ホジャットハナ」とすぐ通じて右行って左行って右みたいなことをウズベク語で身振り手振りで教えてくれます。右行って左行ったところで再び露天のおばさんに「ホジャットハナ」と聞くとまっすぐ行って右みたいなことをまたウズベク語で手振りで教えてくれます。「ラフマッ」とウズベク語でお礼を言って、初の公衆トイレ。入り口で500スムを支払う仕組みらしい。用を足して水を流すと、ドバーッと大量の水が勢いよく流れて右足がびしょびしょになります。教訓、トイレの水は勢いよく流れるから流したらすぐにその場を離れること。
再び地下鉄に乗って、中心地のティムールアミールへ。やっぱり暗い地下。
なぜか女子学生から英語でインタビューされてスマホで動画を撮影されたものの、ウズベキスタンの歴史について聞かれてさっぱりわからず、布や陶器のデザインが興味深いから買って帰りたいと答えると沈黙、サンキューと言われて終了しました。晴れてはいるものの薄ら寒いのでベンチに座って長靴下を履きます。マツキヨで買ってきた着圧ソックスというもの、機内でも履いてむくみを抑えていましたが、こういう使い方もできるんだ。TPが「あれがウズベキスタンホテル」と指さしたところ、古くて素敵な建物で泊まってみたいと言うと「日本で何度も泊まる?って聞いても、反応無かったよ」と言われて、そうだっけ?と思います。そろそろいい時間、タシケント空港へ行きましょう。タクシーの運ちゃんが「50,000スム」と言うので昨日よりは距離もあるからと2万と答えると3万になったので乗ります。相場がわからない。
空港に着くと、入り口で荷物検査がありました。私たちはほぼ顔パス、無害だと思われているのでしょう。ウルゲンチにはヒヴァという観光名所があるらしい。
昨日着いた空港とはまた違う建物、もっと簡素です。
空港内のカフェで、サモサ10,000スム(芋入り)、餃子型パン9,500スム(マッシュルーム入り)、パイ9,000スム(カレー味)。ホットコーヒー9,500スム、アイスコーヒー13,500スム。搭乗まで30分以上はあるはずなのにみんな機内に乗り込んでしまったので、飲み込むようにパンを食べてコーヒーを飲みます。初老の日本人夫婦をお見かけ、ガイドの青年を雇っています。
機内ではぐっすり眠って、起きたらもうウルゲンチでした。予定時刻より30分も前に到着したよう。
着陸すると機内から拍手がこぼれました。ウルゲンチの空港を出ると、タクシーの客引きの嵐、5ドルと言うので得意の「ディーセッチ」と答えると「ディーセッチ?ディーセッチはないわー」みたいに首を振るのでならいいと断ると、3ドル、2ドルと交渉は続きます。そのやりとりを後ろで見ていた主のような運転手さんが、2ドルで十分じゃないか、さっさと行けと助けてくれたので2ドルで出発。まずはウルゲンチの駅前にあるKASSAで明日乗る予定の寝台列車の切符を買います。今回、言葉がほとんど通じないのでロシア語会話帳から「寝台列車」「明日」「出発」「到着」「ウルゲンチ→ブハラ」と書いた紙を受付で出すと、お姉さんが、うんうんと頷いて時間を書き込んで紙を戻してくれます。2等と3等があるので、2等を指さして2人分252,000スム。ひとり1900円ほどなので、物価からすると安くない金額。空港から駅まで乗ったタクシーの運ちゃんは、ウルゲンチの観光地、ヒヴァをタクシーで案内したいと言って離れてくれません。10ドル、いや8ドルでいいとのこと、どれだけ断っても帰ってくれない。切符を買い終わってもぴったりくっついているのでTPが肩を抱いてサンキューと言って外に促すとようやく、あきらめて立ち去ってくれました。ヒヴァまでは地球の歩き方を参考に、駅前からバザールまでバス、バザールからシェアタクシーに乗って行くつもり。KASSAを出るとまたタクシーの運ちゃんたちに囲まれたので、目の前に来た19番バスに飛び乗ります。運転手がバザールと言っていたので助かりました。
バスの乗車賃は、前方に紙が貼ってあるのでひとり1,000スムだとすぐわかります。約15円。物価がわからない。
バザールに着いて、シェアタクシー乗り場を尋ねるも誰もわからないと言います。歩き方にあった目印のサッカー場、フットボールスタジアムと言ってもキョトン、サッカーボールを蹴る絵を書いてようやく、あっち、あっちと教えてもらいます。道行くひとに何回も尋ねながら、ところどころでタクシーの客引きを交わしながらようやく、軽のワゴン車を見つけて近づき、ヒヴァ?と尋ねるとうんと運転手が頷くので乗り込みます。
ワゴン車から見ても何の目印もない場所、よくたどり着けたなと嬉しくなります。
先に座っていた若いお嬢さんに値段を確認すると、前方を指さします。ひとり3,000スムと書いてあります。40分ほどの距離で45円くらい?タクシーの8ドルと比べて感慨深い値段です。
また2人乗り込んできて出発、車窓からは綿花を摘むひとがずっと見えています。時給いくらくらいだろう。
ひとり、またひとりと降りて行き、ようやくヒヴァに到着、砂の城壁を見た瞬間、わーっと声が出るほどの迫力、昨日からバタバタしていたけれどようやくウズベキスタンに来た実感が湧いてきました。
お土産物屋さんが並ぶ通りを歩いて、城壁内で宿探しをします。
もう夕方。観光客もホテルに戻る頃。ひとの少なさが感情を大きく揺さぶります。
歩き方にある宿で、出てきた優しそうなお母さんに値段を聞くと、息子らしきひとに電話をして、私と話すよう促されます。予約していないこと、一晩だけ泊まりたいことを伝えると市税を入れて29ドルとのこと。今夜はここに泊まりましょう。本館から離れたところにある建物に案内してもらいます。
外廊下に出ると、日が傾いていました。
受付で買ったビール6,000スムを開けて飲みます。一日ぶりに飲むウズベキスタンビールは、麦の味が濃い、最高においしいビールです。
ひとやすみして散歩に出ると、城壁の向こうに半月が浮かんでいました。
宿の息子、ムラッドさんが教えてくれたスーパーマーケットを覗きます。
ハムやサラミ、チーズを量り売りで買っているひとが多い。私も買いたい。
TPが歩き方で見つけたレストランへ、メニューに値段が書いていないので、いくらですか?と尋ねると笑顔が白々しいほどに大きな女店主は「ガイドブック持ってないの?」と電卓をこっそり叩いて「20,000」とか「25,000」とか見せてくれます。お隣りのテーブルにいた西洋人の団体さんは、メニューを見て、店員に何か質問して納得行かなかったのか席を立って帰ってしまいました。急に不安になります。TPに歩き方を見せてもらうと「一皿9,000スム」程度と書かれているので、もしかしてぼったくられてる?と不安は募ります。ラグマン(羊肉うどん)、マンティー(羊肉蒸し餃子)、プロフ(パエリヤ風ごはん)とビールを2杯頼んでお会計は110,000スム、高いような氣がします。
マンティーはカピカピでした。他のテーブルには2組のカップルがいましたが、彼らが堂々と食べていたので、そんなに悪いお店じゃないのかも知れない、ぼられたのかどうかはよくわからない。
宿に戻ってシャワーを浴びていると、お湯がぬるくなったと思ったら排水が悪くなってきたものだから大至急で泡を流します。TPは移動疲れか、シャワーも浴びずに眠ってしまいました。さっきまで「この宿の決めては、お母さん。お母さんが可愛いかった」とか「俺が選んだ店にずーっとケチつけられて嫌だった」などと言っていたのに、電池が切れたように。私はライターのオイルが切れたので、受付にいたムラットさんにマッチをもらって、日記を書きながら部屋で一服します。
電氣を消して窓を開けると、お向かいの家の様子が見えました。本当にウズベキスタンなんだな。まだ信じられない。明日はレギストラーツィアをちゃんともらえるかしら?