6時に目が覚めてもまだ真っ暗、7時頃にようやく薄青く色づいてきます。
TPを起こして散歩。ひとっこひとり歩いていません。空港まで戻るための、肝心のバス停をようやく見つけてホッとします。
車両が入れないところも多いので、サントリーニ島ではロバたちも重要な働き手らしい、「ごくろうさま、頑張ってねー!」と日本語で声をかけます。
1%しか空いていないお店の中でもさらに朝食が食べられるところは1軒しか見つかりませんでした。「Hungry Donky」というカフェへ。私とTPは、モーニングセット2人前(14ユーロ)を頼んで、端っこの席でこっそりと他のお客さんを観察します。ペンキやコンクリートが点々と付いた作業着を着込んだ男たちが、コーヒーやサンドイッチ片手にお喋りしています。メニューをもう一度良く読むと、モーニングセットにはハニー&ヨーグルトが付いてくるらしい、そしてドリンクはセットに含まれていないらしいことがわかります。コーヒー1杯3ユーロ(セット料金で0.5ユーロ下がった)。TPは、ヨーグルトがまだ来ていないことを店のひとに伝えたいけれど、次々とやってきてはコーヒーを注文する屈強な男たちに、言い出すタイミングを見いだせず、なかなか店のひとに声をかけられません。10分待ったところで、あんまり時間をかけると、いかにもヨーグルトの意味が重たくなってくるよ、さっさと言った方がいいよとか口出ししてようやく、TPが店のひとに声をかけました。「ん?ヨーグルト?無い」と肩をすくめられて終わり。
お会計を済ませて店を出て少し歩くと、TPが「俺、いやや!この歳になって、ヨーグルトひとつ出てくるかどうかでタイミング図って言い出せんで、奥さんに背中を押されてやっと聞けて、無いって言われて終わり、もう嫌や!」とか言うのでふたりして大笑い、腹を抱えて大笑いする声が、イアの街の空に吸い込まれます。あーあ、おかしい。
朝の8時。屈強な男たちも、ロバたちも労働開始です。
宿に戻って、荷物を整理します。最後まで入り口のドアは半分しか開きません。ベランダで9時に迎えに来るというジョニーを待ちます。案の定、時間に遅れてやってきたジョニーいわく「10時に、ボスが来るから待てる?ボスが空港まで無料で送って行く」と言うので「・・・Why?」と尋ねるとジョニーも「・・・(肩をすくめる)」。もうこうなったら素直に従うしか無いので、あと1時間待つことに。ジョニーに、持参した和菓子を渡すと、何だこれ?みたいに嬉しいような嬉しくないような顔をして去って行きます。
TPが、一番の絶景ポイント、3つのブルードームが見えるスポットをようやく見つけて喜んでいます。着飾った韓国人旅行者の後を付いて行くと、小道の先にそのポイントはありました。「絶景に、韓国人旅行者有り。彼らの方が良く知っている。今度から絶景ポイントを探すときは韓国人旅行者の後を着いて行こう」とか言っています。
1時間後、ジョニーが「オーナーが来たよ」と迎えに来てくれます。さっきまでと違って明るい笑顔、和菓子効果だと嬉しくなります。すぐにオーナーのドミトリスさんがやってきて、いよいよ出発です。
ドミトリスさんのBMWに乗り込んで、空港まで。2ヶ月前に日本に新婚旅行で行ったと教えてくれます。「朝はハングリー(ドンキーに行ったんですよ)」と言いかけると「ドンキー!自分も毎朝コーヒーを買ってるよ!」とのこと。オリーブの木らしきものがたくさんあるので「オリーブ?」と尋ねると「ピスタチオ。この島の特産品は、ピスタチオ、小さいトマト、そしてフィグ」フィグって何ですか?と聞いたり、あれは何?風車、ここは何て街?ここはまだイア、あれは自分の家、上下で別の家族が住んでいる、フィラというサントリーニ島でもうひとつの大きな街を案内してくれたり、空港に行くのはこの街の東側の一本道しかないここしか無いと教えてくれたり、ドミトリスさんは運転は荒いけれどとても親切。
最後に、空港近くの砂浜を案内してくれます。ボルケーノの跡、石が拾えると火山岩や軽石を拾ってくれます。「私も石が大好きで、旅行先の石を集めている」と言うと「本当に?自分も必ず石を拾う。京都でも小さい石を拾った」「石は最高のお土産」「そう思い出になるし」と石談義で盛り上がります。TP「思いがけず、お仲間がおって良かったね」とか言ってます。
空港で、ドミトリスさんにも和菓子を渡すと、大げさに感動して見せてくれて、ハグしてお別れ。ドミトリスはかなりやり手のオーナーだな。次々と電話がかかってくると急に笑顔を消して細かく指示を出したり、街中ですれ違うひとに挨拶したりしていたっけ。日本でも成田からホテルまで200ユーロも払ってタクシーに乗ったとか、新婚旅行は2ヶ月かけてアジアを周ったとか言ってたっけ。手を振って分かれて振り返ると、もうやり手オーナーの顔でスマホで何やら連絡を取っています。さようなら、ありがとう。なぜ無料で送り迎えしてくれたのかよくわからなかったけれど、バスだと1時間半ごとに1本で乗り換えもあって大変だったようだから助かりました。
有ってないような荷物検査を済ませて、またプロペラ機まで20メートルの距離をバスに乗って(アメリカ人の男性が、この距離をバスに乗ることがおかしいと大爆笑するので、バス中の旅行客たちもつられてみんなで大笑い)、機内でお菓子をもらって、1時間のフライトはあっと言う間です。再びアテネ。
アテネの空港から、今度は地下鉄で中心地まで向かいます。
切符売り場で、TPが「ラリッサ(アテネ中央駅)」と言うと、ひとり10ユーロ、「109」と念を押されてホームへ。109って何だろう?と思っていると出発の時間でした。
電車に乗るとTPが「ラリッサって街がもうひとつあって、そっちに連れて行かれたひともおるって、ネットで読んだのを思い出した」と言い出すので、恐ろしくなってきます。他の乗客のひとに「この電車はアテネ中央駅に行きますか?」と尋ねても、誰も知らない様子、他のひとにも聞いてくれたりしても、皆、わからないと首を振ります。
途中で乗って来た男性に紙に書いたラリッサ、アテネ中央駅、ギリシャ語で中央駅と書き写したものを見せると、指を折って「あと4つか5つで到着する」と教えてくれたので「エフハリスト」と言うと「パラカロー」と答えてくれます。
本当に4つか5つで、ラリッサ(アテネ中央駅)に到着。駅のトイレは、鍵が締まりません。というか鍵がもがれて外れていて有りません。トイレットペーパーも、便座も有りません。仕方ないのでTPが持っていたトイレットペーパーをもらって、扉を手で押さえながら中腰で何とか用を足します。手を洗おうとすると、3箇所の洗面台のうち、ひとつは洗面台自体が無く、もうひとつは蛇口が無く、ひとつだけ洗面台も蛇口も残っているのでそこで手を洗います。
駅ナカのeverestというカフェで、サンドイッチを買います。約3ユーロ。私は茶色いパンに、マヨネーズとキノコを選びます。優しい店員さんが、丁寧に耳を傾けてくれ、指差しやら下手な英語とアイコンタクトで何とか意思が伝わります。そうこうしていると怖い顔の店員さんが来て、TPがパンやソースを指差しているのに、パンはどれだ!ブラウンかホワイトか!聞いてんだよ!みたいな口調でTPが少し考えていると、パンだけだな、パンだけでいいなら1ユーロだ!みたいにパンを放り出したので思わず私は「ノー!!サンドイッチ!」と割って入って睨みつけます。ニヤッとする怖い店員、肩をすくめて「サンドイッチな、わかった」とパンに挟むものを聞いてくれます。優しい方の店員さんは、申し訳なさそうに肩をすくめています。TPは鶏肉とハムとタラモソースを選んで約4ユーロ。他にコーラ2.3ユーロ、水0.7ユーロ、サンドイッチと合わせて10.9ユーロ。空港でテイクアウトしたコーヒーも確か、エベレストと書いてあったのでチェーン店なのでしょう。ギリシャのカフェ・ド・クリエ的な店かも知れません。
ネットで予約しておいたチケットで、電車に乗ってパレオファレサロスまで約3時間。
電車を乗り換えてカランバカまで1時間。車掌さんが行ったり来たりしてどこまで行くのかと聞くので、カランバカと小さい口でパクパクと答えます。すぐに日が暮れて真っ暗、また車掌さんが来て何か話しかけられたので口をパクパクしていると車掌さんは行ってしまいました。斜め向かいに座っていたヒョウ柄ミニスカートのセクシーな中年女性が「どこまで?」と聞いてくれたので「カランバカ」と答えると「次の次の駅、もうすぐよ」みたいなことをジェスチャーで教えてくれるので「エフハリスト」と言うと「パラカロー」と答えてくれます。ギリシャのひとたちは、ジロジロ見てきたりはしないけれど視界の端にアジア人旅行者を入れてくれていて、何かあればすぐに助けを出そうと(前のめりになったり、質問されたら答えようとする顔を)してくれるのを感じます。乗り換えでも見知らぬひとが、カランバカはこのホームだよ、とか、あと20分で出発だよ、とか氣にかけて声をかけてくれます。外は真っ暗でも、安心して電車に乗っています。
「カランバカ、カランバカ、カランバカ!!」としつこいくらいに怒鳴る車掌さんのアナウンスを聞いて電車を降ります。同じ電車から降りてきた「地球の歩き方」を開いている日本人女性がひとりで座っていたけれど、キャップを深く被って、日本人とはあまり口を利きたくなさそうだったので近づきません。
予約しておいたホテルに向かう途中、スーパーがあったので寄ってみます。缶ビールと、のど飴を買います。ギリシャに来てから、喉がガラガラして仕方ないので。
ケチャップとマスタードのコーナーが充実している様子。
ひっ、目の前に巨岩の景色が!カランバカは、メテオラ修道院という世界遺産のある町。明日はそのメテオラを観光するのです。
ホテル・ギャラクシー。受付の男性は、早口だけれど何とかわかりやすい英語、メテオラの地図をもらって、このあたりでおすすめのレストランを教わります。一泊4000円強の宿、アメニティはシンプルイズベスト、シャンプー兼ボディーソープと、歯ブラシのみ、ドライヤーも無いので自然乾燥です。ところで今回の旅行は、思い切ってアヴェダのパドルブラシを持ってきて本当に良かった。髪の毛をゆっくりブラッシングすると、飛行機の乗り換えのトイレでも、見知らぬ街のホテルでも、その瞬間、自分の家のようにくつろぐことができるのです。私はこれからずっと、このパドルブラシと共に旅行しよう、そう固く心に誓います。
昨日に続き、洗面台でパンツや靴下や洋服を洗って干してから、昭和の時代の小学生が修学旅行で泊まるようなホテルの廊下を通って、街を歩いてレストランへ。
Panellēnion。ギリシャ料理の本で見て、食べてみたかった鶏肉のレモンソース煮、TPが食べたいと言っていたミートボール、私が大好きなグリークサラダ。これだけで、もうお腹いっぱい。ライス付ける?と聞かれて思わずハイと答えたけれど、ライス無しで十分な量だ。
ワインは、ボトルと500ml、250mlから選べるので500mlを注文します。何ておいしいの!他のテーブルを見渡すと、ムサカというギリシャ料理のグラタンを注文しているひとが多い様子。「わかった!テーブルクロスが紙のところは、割と安いレストランで、これがタヴェルナって言うらしい」へ〜、そうなのか。チップも不要で、お会計は28ユーロ。グリークサラダのオリーブの実は、果実の味。
せっかくのタヴェルナなのにTPが他のひとのお会計でチップを払っているかどうか、レストランの他のひとたちが何を頼んでいるかばかりに氣を取られているのがチッと思ったりしたけれどそんなことはどうでもいいほどの美味しさ。「エフハリスト」「パラカロー」大満足でギャラクシーに戻ります。ベランダからは、今日も満天の星空が見えます、まるで張り紙のように。これからはもっと、フォークとナイフで食べるような洋食も、晩ごはんのメニューに加えたい、そう思いました。