しつこい

白髪って本当に不思議。前頭葉あたりの髪の毛をかきわけると、短くて細い白髪がいっぱい。分け目じゃないところの隠れた場所の方がたくさん白髪の子が成長している。太い白髪なら元氣いいな!と安心するだろうけど私のは細い白髪だから心細くなります。でも私には最強の味方、パドルブラシがあるから。ということで美容院に行きます。前回、美容師さんが沖縄に行くと言っていたので「沖縄、行けました?」と尋ねると「行けたー、でもひとも少なくて。でも八重山ってとこ、初めて行ったのね、もう自然がすごくて」とのこと。自然が手つかずで、わーってなったそう。「見えるひとなら、いっぱい、妖精とか精霊って言うの?が見えるらしいんですよ」とのこと。行ってみたい!私も、教えてもらったパドルブラシが最高で、母の誕生日プレゼントにしたこと(名入れして)や、旅行先に持って行ったら最高だったこと(軽いからいいよねー、とのこと)、TPママにも送ろうと思っていることなど話します。

 

私は髪の毛が伸びるのが早いよう、前髪有りのショートカットから前髪ナシのボブへの移行中です。パドルブラシに出会う前は、前髪ナシだとぺたんこの貧相なボブになりがちだったところを、今はパドルブラシがあるからふんわりボブっぽく。

 

白髪も染め終わって、新しい氣持ちで、新宿の街を当てもなく歩いてみます。小田急百貨店の地下の魚屋さんで、「フライにする」と伝えてスルメイカ(3杯で1000円)のワタを取ってもらいながら、ふと、「スルメイカヤリイカってどっちが固いですか?」と尋ねると「スルメイカですね、ヤリイカは柔らかいです」と教わって、良かったです、固いイカフライが食べたかったんですと答えると「それなら、ベストチョイスです!」と言ってもらえて、嬉しくなって帰ります。だから晩ごはんは今日もカラマリ。作れば作るほど、どんどん美味しくなる。特に今日のカラマリは、太めに輪切りにして揚げ時間も短めに、揚げ油の温度も高めにしたものだから歯ごたえが最高です。今日私は、昨日のチャットでのやりとり(変な争いが始まってしまったこと)を一日中、泥のように抱えながら、何とか一日を終えます。しつこい!

 

夜、TPがお風呂に入っている間、晩ごはんの準備をしていたところ、お隣りのミャンマー人の玄関口から脅すような声が聞こえてきます。「どうしたんですかっ」と靴下のまま外に出て、脅している男(スーツ姿の若手サラリーマン)と、お隣りのミャンマー出身の男の子(最初、私の自転車のカゴに、ポストのチラシをまとめて捨てていたであろう男性)に声をかけます。驚くサラリーマン「あなたは?失礼ですがどなたですか?通訳さんですか?」と言うので「はい」と答えます。どうやら、ミャンマーっ子たちが契約した不動産会社が家賃の保証会社と契約しているらしく、ミャンマー出身のK君たちは先月分の家賃と、家賃保証金(年間一万円)をまだ払っていないと言うのです。私は「家賃保証会社って何ですか?私は聞いたことない!」と言うと「全員、契約してもらっていますよ、聞いたこと無いですか?」と食いついてくるので「人生で一度も聞いたこと無いです。名刺ください」と言うと「だいたいあなたはどういうご関係ですか?この方との関係性は」とか言うので「隣人です」と宣言。

 

とにかく、家賃保証会社の社員というひとの口調が、脅し口調なものだから、ミャンマーからはるばるやってきて、毎晩居酒屋でバイトして明け方に帰ってくるK君はさぞかし恐ろしいだろうと、K君の加勢をします。

 

風呂に入っていたTPも「何、なに?」と玄関に出てきてくれ、どうした?とか聞いてくれるので「このひとが、すごい口調で脅して、怖くて」と泣き真似します。どうやら、K君たちは連絡がつかず、家賃も一ヶ月遅れているらしい。「わかった!なるほどね、海外から来たひとが、家賃を払わずに逃げたりせんように、あなたたちが保証しているわけですね!」とひとりで合点が行って、「K君、いつ払える?」などと中継ぎ、K君は「25日、いえ、20日にお給料入ります」。

 

私は何様なんだろう?でもK君は今回家賃を払ってもまた次の家賃があるだろうと「でも次も遅れますよね?」と脅し口調の男に言うと「ですよね、それなら毎月、数万円ずつ加算してお支払いいただくことも可能です」とのこと。玄関先で交渉している私たちから見える景色、ミャンマーから来たK君たちの部屋は、食器とお布団しかありません。TPは「とりあえず大家さんに電話するわ」とのこと。TPが出現してから脅し口調の男も、少し冷静になっています。「K君、20日にお給料入ったら、すぐ家賃払い。それで、来月分はまた少しずつ払いぃね、一緒にがんばろう」と涙ぐみながら仲裁(頼まれてもいないのに)する私をTPは、吹き出しそうな顔で見ています。脅し屋も「何だか怖がらせてしまって、すみませんでした」とか言っています。「そうですよ!このひとたちはとっても真面目なひとたちですよ、だって遅れていたって毎月家賃は払っているんですよね」などと知りもしないのに、全力で応援。

 

自分たちの部屋に戻ると、TPは膝から崩れ落ちるように笑っています。「お風呂に入っとったらさ、何事?って思って。そしたら、普通の話しやった」とか何とか。私はとにかく、脅し口調のひとに対する抵抗感が、ものすごく強いようです。いつか刺されて死なないようにせねば!