徒歩キャンパー

TPから起こされて、テントから頭を出した瞬間、晴れの景色が目に飛び込んで来ます。数秒で、絶景。

どうやらTPいわく、K君が仕事に間に合うには、大急ぎで片付けてサイトをチェックアウトしなければいけないそう。おかしいな、目覚まし時計かけたのにな。夕べ、優雅に過ごすために設営した新居は、片付けには1.5倍くらいの時間がかかるように思います。K君が夕べ作ってくれたポトフを温めて食べたかったけれど時間が無いので、TPの提案で冷めたまま食べます。全然美味しいじゃん。やっぱり玉子とかパンとかチーズとか買っていたのに普段できないことはキャンプでもできない、朝ごはんは作れない。それでも、忘れ物の無いように、K君も大切な道具を順番通りコンテナに詰めて、鍋や食器を洗って、道具をK車に収めて。バイバイ、私たちの家、バイバイ、ご近所さん、バイバイ、雲の向こうにいらっしゃるはずの富士山。

だんだんと晴れてきます。K君「いいキャンプ日和になりましたね」と言うので大笑いします。とはいえ時間ギリギリ、TPは後輩K君を心配して、駅までわずかの変な場所で、もう降りようと言います。驚くK君。思わず降りたけれど、仕事に間に合うかどうかで焦っているK君にはその方が親切だったかもと思います。また一緒にキャンプ行きたいと言えなかった、それでもK君が仕事に間に合いますよう、何よりキャンプに誘ってくれてありがとうと去って行く車に祈りを捧げます。

徒歩5分で高尾駅に到着。TPとも共通の友人K君について、私たちを誘ってくれたって言うのが何か感動するね、でも仕事に遅刻しそうなところ、本当に20代から変ってないね、奥さんと仲よかったらいいね、車から荷物下ろしすぎたかな?使い終わったものは車に戻したら遅刻ギリギリにならんで済んだかねなどとお喋りは尽きません。

さ、まだ午前9時。これからどうする?

TPが以前ひとりで行ったという、高幡不動尊へ。駅を降りて参道に入った瞬間、素敵だと思います。

筆文字はやっぱり迫力があっていい!私も書道を習って、色々な宣言を毛筆でしたためたい!「二度と急がない」「生涯、焦らない」「何はなくとも茶碗洗い」

道具も場所も用意してもらって王様のようなキャンプと言えど、ちょっとした坂道を上ったり降りたりしたので身体は軽く疲労しています。頭はリフレッシュしたと言うより、次のキャンプのことでいっぱいになって、道端の小枝ひとつ見ても、燃やせそうとか思います。そして、火起こしのことばかりを考えています。TPは「K、仕事間に合ったかな」と心配しています。大丈夫よ!TPの後輩ったってもういい大人なんやし!

 

電車に乗って、ぐうぐう眠っていると乗り換えの駅に到着します。TPの提案で、立ち食いカレーを食べて帰ることに。

◯十年前に、毎日のように仕事帰りに食べて帰っていたカレー。懐かしい味。その時も仕事のストレスを抱えていたっけ。

あー、初キャンプ大成功だった。ありがとう、K君。私は明日、有給休暇を取っています。この頃ちょっと休みがちです。わかってはいるのです。元々学校だって休んでばっかりだったんだから、結局は引きこもりがちなんだな。夕方、TPに「晩ごはん、何が食べたい?親子丼は?」と尋ねると「何が食べたいって聞かれたら、そりゃ、唐揚げとか生姜焼きとかいう答えになる」などと言っています。よし、生姜焼きにしましょう。私が早速、キャンプ系のYouTubeなど見始めたものだからTPは吹き出して笑っています。同時に、困ったな、とも言っています。TPは何度も「すぐ道具揃えたりせんで、最初はレンタルして楽しもう」とか「あ、俺たちみたいに車がなくてキャンプするひとは、徒歩キャンパーって言うって」とか言っています。私は明日もキャンプのYouTubeを見まくろうとたくらんでいます。