moebius

monna88882014-12-13

朝イチで、元の病院へ行きました。今日も回転寿司のように患者は入れ替わり、ものの3分で診察を終えます。抗菌剤を飲むような人はねぇ、風邪の治りが悪いの、とのこと。あと4日飲んでそれでも完全に治らなかったらレントゲン撮ろうねと言う先生に、犬のように素直に、うんとうなずきます。回転寿司の方がいい場合もある。いつもなら物足りない診察も、薬が処方されるとなぜか元氣が出ます。すっかり機嫌がよくなってTPと映画を観に出かけました。

風邪って…何なんだろう。映画館にたどり着いたらもう身体はくたびれていました。ロビーのベンチに座り込んで休憩、「門ちゃん!?ちんあなごがおるよ」とTPが声をかけてくれたのもスルーして、お向かいのスタバで珈琲を飲みます。しばらくするとまた身体は復活しました。ちんあなご…水槽に指を差し出すと一斉に穴の中に隠れるし、全部同じ柄!エラの部分と、脇腹と、腰のあたりに黒い斑点があって。本当に映画館に、ちんあなごが何匹もいました。

キム・ギドクの、メビウス。まずは、身体の一部を切り取るという設定、特別な映画監督の撮る映画は特別とも違う別格の映画です。客席のほとんどが男性、その誰もがのけぞったり、椅子から落ちそうになったり、シーンが変わると一斉に息を吐いたりして。最後は笑い声さえ漏れています。映画の可能性という壁を、愛情だけでぶち破った映画は、幽体離脱しそうになるほど、身体に対する感じ方、モラルの感覚が完全に変異しました。映画を観ながら、どうかキム・ギドクがちっとも面白くないような映画を撮るようになってもいい、どうか長生きしてください、そう祈り続けながら観ました。細く長く生きてと祈るほどキム・ギドクが好き、好き過ぎてそう祈ります。きっともう二度とは観られない椅子から落ちそうになるほど痛い、完全な映画。


her。DVDで観ました。今度は一転、主人公の女性の身体が出て来ない映画。声だけ、言葉だけでこれほど人は安心をするのか。桃色、緋色、あんず色、柿色、だいだい色。色の最適さ。ため息をつきながら観ます。スカーレットは声だけだけれど、映画の中に存在していました。


キム・ギドク。ちんあなご。ランチで食べたベトナム料理。地下鉄。映画の後のTPとのお喋り。風邪。DVD。人格、海、身体があるか無いかだけのこと、色んなことが駆け抜けて、12月の景色、イチョウの黄色が目に何回も蘇る土曜日です。