フルの嵐

昨日の夜中、それはそれは恐ろしい時間がありました。ふっと目を覚ますと、私はどういうわけかホテルのエレベーターの中にいたのです、現実として。足がカクッとなって目が覚めたので、いつからここにいるのかわからないまま、ポケットを探っても部屋のカードキーも持っておらず、とってもトイレに行きたい、エレベーターは1階に着いて、でもトイレがあるわけでも無いしフロントは閉まっている、誰もいない廊下、また部屋に戻って、部屋のドアを控えめにドンドン鳴らすと、爆睡していたはずのTPが「わ、びっくりしたー」と起きてドアを開けてくれたので一件落着。トイレに駆け込みます。どうやらトイレに行くつもりが部屋を出てしまったよう。こんなことは初めてなので、しばらくプリンのようにプルプルと震えます。起きてくれて良かった〜、ありがとう〜とTPの神経、危機感に感謝します。

それはさておき今朝は、シンボルになっている王宮から観光です。今日の午後には次の街に移動するつもりだから、チェックアウトしてホテルに荷物を預けて出発。王宮の庭から山の上のお城も見えます。お城も24時間有効のザルツブルクカードで入場無料なので向かってみましょう。

朝ごはんに昨日魚料理を食べた店のテイクアウトで、イワシサンドとフライドチキンサンド。まだ日は出ていません。それにしてもオーストリアの氣候は何なんだろう、底冷えするほどの寒さではなく、日が差すとカーッと暑くなって半袖になりたくなる、数秒後には風が吹いて薄ら寒い、また数秒後にはポカポカ、すると小雨になって、いつの間にか止んで。こんな天氣が続いています。夕方から夜にかけてが一番過ごしやすく安定しているよう。

ザルツブルクカードで無料のケーブルカーに乗って、城の上まで。

お城の中では清掃係の人が静かにモップがけをしています。道具も魅力的です。

広いお城を見て、外に出て見上げます。

この街にはいくつも、映画「サウンド・オブ・ミュージック」のロケ地があるそう。TPは職場の同僚にサウンド・オブ・ミュージックファンのおばちゃんがいると、ポストカードを買っています。そしてロケ地の写真も撮っています。いくつかあるロケ地の中で最初のシーンに出てくる修道院へ行くと、不思議な木が不思議な実をつけています。何の木だろう?すっかり葉は落ちているのに、鳥の巣みたいなものが残って、枝の先には実がなっている。何の木だろう?

歩いて丘を降りて、博物館前の広場に戻ります。入り組んだ小道を歩いて、カフェ・モーツァルトへ。

まだ解決していないチップ問題、TPは周りに目を凝らして勉強しています。そして名物のメレンゲ、底に敷いてあるラズベリーソースとの相性が・・・絶妙に・・・馴染みの無い味、はっきり言って・・・マズイ!押しつけ合うようにして何とか食べ終えます。「スフレデビューがこれで良かったわ。もう一生、スフレは食べん」宣言するTP。もう二度と来られないかも知れない街、もう一度だけ近代美術館に行きたい・・・そう思って、ちらっとそのことを言っていたこともあって、TPが「近代美術館行くか?」と言うので「行く!」と答えて、もう一度、ケントリッジさん作品に会いに。

昨日は流し見していた映像も、今日はじっくり見ます。あ〜、やっぱりもう一度来て良かった、ザルツブルクカードのお陰、目に焼き付けて、またトートバッグを買います。このバッグがあれば勇氣が出そうだから。作品の中にも登場する、ラッパの絵が描いてあるから。


次の街「チェスキー・クルムロフ」へはバスでも行けるらしいのにバス停が見つからず、ホテルの人やインフォメーション、ありとあらゆるところで尋ねても全員が「ネットで予約するしかない」とのことでネットを持っていない私たちは諦めて、電車で移動することにします。二人で112ユーロ。旅の予算にしていたユーロの残りも少く、それぞれのこづかい財布を開いてユーロをかき集め、4分後だという電車にバタバタと乗車。直行かと思ったら、2回乗り換えだった。ドキドキ。



チェスキー・クルムロフは、チェコ中欧の2カ国目になります。通貨も変わるらしいし、ドキドキ。

1回乗り換えて。

急激に車両のランクが落ちます。読み放題の本や雑誌が、車両のあちこちに置いてある!素敵!

雑誌の中で好きな洋服を見つけて喜んで。

いよいよチェコの駅、いつの間に国境を越えたんだろう。読めない駅名の駅で乗り換えて。

さらに車両のランクが落ちたのかお手洗いの紙はわら半紙を固くしたかのよう。

すっかり日も落ちてようやく到着したチェスキー・クルムロフ駅は、無人駅でした。

ガイドブックによると街の中心地まで徒歩15分。ろうそく程度の灯りの中、恐る恐る歩き始めます。

ひとっこ一人いないとはこのこと。崖の下の先に、お城の灯りが見えました。

お城の灯りを頼りに、もう何分歩いたのかわからなくなった頃、ようやく観光客がチラホラ、やがてわらわら、ガヤガヤ。ホテル探しを始めましょう。「Full」「Full」「Full」「Full.You must go!」あっち行けって何だよ!

心は折れそうだけれど、予約無しで旅行することはこういうこと。日本の貧乏長屋からリュックを背負ってようやくたどり着いた夫婦は、夢のような城下町の景色の中でさまよい続けます。最後のホテルで「スーベニアルームなら、2部屋空いてるんだけど・・・190ユーロ」ひゃ、ひゃくきゅうじゅう!一泊2万6千円くらいです。「これでも宿泊税とかサービスしているのよ」無理無理と、それならプラハ行きの最終列車はありますか?と聞くと、残念、もう終電は終わっているから明日の朝になるわ、受付の女性は関係ない質問にも丁寧に、ネットで検索して教えてくれます。「・・・ここに泊まろう」TPがそう言います。あの暗い駅で夜更かしは、確かに現実的じゃない。本当に?本当に。TPのポケットマネー?で宿泊することにします。

高いけれど普通の部屋、どうやら今はハイシーズンらしい。どうりでどこもかしこも紅葉だらけで美しいと思った。

受付の女性が勧めてくれたイタリアレストランでサラダとピザを食べて、おいしいチェコビールを飲んで。洗濯を済ませて、倒れ込むように寝るだけ。思い通りに行かないことの方が、多いんだな。