ぐっすり眠って起きると、仁川国際空港でした。夕べ、ウズベキスタンの出国審査では何と、必死に集めたレギストラーツィア(滞在証明書)を、まるでゴミのようにポンッと投げ返されて、へ?と思ったまま出国。TPなどわざと出さずに様子を見ていたら、そのまま出国。何なんだよ〜!とギリギリ歯ぎしりしてみます。インチョン空港、TPは入国審査官に「何で入国するんだ!」みたいなことを怒鳴られたようで泥を飲んだような顔、ふたりとも旅行の疲れがまだ肩に重たく残っているのでカフェに入って注文しようとすると今度は、目を三角にしたブー子が「ここで注文しないで、あっちのタッチパネルでやって!」と怒鳴りつけるので、わざわざその店に入る義理もないと別の店でひと休みします。くたびれた日本人夫婦は、怒鳴りつけてもいいとお触れが回っているのかしら?それはさておき、まずインフォメーションやら係員のひとやらに「コインロッカーはありますか」「このバッゲージを預かってくれるところはありますか」と尋ねても、ない、の一点張りでした。最後の最後に空港からソウルへの直通電車の乗り口で「荷物を預かってくれるところはありますか」と尋ねると、一階の宅配便を受け付けているところで、預かりもやっています、というわかりやすい英語で教えてもらって、ひとつ600円で預けて身軽になって、両替も済ませてさあソウルへ!
成田エクスプレスみたいな電車に乗って。
明洞へ。
日本でも食べたことのない流行りのダッカルビを食べて。
疲れからか、それとも日本人だらけの渋谷みたいだったからか、TPも私も不機嫌になったのでとりあえずお茶、お茶。明洞のメイン通りの、一本左に入ったところにたまたまあったCoins3というカフェの階段を上がると、やたらと会話が通じると思ったらびっくり、日本人のウェイトレスさんたちでした。語学留学していたそう。今はバイト一本で暮らしているよう。いいな、そういう期間があっても。人生の捉え方が変わるだろうな。せっかくなので、ソウルで3時間くらいで回れるおすすめの場所ありますか?買い物とかではなくて、見て楽しいところ、あなたがただ好きな場所でもいいのでと、聞いてみます。すると、快く「仁寺洞(イサンドン)とかいいですよ、古い街並みが残っていて、歩くだけでも楽しいです。それから、ここから歩いて行けるところに川があって、まっすぐ上がっていったら川に突き当たるんですけど、そことか良く行きます。何か好きで。あと、益善洞(イクソンドン)も人氣ありますよ」と、スマホを持ってきてまで教えてくれる優しさ、どうぞMさんの未来に幸あれと願わずにはいられない、明るくていい子。
明洞駅と反対方向にまっすぐ歩くと、本当に川があって、鳩は白めが多いよう。
左に歩いて行くと滝になっていて。海外のカフェで働く女の子が、この川に立ち寄ってくつろいでいることを想像して、私までうれしくなります。
イサンドンはどこですか?と3人くらいの人に聞いて、みんな親切に教えてくれてたどり着きました。みかん屋さんのトラック、お腹が空いていたら買ってみたい。
賑やかな通り、確かに古い建物も多く、こじんまりとしていて三鷹の商店街のよう。
ポストも何となく可愛くて。イサンドンで私は、竹と麻で作ったという茶こしを買いました。カップの縁にかけるだけのタイプ、その作りがとても精密で、優しい感じなのでお店のひとに「どこで作っているんですか?」と尋ねると、ポストイットに「Dam Yang」と書いて渡してくれました。美しくてたまらないので、何度もポケットから出して眺めます。
インフォメーションで「イクソンドンはどこですか?」と尋ねると、地図にペンで詳しく描いて教えてくれます。それでもわかりづらく、道端に座っている暇そうなおじさんに尋ねると、任せとけ!みたいな感じでぐんぐん、細い路地、ここで曲がる?みたいな道、その先の大通りを渡って左側、そう身振り手振りで教えてくれます。その堂々と格好いい感じに思わず、頭を下げて握手でお礼を言います。韓国式に、ちゃんと右肘に左手を添えて謝意を伝えます。ヒョロヒョロっと入ったらそこは、ひとがひとり歩けるかどうかの細い路地、レトロなカフェや土産物屋さんがずらり、ホッとできる素敵な通りでした。もし私がインスタやっていたら映える写真を続々とアップするでしょう。
おっと、時間もないので地下鉄に乗って市場へ。ソウル駅までも歩いて行けそうです。ここで私はギブアップ。脳みそが動かなくなったのでTPだけ歩いてもらいます。街灯のわずかな出っ張りに腰掛けてひと休み。元氣があったら歩いて色々食べ歩きしたいような街だけれど、無理は禁物。
自分の限界を知ることも大事。
ソウル駅までは、遊歩道がつながっていました。
仁川国際空港に戻る電車は、今度は直通ではなく急行、優先席にはぬいぐるみが置いてあります。おばあさんとかが抱えて座っていたら可愛いだろうな。
そして、行きの乗り換えでTPが見つけてくれた出国のロビーにある無料シャワー、ありがてー、ここに来てシャワーありがてー。一日ぶりにシャワーを浴びると、生き返ったかのような、もう自宅に帰り着いたかのようなさっぱり感。
フードコートでTPは夕飯を食べて、私はビールを飲んで最後のウォンを使い切ります。
たった2時間ほどなので、氣が楽。お隣りに座ったインド人風の中年男性が取り出した老眼鏡が、銅の針金のような造り、その薄さもデザインもあまりにも素敵なので「質問していいですか?その眼鏡、どちらで買ったんですか?」と下手な英語で尋ねると「伊勢丹」と日本語で答えられたので吹き出して笑います。向こうもしてやったりの笑顔。日本語ペラペラの男性は、アメリカ出身の大学教授で、名古屋在住だそう。学会の何とかでソウル出張だったそう。彼が持っているペン、手帳、どれをとっても美しいものばかりお好きなようなので私もソウルで買った竹の茶こしをお見せします。「キレイですね〜」と手にとって眺めてもらって私も大満足。ウズベキスタンに行ったと言うと、それはいい、いつか行ってみたいですね、とのこと。つかの間の交流です。(TPいわく、唐突に茶こしを見せていたとか言ってたっけ、そんなの氣にしない)
支給されたおやつが、えらいおいしかった。
帰りは羽田空港着なので、リムジンバスに乗ったらもう帰るだけ。帰ったらドロのようになって眠るだけ。もうシャワーも浴びているし。それにしても仁川国際空港は、夢のように快適な空港だったな、シャワーが浴びられるから。今度から全ての航空券を、インチョン乗り換えにしたいくらい。それにしても今回は濃かった、いい経験だった。ドロのようになって眠るのも悪くありません。