朝、6時前に目が覚めます。夜中、目が覚めても共同トイレに行く足音でよく眠れなかったので。TPも起きて朝散歩。
理想的なサイズの家を見つけて、写真を撮ります。
ものすごい量の洗濯物を見つけて、敬意を払います。
玄関まで草いっぱいの家を見つけて、在りし日の姿を妄想します。
徒歩でもバスでも、行ったり来たり行ったり来たりした岡田港。もう何度め?6〜7回め。
宿の朝食が8時だから、何度時計を見てもまだ3時間もあります。神社に寄って「旅をどうぞよろしくお守りください」と頭を下げます。
岡田港で、釣り人たちを眺めます。(おじさん、おじいさんたちが等間隔で10組ほど)
埠頭から海を覗き込むと、おこぜっぽいものが泳いでいます。そして、消波ブロックに囲まれた海水浴場ぽいところのコンクリの上に寝転がって、TPとおしゃべりをします。通り過ぎる港の係員らしき方が「今日は風が強くて、海がきれいじゃなくて申し訳ない。普段はもっときれいなのに。きれいな海を見てほしかったな」とか言ってくれるのでじーんとします。
3時間という時間を、おしゃべりと、宿に戻っての荷造り(なるはや脱出計画)で何とかしのいでようやく朝の8時、期待ゼロで朝食のためロビーへ行きます。宿の青年と女性が用意した朝食、セルフサービスとのことです。カウンターには、(1)コーンフレーク (2)袋に入ったままの食パン(8枚切り)(3)ジャム2種 (4)牛乳の紙パック(5)オレンジジュースの紙パック、以上です。宿にはもうひと組、宿泊客が居ました。作業着を着ているので仕事で宿泊したらしき男性2人。私とTPがトースターでパンを焼く間、彼らはじっと待っているだけ。宿の青年は彼らに「おしごととか、聞いちゃったりしてもいいですか?」とか言っちゃって、彼らも「地質関係です」と答えて。大人4人が、8枚切りのパンが焼けるのを、ただ待っています。100均で買ったような紙カップ入りのジャムを塗って、ただ、8枚切りのパンだけを紙皿に乗せて、ロビーで食べます。
私は、これはあんまりだと思いました。8枚切り食パン一枚なら、朝食付きだと言ってはダメだと思う。風呂トイレ付きの条件だってすでに風呂もトイレも使えないから共同で我慢しているのだから。パンを飲み込むと、速攻でリュックを背負って宿を後にします。脱出成功!
再び、岡田港へ。30分も前に到着して、ただ海を眺めながらバスを待ちます。「8枚切りって」「あれなら食べるんじゃなかった、早く元町港行きのバスに乗ればよかった」などと言って、薄笑い。
バスは時間通りに来たし、今回は置いて行かれることもない。
バスに乗って15分ほど、元町港着。今日、どうする?期待ゼロでできる範囲で、何があっても動じずに楽しもう。旅の隊長TPが出した結論は、まずは元町港でレンタカーを借りるそう。三原山に登るらしい、バスで行くと滞在時間が2時間しか無いので、車の方が良いとのこと。どうやら岡田港にフェリーが到着する日は、レンタカー屋さんは岡田港だけで営業、元町港着の日は元町港だけで営業する仕組みらしい。24時間で4000円ぽっきり、安いレンタル代です。9時30分発。
僕らの自由を〜
カーナビ無いので道路標識で三原山の登山口まで。10時過ぎ着。ひとっこひとり居ないので、登山口かどうか確証がありません。公衆トイレをお掃除している女性を見かけて、ここが登山口だと教えてもらえます。ただ、8枚切りの食パン1枚で往復2時間、ゆっくり回ると3時間以上かかるので何かお腹に入れたいと思います。車で10分くらいのところにある、大島温泉ホテルへ。
地層の前が駐車スペース。かわいいレンタカーさん、今日はどうぞ、一日よろしくお願いします。
ホテルのロビーで、何か食べるものを探します。
恥をしのんで受付の女性に「朝から何も食べてなくて(嘘)、カップラーメンを買いたいんですけど食べる場所は、外のベンチとかで良いですかね?ロビーだとみっともないですよね」と尋ねたところ「外でもいいですけど、良かったら使っていない食堂があるので、そちらでいかがですか」と有り難い言葉。ようやく、プラスアルファの心配りをしていただける方に出会えて感激します。さらにその食堂の見晴らしが最高で、200円のカップラーメンを、ゆっくり味わって、感激が倍増します。
登山を終えたら、温泉に入りに戻って来よう。レンタカーで登山口に戻って、いざ出発!
てくてくてく。平坦な道を歩き始めます。TPが「キョンがおる!」と言うので見たかったけれど見つけられず。
1986年の噴火のとき、私も当時避難した子供たちと同じ年齢でした。その跡が、黒々とした溶岩が見られます。
きゃっきゃと楽しい散歩氣分だったのは道が平坦だったから。突然、坂道になって急に無口になります。
40分ほど歩いてようやく山頂周辺に着いても、火口はまだまだ見られません。火口一周、45分とのこと。溶岩の上を、一歩一歩進みます。
何だか水々しい植物を見つけてよろこびます。
噴火口付近だということはわかるけれど、それにしても360度絶景。
ついに、噴火口にたどり着いた瞬間「わーっ!!!」と声を上げます。深さ200メートルもある噴火口の、その壮大さを写真に収める腕がナシ。氣づけば、ひとっこひとり見かけないままここまで来たけれど、ようやく登山上級者みたいなフル装備のご夫婦が後からいらして、こんにちはーと挨拶します。TPとひたすら、座り込んで噴火口を眺めて、ご夫婦も去って。今、この三原山の噴火口を私たちだけで独り占め、いや二人占め?しているのかと思うと、不思議な氣分になります。三原山さん、この場所までお招きいただきありがとうございます。
地熱を感じられるという裏砂漠という場所近くで、地熱を感じてみます。
下りもまた40分ほど。下りはなおさら足がパンパン、プルプルのふにゃふにゃで私はどうか私の中のポニョがお魚に戻っちゃわないように、我が家のそうすけ君がお魚のポニョを引きずって歩かなくて済むようにと氣力だけで、ぷらぷらの足を引きずって下山します。
それにしても、カップラーメンを食べておいてよかった。あれが無かったら、とても午後2時まで持たなかった。レンタカーに乗って、大島温泉ホテルへ。受付の女性に「朝は本当にありがとうございました」とお礼を言って、露天風呂へ。さっき登って降りたばっかりの三原山が一望できます。
温泉で復活。三原山から、レンタカーで降りる途中、国の特別記念物だという「桜株」に立ち寄ります。
森のトンネルを抜けて、インスタスポットらしき「椿トンネルの切り通し」というところを探します。昨日も、大島公園へ行くときに往復した道沿いなのに見つけられないので、車を停めて歩いて探したところ、あまりにも桜の木が高くて見えないだけでした。
あったあった。
再びレンタカーで、筆島へ。
波浮港。噴火でできた自然な入り江を港にしているそう。
大島は、一周約46キロらしい。車なら、1時間ほどで一周できちゃいます。ブラタモリで見たことのある、地層大切断面へ。ゾクッとするほど壮大な景色を、写真に収める腕が無いのがもどかしいと思います。ところで今日の宿は?TPが、口コミ重視で予約してくれた、元町港近くの老舗旅館だそう。今日も、緊急事態宣言中だからお店が開いていないので、近くで見つけたスーパーへ。
100均で売られている商品は、離島価格で150円になっています。普通の、マヨネーズとか洗剤とかが、離島価格で2割ほど金額が高いように思えます。
老舗過ぎてエレベーターのない旅館の「ご予約は8畳の部屋でしたけど、11畳が空いているのでそちらをご用意しました」と超ダンディーなおじいさまからアクリル直方体付きのでっかい鍵を受け取って、3階まで上がって。コロナ対策でお布団はすでに敷いてありました。うれしい。何より、清潔!爽やか!虫の死骸とか数センチ単位のホコリの層とか無い!布団はカラッと乾いているし、トイレの水は流れるし、冷蔵庫も共同じゃないし、温泉まである。爽やかすぎて天にものぼる氣持ちです。
同じようなスーパーで買ったおそうざいだって、食べるのが楽しみ(昨日は飲み込むように食べただけ)。
日が沈んで、1時間ほど静かな街を散歩しちゃったりもします。昨日の宿が不潔だったからか、TPも私もお腹を壊してしまって、駆け込む公衆トイレも清潔で。
宿に戻って、風に吹かれながら入る露天風呂。腕をつけると「アイタタタタッ」となってよく見ると、両腕が真っ赤に日焼けしています。曇りの日だったのに、三原山で日焼けしたようです。足はふにゃふにゃだし。それでも、やっぱり旅行っていいなと思います。夜9時、TPは倒れ込むように眠っています。一日、運転ごくろうさん。私は、ももちと蟹釜ジョーさんのドラマが最終回なので、ひとりでテレビの音を小さくして待機、そして最終回を見て泣いて、テレビを消して布団に入ります。清潔な布団。部屋にトイレもある。それだけで、しあわせ。そのことに氣づかせてくれただけでも、昨日の宿に泊まった元は取れました。三原山、すごかったな。ZZZ