湾岸ぐるり

目覚まし時計を朝の4時30分にかけて、5時開場の豊洲市場へ行きます。宿のすぐ目の前。

朝の湾岸は寒い寒い。ぶるぶる。私はマグロのセリを見たいのでネット検索して場所を確かめておいたけれどTPは手前の方の見学施設に入って行きます。

ちいちゃい窓から一所懸命に覗きます。

あれは何だろう?白子専門店?アンコウの内蔵?目を凝らしますがわかりません。

上の階には売店があります。「ねえ、マグロのセリは」「マグロのセリがない」「マグロのセリ」「わかったわかった!」TPが警備員のおじさんに尋ねてくれます。お向かいの建物だそう。やっぱりね。

これこれ。

もうひとが集まっています。それにしても人間の多くは何かを見学したり見物したりするのが好きなんだなと感心します。

私は豊洲に来るまでマグロのセリを見学したいなんて思ってもみなかった。

カランカランカランカラン。鐘が鳴って、セリの開始です。尾っぽを切り落とされて、見本用の尾っぽ肉を身体に乗せられて、エラをがっぽりと切り取られて、冷凍されてマグロのように横たわっているマグロたち。競り落とされると釜で引っ掛けられて、引きずられて競り落としたひとの元に。競り落とされずに残ったマグロたちはその場に取り残されます。彼らはどうなるんだろう。はま寿司とかツナ缶とかコンビニの寿司とかになるのでしょうか?私はこれまで赤身の魚にそれほど惹かれなかったけれど、これからはマグロの悪口を言ったりしない、絶対に大切に食べようと誓います。

青果市場も覗いてみます。

それにしても築地の移転問題はこじれにこじれたな。築地のおばさんたちはいまだに百合子に騙されたと怒っているのでしょうか。

青果市場の方がどことなく草食系な雰囲気。

何だこの野菜は?

しいたけ大好き。箱ごと買ってみたい。

外に出ると、まだ日の出前です。「今宵の月のように」と歌が思わず口からこぼれたのは、月が見えたからでしょうか。

ようよう、明けゆく。都会の朝焼け。

朝風呂に浸かって、ロッカーが見つからないほどの満員、露天風呂もギュウギュウ詰めであきらめます。エレベーターから富士山を眺めます。

いざ勝負だ。

私は昨日の夜から、イクラ中心に刺し身メインで朝食を組み立てると固く誓っていました。

TPは己の食べたいものを無計画に取ると決めていたのでしょうか。

ベイエリアを眺めながらの朝食。私は自分に号令をかけます。

「今日だけは、イクラに憧れるのを止めましょう」大さじですくって食べます。塩っぱい。

塩っぱいのでサーモンを乗せて食べてみます。旨い!マグロを乗せてみます。微妙!鯛も微妙、ホタテも微妙。

サーモンでお腹が膨れ、イクラはまだまだ塩っぱいので、トロロを乗せて食べてみます。なお旨い!

お腹いっぱいでも、どうしても天ぷらを食べたいので「食後のスナック感覚で」と自分に言い聞かせながらエビの天ぷらを食べます。旨い!部屋に戻って速攻、二度寝。起きるとチェックアウトの11時が迫っています。

先に降りて一服。待てど暮せどTPがやって来ません。

エレベーターが開く度に、大量の宿泊客たちがどーっと吐き出されます。これほどの人数と共に、ラグジュアリーな空間に泊まっていたのか。あきらめかけた頃、TPがやつれた顔で降りてきます。「15分待った。ものすっごい人」これからはチェックアウト時間ギリギリのチェックアウトは避けようねと言い合います。

朝、一番に訪れた売店で、ワカメを買います。「三陸と鳴門、どっちがいいですか?歯ごたえとか」「やっぱ三陸だね」私は鳴門派なのでちょっと憮然としますがプロの方のアドバイスに従って三陸産の乾燥ワカメを選びます。200グラムで2400円。昨日、スーパーで見たものは30グラムで500円とか16グラムで380円、計算すると私が買ったワカメは4000円くらいの価値があると踏みました。

あぁ、ワカメの大入り袋を購入できてうれしい。築地方面に向かって歩きましょう。豊洲大橋を渡って、

川の向こうのマンションは、なんとオリンピック村でした。まだ色々と工事をしているよう。

何ていいお天気。

ホバーボートに手を振ります。

川沿いに巨大な空き地が。築地市場の跡地でしょう。利権、再開発、デベロッパー。

新橋まで歩いて、私が「徳島のアンテナショップがあるよ」とTPを案内したところは、高知と愛媛のアンテナショップでした。「4分の2でどちらも外れたね」とTPが笑っています。

朝食食べ放題で、あまりにもお腹いっぱいで、昼ごはんは食べられませんでした。晩ごはんはラーメン。大量にあるワカメをたっぷり放り込みます。

あんなにラグジュアリーだった時間は無情にも過ぎ去り、明日からまたろうどうです。ハムサンドを作ってタッパーに入れますが上手く収まりません。ギューッと押して蓋をします。それにしても豊洲なんて何もないと馬鹿にしていたのは撤回。泊まってみればどこでも好きになる。これからもあちこち歩きたい。結局は新橋からお台場、豊洲、また歩いて新橋に戻っただけの新年会。湾岸をぐるりと回っただけ。最高です。