すべったね


TPを送って歩いて帰っていると、ビルの間から朝日が上がっていました。こんなに地平に近いところから上がる朝日を見られるとは思ってもみなかった、引き込まれるようにスタスタと朝日に向かって歩きます。10分ほど歩いたところでハッとして、アパートに戻ります。

弟家族が昨日スーパーで買ってきた4つ切りパンを焼いて食べています。バター的なものは?と言うので、無いよと言うと驚いている様子。わが家はイタリア風にオリーブオイルやけんと嘘をついて、オリーブオイルを入れた小皿を出してみると、疑わしそうにお洒落やねなどと笑いながら食べていました。イヒヒ。今日は弟嫁がいとこのお姉さんたちと会う日。弟は行かないと言うので、ここは一発姉らしく弟に、挨拶くらい行かんと!と説得して、一緒に待ち合わせ場所へ向かいます。

アパートの階段を降りると、下の階に住むお婆さんとその娘さんがしめ縄など飾っていたのでご挨拶。弟家族です、と紹介して、弟もお騒がせしてすみません赤ん坊を見せると、やっぱり!泣き声が聞こえてたから、いやー、奥さん、赤ちゃんいなかったはずだけどなーって思ってたの。まー、可愛い赤ちゃんと目を細めてくれました。私は普段から、お子さん何歳ですか?とか何人家族ですか?などと聞かれがちで薔薇のトゲがいっぱい突き刺さっています。TPと暮らし始めて20年以上。子宝に恵まれなかったということはずーーーっと私が見る世界を曇らせていたけれど、もうすぐまた新しい年、新しい目で、新しい空を見よう。心の風通しを良くして、周りの人たちと仲良く、毎日のキラキラをもっとたくさん見つけたい。待ち合わせ場所のアルタ前で、弟嫁の親戚の方たちに、初めまして、姉です、いつもお世話になります〜と大人風の挨拶をして、弟とラーメン屋さんへ。お嫁さんからしてみたら、夫の姉が挨拶に行ったら嬉しいんじゃないかな?と思ったのです。私も、大分のTP家に行ったとき、親戚の人に電話してくれて、紹介してもらえたのが嬉しかったので。

弟は、今のお嫁さんが10歳以上年下なので、先に自分が死んだら子どもとふたりだけって可哀想やけん、もうひとり子どもが欲しいなどと言っています。今のお嫁さんが三度目の正直になるかどうか、弟が死ぬ日まではわかりません。これからが長い、長い人生です。どうなるんだろう、弟。どうしよビッグダディみたいになったら。ラーメン屋で別れて、弟は競艇へ。

午後はせっせと年賀状書き。やっと終わってポストに投函します。やがて弟家族たちも帰ってきて、夜の10時。電氣を消して、布団を敷いてテレビだけ点けて就寝モードでいると、TPがくたびれ果てて帰ってきました。この家の家主なのに肩身が狭いという居候風の小芝居をしてくれたものの、それぞれ遊び疲れ、年賀状疲れ、ただ眠いため誰も反応できず。風呂に入っているTPに、ドア外から「・・・すべったね」と声をかけてみると「・・・すべらせてくれよ」とのこと。どうぞどうぞ、どんどんすべって、家主の権限を取り戻してね。お仕事おつかれさま。明日は、おおみそか。それにしても「いとこらが、お姉さん美人やねーって言ってましたよ」だって!弟嫁、ツボを突いた言葉で小姑を手のひらで転がしてくれます。3人目の嫁はいい嫁です。