台東の夜市

早朝に目覚めると、TPが「夜中に起きたら、顔中をダニにさされとった」と屠殺場に向かう子豚のような目で訴えていました。あ、やっぱり?私もこの部屋に入った瞬間、少し痒くなったと。でも口に出したら氣にするかな?と思って言わんやった。慰めにもならない言葉を返します。今日は太魯閣という絶景スポットへ出かける日です。宿の前のバス停から、朝6時台のバスに乗って右手に海、左手に切り立った崖を眺めながら燕子口へ向かいます。バス代を払いに行ったはずのTPが、沈んだ顔で戻ってきて「おつり、もらえんやった」と言うのでそんなわけないよ、小銭がないだけやない?と言うと、自分で地球の歩き方を開いて調べて、台湾の市バスではおつりがもらえないと書いてあると教えてくれます。えっ、60元も無駄にしてしまった、ひとり120元。約1時間の苦い道。


  

切り立った石の崖。遠近感無くなって目がチカチカするほど。目指すは次の次の次のバス停、九曲洞という絶景ポイントですが歩いても歩いてもたどり着かない。そして何より、誰も歩いて上っている人などいない。覚えている歌を何曲も歌いつつ、暗いトンネルを何個も抜けながら、崖崩れの現場を横目に、大声で叫んだりしてようやく着いた九曲洞は落石が散乱した危険地帯でした。バス停もないので泣きそうになりながらただ歩いているとようやくゴールの天祥という場所にたどり着きます。原住民と言われる人たちのお店で、コーヒーを飲みます。薄い。

     


地球の歩き方には一日4本と書かれていたバスは、1時間に何本もありました。花蓮駅まで戻って、また台鉄。ちまき35元、セブンイレブンの駅弁65元。やっと電車の旅が始まったみたい。もう田植えの終わった水田を眺めながら台東駅に着いて有名だという池上弁当を買います。1個65元。駅前をしばらく歩いていると全く地図と違う風景、露店の人に尋ねたところここは新駅で街は旧駅とのこと。歩いて行ける距離じゃない、とにかくそこで待っていろ!とおじさんが颯爽とバイクで新駅に走って消えてしばらくすると、タクシーを連れてきてくれました。謝謝と心をこめて叫んで15分ほどすると賑やかな街に着きました、250元。目の前のホテル、東之郷大飯店1,000元。近所の夜市に繰り出します。家族づれが誰も楽しそうな顔、ちょっと泣きそう。ここまで来ればもう寒くない、薄手の長袖一枚でどこまでも歩きます。台湾の梨1個2元、鶏肉飯20元、ビール35元×2。新駅と旧駅だなんて。知らなかった。幸せの風景、台東の夜市。今日は歩き過ぎて死ぬかと思った。でもまだ生きているから、シャワーを浴びて倒れ込むように眠るのです。