ヨワヨワの覚悟

monna88882014-10-26

フィレンツェの夢のような夜は過ぎて、フィレンツェで目が覚めました。夜中に私がかけたウール100パーセント毛布で、TPは痒くなったそう。氣を利かせたつもりが逆効果。今日も早起きして窓から見える景色を楽しんでいると、早朝に到着したらしい西洋人カップルが宿のことで喧嘩していました。イヒヒ、人の喧嘩はなぜか面白い。フィレンツェ駅の自動券売機でベネチア行きの切符を買い、空いた時間に駅前のカフェで朝ごはんを食べます。TPが頼んだサンドイッチは5ユーロ!コンビーフが挟んであるだけで700円もしました。

 
ベネチアにも駅がいくつかある上に時間通りには到着しないので目を皿にして、血マナコで駅名を確認していると突然、千と千尋の世界が広がります。カオナシになった氣分で海の上を走る列車、いかにも水の都ベネチアという駅で停車したのでリュックを背負って下車します。改札を出ると数メートル先に早速運河が!こんな景色は見たことがない。
 
早起きしたのでまだ今日は始まったばっかり、駅前で宿探しをするとシャワー・トイレ付きで60ユーロの新しい部屋にチェックインすることができました。海外旅行で嬉しいことは、部屋の掃除さえ終わっていれば朝からチェックインできることです。子どもの頃、家族でどこかへ出かけてもチェックイン前には旅館に入ることはできなかったっけ。あまりにもくたびれてお部屋に早く入りたいときは両親や親戚がお部屋代を払っていたっけ。ベネチアは海の中から建物が出現したような街、基礎工事とかどうやってやったんだろう?運河にかかる橋がいくつも。お店の人おすすめの野菜ピザを食べて、迷路のような街を歩き回ります。あちこちに吊るされている洗濯ものを眺めて、明日もあさってもただ歩きたいような街。
 
サン・マルコ広場から、バス代わりのボートに乗ってリド島へ、数十分の水上移動。どうしたことか、リド島に到着すると何だかイライラとしてTPに腹が立ったことを全部ぶつけます。リド島は映画「ベニスに死す」の舞台、どこまでも白い砂浜、書き入れ時が終わったビーチはゆったりとしています。それなのに。明日が最後の宿泊と知ったからでしょうか、それまでこの旅行は永遠に続くように勘違いしていたのでビックリしたのです。そして観光地ではジュース1本2ユーロ、280円。それをグビグビと飲むTPに腹が立ったのでしょうか。白い砂浜をひとりで歩いていると、どこまで歩いても終わりがないのでまた歩いて戻りました。TPは楽しそうに撮った写真を見せてくれます。それがかえってムカついて。自分の情けなさもたっぷり。腹が立ったままTPとお茶をしているうちに、だんだんと暮れる空を眺めていると怒りは砂粒に、そして結晶になって消えて行きます。何だったんだろう?
 
自分のイライラも納まって良かったとご機嫌で探す晩ご飯のレストラン、バチが当たったのでしょうか。客引きの人が、あまりにも早口でメニューを読み上げて強引に入店させようとするのでつい、笑ってしまいました。そしてもう一度、メニューはチキンと何?と尋ね返してメニュー表を眺めていると、客引きの人は急に怒って、もういい!英語はわかるか?とキレられてしまいました。チャオチャオ!と追い払われたのでこっちもチャオチャオと言い返すと、私が離れた後も西洋人のお客さんに向かって、彼女は英語がわかると言ったのにチキンと何?などと言ってメニューをじっと見て、英語がわかるって言ってたくせになどとまだキレている声が聞こえます。そう言われたお客さんの曖昧な表情が目に焼き付いて。ちょっと考えた末に、あんな追い払われ方で傷ついたと言い返そうと戻ってみると、私を見た瞬間、店の奥に引っ込んでしまいました。他の店で氣安い晩ご飯を食べ、それでもまだ悲しかったのでもう一度戻ってみる。すると遠目に私を見た瞬間、また店の奥に引っ込んでしまいました。この我が身のしつこさこそが120パーセント悲しい。宿に戻り、窓の外の教会を見つめながら、彼は自分の英語が笑われたと思ったのかも知れない、プライドを傷つけられたと思ったのかも知れない、そして私も楽しげに会話したかっただけなのに追い払われたことと、英語が聞き取れない行きずりの観光客扱いが悔しかったのかも知れないと、ひっそり、ゆっくり、自分の傷口を自分で治そうとします。人種差別を覚悟していたクセに小さなことでザックリと傷つくもんだなぁ。まだ新品の宿泊施設では、シャワーの継ぎ目から水がダダ漏れしていました。修理したい!