メモ帳にたまる言葉

monna88882014-10-27

今日が最後の夜、帰りの飛行機はミラノ発、ミラノまで高速列車で移動します。1時間半くらい?早朝に宿を出ると駅前の運河にまた見とれて、もしかしたらまた戻って来たくなるかも知れないと思いました。

あっと言う間にミラノに着いて、寒い寒い、都会都会、これまでの街とは違ってアジア人も多く歩いています。ムッソリーニという人が心血注いで作ったという駅の、近くの宿ADAで空き部屋があるか尋ねるとまた勝手にオフシーズン料金の66ユーロ(宿泊税込み)にしてくれます。受付の男性はこの国では初めて出会ったような繊細で大人しそうなタイプ。そーっとした微笑みでモジャッとした髪型でメガネの奥から優しく微笑んでくれるのです。あたし、もうこの宿から一歩も外に出たくない!そう宣言するとTPは、門ちゃんどれだけ優しさに飢えとったんやと言っていました。薄曇りの心の底から安心する風景。すぐに宿の女性主人らしきオバさまが登場してその空氣は一変します。とにかく元氣!部屋についてひとつひとつ説明を受けます。これが鍵。中に入ったら右に一回まわすこと、そうすれば誰も入って来られない。そしてこれがシャワー。蛇口をひねったら3分間待つこと。このビルの配管は長い長い。だから3分待つこと。これがベッド。ベッドカバーをめくってシーツとシーツの間に寝るのよ。思わずプッと吹き出すとニッコリとしてくれ、日本の人はよくベッドカバーを敷き布団だと思って掛布団がないって心配する人が多いとのこと。確かにこちらの国の掛布団は薄く、ぴっちりとベッドメイクされた様子は日本の敷き布団のように見えます。ひとやすみして、街へと出かけました。

歩いて30分くらいで、中心地のドゥオーモへ。それにしても、イタリアって国は歩いても歩いてもコンビニを一軒も見かけないしスタバも無いのが不思議でならない。RCに書いたピエタ絵ハガキだって切手を買おうとするとキオスクでは「タバコ屋にあるよ」と言われ、タバコ屋では「売り切れ」と言われ、別のタバコ屋では「郵便局があっちにあるよ」と言われ、郵便局は閉まっている。どういう仕組み?帰ったら検索しよう。ドゥオーモの上に上がることができるチケット売り場も、警備員の人たちも、何か聞きたいことある?という顔でこちらを見つめてくれるので、あ、これまでそういう目で見られたことがなかった、誰もが話しかけないでというようなお喋りに夢中な顔ばっかりだった、この街では親切な顔がいっぱいあると心がお湯に浸かったような温かさで満ちます。

屋根の上は広々としています。思わず階段を駆け上がる。わーい、わーいと両手を上げて、遠くの景色に手を振ります。一日中この景色見てたいよねーと思いながら渋々と降りて、近くを散策します。やっと買いたいものがあったとビアネッティ(エスプレッソやかん)を手にレジに並ぶとJCBは使えないとのこと。残念!店の人も申し訳なさそうな顔で見送ってくれます。

高級店の並ぶアーケードを散歩して、るるぶに載っていたというTP熱望のレストランに入りました。やだ、ドレスコードありそうやんと店の前でビビっている私を、プロフェッショナルな雰囲氣のウェイターさんがそっと「プレゴ」と言って招き入れてくれた瞬間からうっとりが始まりました。前菜を頼まなくても嫌な顔ひとつせず、リゾットとカツレツはシェアする?シー、シェアすると答えると「パーフェクト」。その順番は?リゾットが先、カツレツが後と言うと「パーフェクト」。水もワインもひとつずつ聞かれて答えるたびに「パーフェクト」と答えてくれるので優雅な氣分が一氣に燃え上がる思い。くそー、ドレスアップしてくれば良かった〜、ドレス持ってないけど。お客さんたちが本当にお料理をひとつずつ楽しんで食べる様子だけでもしあわせになる。写真を撮ることすら控えて。後から入ってきたフランス人カップルはこちらを見ないように手のひらで隠した指でこちらを指差して、私達が頼んだものを参考にしている様子。ふふ、ビビっているのは西洋人も同じなんだ。デザートを頼むと彼らもデザートを。4人4皿、他人同士なのにそれぞれの口の中で、目を閉じて堪能しています。イタリア語のメニューをじっくりと見て頼んだトルテ(タルト)は、熱々のアップルパイの上にトロリとアイスクリームが乗ったもので大正解!フランス人の女性は私のタルトと自分の飾り氣のないプリンを見比べて、あっちにすれば良かった!みたいな顔で不機嫌になっていました。いひひ。満腹、満腹でウェイターの人にお礼を言おうとすると、サッと下がってしまわれました。やっぱりこの国の人たちはお礼を言われるのが苦手?地下鉄の切符を買うのにも慣れ、途中で降りてスーパーマーケットに入ってみました。現地に住んでいる日本人の男性が声をかけてくれます。カラスミが美味しいらしい。1時間ほどゆっくりと品物のひとつひとつを見物します。

また地下鉄に乗って宿に戻り、女性主人に尋ねて教えてもらったピザ屋さんへ。中華系のお店なのに日本人が珍しいようで、お客さんたちからジロジロとまたジャポネの話題となり、遠くから微笑みかけてくれたり、ドアを開けて待っていてくれたり。トイレで前の人の順番を待っていると、後から入って来た人が「コパート?」と言うのでおそらく満員って意味?と思ってうんとうなずきます。待っても前の人がなかなか出て来ないので外に出て店の人に「コパート」と言ってみたところ、あっちにもトイレあるよと教えてくれます。言葉が通じた!若いイタリア人の男性が、ウェイトレスの中国の女の子を「ウォーアイニー、ニーアイウォー」そう口説いて、女の子は顔を真っ赤っかにしてキャーキャーと喜んでいます。素朴なレストランなんだ。中心地は高いだけだから、この辺で食べた方がいいよと教えてくれた宿のおかみさんのお陰。お腹いっぱい食べてハーフボトルのワインまで頼んでも18ユーロです。

旅のメモ帳に「コパート」「プレゴ」「ティピコ」と書いた文字を眺めて、お腹いっぱいで宿に戻ります。おかみさんは帰るなり「どっちの店にいった?LESCHALET?ALBESUVIO?アルベスビオに行ったと言うと喜んでくれました。あそこは安くて美味しい店。うんうんとうなずいて第二の我が家ADAに戻ります。今後もし人生でミラノ出張とかあったらここに泊まろう。ここを拠点としよう。世界は広い。イタリアは素っ氣ない。それでもここに堂々と生きている人たちをもっと見たいし、この空氣を吸い込みたい。あたし、ミラノ好き。ミラノだけにまた来たい。熱く語っているうちにTPはまた行き倒れた人のように眠り込んでしまいました。TPの寝言。アンニュイね。何?と聞き返すと、いや…セキュリティがけっこう…ゆるい…そう言ってまた黄泉の国へ。おやすみ、おやすみ、歩き過ぎてくたびれたろう。明日は帰りの飛行機に乗らねばなりません。窓を開けて、夜中まで通りを歩く人たちを眺め続けました。