天上から下界へ

monna88882015-10-22

6時半に目が覚めました。明け方の夢は恐ろしい夢、私(というよりも夢の主人公)が3人の人生を翻弄してしまったばかりに、強烈な恨みを買って、首を羽交い締めにされて舌を抜かれて殺されそうになったところを、警察が現れてその犯人を殺したけれど、その恨みが強過ぎるのか死後硬直した死体が外れないため、警察はあたしの上の犯人の手足をカッターで切ってはがす、というホラー全開の夢。夢の最後に「これからは全て、正直に話す人になろう」と夢の中の主人公は悟っていました。目が覚めた瞬間、TPも「あ〜、恐ろしい夢見た」と起きていたので、ここはそういう宿なのかな?とちらっと思ったりしましたが、きっとたまたまでしょう。

まだ暗い中出発して、ノイシュバンシュタイン城を目指します。ドイツの小学生たちが白い息を吐きながら通学している。スーパーのフードコートで朝食、プレッチェルにクリームチーズと細ネギみじん切りが挟んであるのがおいしい。宿の人に教えてもらったところでは、城まで歩いても行けるとのこと、荷物を宿に置かせてもらって、スタスタと歩いて山の中の城を目指します。時々自転車の人とすれ違うだけ、誰もいない林道を、ひたすらに浮かれてお喋りしながら歩いていると突然、目の前に古城が出てきました。嘘のようで笑えます。まだ名前を覚えていなかったので、ノイシュバン、ノイシュバン、シュタイン、シュタイン、と繰り返して練習をします。

日本の城ならいざ知らず、西洋の城を見たいと思ったことが一度もなかったけれど、目の前には本当に城があるので脳がパチパチします。だんだんと坂道になって、城へ向かうバスにも何台か抜かれて、50分ほどでようやくチケット売り場に到着しました。20分ほど並んでチケットを購入、どうやら音声ガイド付きのツアーで入るらしい。カウンターの女性がそこからも歩いて20分くらいと教えてくれたので、再び歩いて上ります。

真下に来てもなお、現実感がありません。他の観光客の人たちも、何だかフワフワしている。

城の中庭に上がって入り口のゲートを見下ろしていると、ようやく現実味が出てきました。わー、すごいところ、来て良かった。日本人グループは整然と並んでいて、中国人グループは混然と詰め寄せていて、スペイン人グループは平氣で横入りしています。他の国の旅行者は、個人旅行が多いみたい。ようやく自分たちの番が来て、ゲートをくぐり、音声ガイドをもらうときに「ジャパニーズ」と言って入場です。どうやら、この城を作ったルードウィヒ2世という人は孤独で、城も他の城の真似ばかりして、悲しい人だったらしい。音楽ステージも作っているのに誰も招かず、ただそのホールを眺めているだけだったそう。真似ばかりした城がかえって豪勢になり、今でも人を惹き付けているとのこと。ツアーを終えてバルコニーに出ると、そこはほっぺたをつねりたいような絶景でした。


ひとつの天国。写真をお願いされたりお願いしたりして、誰もが何十分も景色を眺めています。

城からの帰り道はバス。10分ほどで駅前に到着。昨日親切にしてもらったインフォメーションで、フランクフルト行きの切符の買い方を尋ねると、時刻表をプリントアウトしてくれ、簡易切符売り場の場所を教えてくれ、また親切にしてくれたので感激します。ランチに入ったレストランでは、ボーイが子どもだったので驚きます。ちゃんと蝶ネクタイをした少年が、メイアイヘルプユー?とか、アーハーとか言うので吹き出しそうになるのをこらえて、TPはカツレツ、私はトマトクリームパスタ。

宿で荷物を受け取って、仮設の切符売り場へ。昨日すれ違った日本人カップルがいたので、思い切って声をかけたところ、14時半のバスを待っているのに来なかったから1本ずらすとのこと。ひぃ〜。私達と同じ15時05分のバスになるようです。バス停で一服していると、ドイツ人少年が煙草を1本くださいと言ってきました。この国では少年も吸っている様子。どうぞと上げながら、昨日も誰かに1本ちょうだいと言われたなと思い出します。やがてやってきたバスに、行き先を見せて間違いないと言うので乗り込んだところ、まだ時間前なのにすぐに出発しました。車内を見渡すと、一緒の便のはずの日本人カップルも、他の旅行者もおらず、地元の中学生ばかり。彼女たちに、電車の切符を見せて、本当に乗り換えの駅に行くかと尋ねると、行くとのこと。そして明らかに、来る時とは違う小道に入って行くバス。子どもたちが次々と降りて行きます。これはどうやら、いや間違いなく、路線バスに乗ったね…渋滞に巻き込まれながら、何カ所にも停車しながらも、どういうわけか電車が発車する直前に、バスは駅に到着しました。バスを待っていたよう。他の旅行者たちは直通のバスで悠々と席についている中、ハァハァと息せき切って電車に乗り込みます。

フランクフルトへはここから3時間ほど。宿は見つかるかな?そう心配しながら到着した駅は、ものすごい都会でした。駅のホームで、煙草を1本くださいとまたねだられたので差し上げます。明日はベルリンへ行ってみたい。鉄道会社の受付カウンターで電車の時間を尋ねると、窓口へ行ってと追い払われました。都会になるとこれまで親切だったはずの人々は急に怖くなりました。窓口のお姉さんもよそ見をしてお喋りしながら、この2つしか便はない!と怒ったようにプリントアウトをくれました。券売機で見よう見まねで切符を買おうとすると、便はもっとあるし、値段も安いのがあるみたい。少し怖かったけれど、思い切って最初の受付カウンターの怖い女性に、買い方を教えて!と頼んでみると、今度は親切に教えてくれました。どうやら、乗り換えの回数が多いものは、私達に教えなかったよう、乗客が少ない便には割引切符もあるから、それを買ってもいいとのこと。ようやく、券売機の使い方がわかった、克服した!怖いお姉さんにリベンジして良かった!

嬉しくなって飛び込んだ駅前の安宿は、まるで壁が無いかのように隣のインド人たちの声が筒抜け。向こうもこちらの日本語が聞こえているらしく、お喋りしては笑い声がお互いに響いています。うふふ、あはは。トラムの音も筒抜け。TPはまた晩ご飯も食べずに眠りこけてしまいました。2日連続晩ご飯を食べないだなんて、初めてのことでしょう。私もお腹が空かないので、シャワーを浴びてゆっくりと過ごします。ベランダから外を眺めていると、夜中になってもどこかから到着した旅行者が、大きいリュックを背負ってウロウロしています。おーい、この宿ならきっと空いてるよー、声は筒抜けだけどね!心でそう呼びかけてみました。