ウィーンにいるんだ

羽田からドバイまで11時間くらい、ドバイからウィーンまで5時間くらい・・・あまりにも長い時間飛行機に乗っているので、もう到着しないんだ、永遠にこの飛行機は空を漂っているんだ、そう考えると氣持ちが落ち着きます。悟りの心境。

ヘトヘトでようやく、オーストリアに到着しました。ドバイの空港では誰もが長旅の疲れで態度がでかくなっているのか、お手洗いに2回並んで、2回とも堂々と、まるで私だけを狙ったかのように信じられないような割り込みをされました。はっきりと背を向けて、無いはずの隙間に背中から割り込んでくるのです。案の定、何も言えない私。

ウィーンの空港から鉄道で中心地のミッテ駅へ。

道行く人は、少し険しい表情をしているように見える。今日、泊まりたい候補のホテルに向かって、歩き始めます。途中でSPARという看板のスーパーがあったので水を買います。0.3ユーロ。ホッ、駅の売店では3ユーロくらいで高かったのでビクビクしていたけれど、スーパーなら水は安いんだ。今回両替した計算では、1ユーロ137円の換算です。どこを見てもヨーロッパの建物、紅葉、紅葉に合わせたかのような石造りの建物、西日・・・平和・・・

観光の中心地、教会やら広場やらオペラ座やらがある場所に近づくに連れて、人も多くなってきます。スペインやイタリアに比べると、その人混みの感じはちょうど良い人口密度、心地よく歩きます。


TPがガイドブック(地球の歩き方)で見たオープンサンド屋さん(ツェスニエフスキー)へ、グラスでビールをいただきます。うまっ!

TPがガイドブック(地球の歩き方)で調べてくれた、オペラ座から目と鼻の先のホテル、モーテルワン。106ユーロと私とTPの旅行にしてはお値段かなりお高めですが、中心地に近いのでたまには良かろうと奮発して泊まることにします。鼻息が荒くなります。

TPが明日行こうと言う、オペラ座の周りを、くるっと歩きまわります。本当に入れるのか知らん?

TPがガイドブック(地球の歩き方)で調べてくれた、老舗の地元料理レストラン、プラフッタへ。大入り満員で、席に案内してもらってからの注文すら、まごまご、誰に頼んだらいいんだろう?しばらくするとニコニコ笑顔のお兄さんがやってきて、指差し注文します。オーストリアの名物料理だという、ターフェルシュピッツ(牛のスープ煮)、1人前で2人で食べて十分にお腹いっぱいになります。ビールもおいしい。どうやって食べるのが正解なのかわからないまま、何となく言われるがままに牛をフォークとナイフでカットして食べ、スープは薄切りパンケーキを入れて食べ進めて、周りを観察しながら、ヨーロッパではチップの制度があるようなので、ふたりであれこれ考えて多めに出すと、おつりが戻ってきてしまって撃沈します。正解がわからない!

まだまだちょうど良い人口密度の観光客であふれている街、小道、広場、教会、オペラ座、ホテルへの道を通って、奮発した宿に戻ります。オーストリアって実感ある?無いよね、本当にオーストリアよね?ウィーンよね?そんな会話をしながら、ホテルの部屋で洋服を手洗いして干して。オーストリアのホテルのアメニティは、石けんと備え付けのシャンプーだけ。湯沸かし器も、ましてや歯ブラシも、ドライヤーすらない。そして全室禁煙らしいので、外に出て一服します。

ほんの数百メートルの中心地を歩き回っただけだけれど、視界の端から端までことごとくいかにもヨーロッパ、芸術的なウィーンの街並み、紅葉に合わせたかのような色使いの建物がどこまでも、目をかっ開いて歩いていたからか、それとも視覚の刺激が強すぎたのか、あまりにも普段の生活と違う景色に、目が痛くてたまりません。

地元の人の目はギラギラ、観光地の接客業の人の目は営業スマイル、その中でアジアからやってきた夫婦ふたりはなるべくこの街に馴染もうと、ゆっくり歩いてみたり、控えめな態度で控えめな声で、こっそりと中欧を観察するような心持ちで、ゆっくりと、ふわふわとウィーンの街を漂って。ホテルの部屋に干した洗濯物だけが、現実感を与えてくれます。まずは、この街に到着したことだけでも、喜びましょう。長いフライトだった。今、ヨーロッパのオーストリア、ウィーンにいるんだ、そう自分に言い聞かせました。