ヌークシオの森

日曜日。ヨーロッパだって同じ日曜日なのが不思議です。7時に起きて今日もコーヒーをいただいていると、リクさんと息子のダニエルも起きてきました。私が「ヌクーシオに行く」と言うとリクさんが首をひねるのでTPが「パーク」と言うと「あぁ、ヌークシオ!あそこは私たちにとって特別な場所だよ、子どもの頃から何度も行ってる」とのこと。ヌクーじゃなくてヌークね。リクさんたちは今日、息子のサッカーの試合だそう。じゃあ行ってきまーす、モイモイ!

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中央駅のロバーツコーヒーで朝食。ヘルシンキで有名なコーヒーチェーンだそうです。日本ならドトールかな?

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昨日、散歩の途中で切符の買い方を練習しておきました。スムーズに電車に乗っていよいよヌークシオの最寄り駅、エスポーまで、約30分。ガラガラの車両には、ひと駅ずつ、ポツポツとリュックや歩行のスティックを持ったひとたちが乗り込んできました。地球の歩き方には、エスポー駅前のスーパーでソーセージを買えるとのことでしたが、いつものコンビニ(Kマーケット)しか空いていません。仕方なく、ソーセージ入りのホットドックをテイクアウトしてみます。

 

駅前から245番のバスに乗って(電車が到着すると、バスが来る仕組みらしい)、運転手さんに「Haukkalammentie」と書いたメモを見せて「ヌークシオ」と言います。同じ乗客の女性が助け舟を出してくれ、無事チケットを買います。4と4。2人で8ユーロ。助けてくれた女性が、どのコースを行くのかと尋ねてくれます。A(赤色が目印)が2.4キロ(1時間30分)、B(青)が3.7キロ(2時間30分)、C(黄)が7.2キロ(4時間)の3コース。青と答えると、女性(マリさんという名前だそう)は自分のスマホでコースを見せてくれ、自分はヌークシオ国立公園(マリさんはナショナルパークとか言ってた)の職員、バス停からコースの入り口だけでも片道2キロ、往復4キロだからAコースにしておいた方がいい、Aコースだって十分キレイ、何なら帰りはナショナルパークの施設があるハルティア(Haltia)に行っても2.5キロくらいだからとアドバイスをくれます。サイクリング用の運動着で、自転車と一緒に乗ってきたマリさん。スポーティーな彼女、プロのアドバイスだから素直に従います。まずマリさんがHaltiaで降りて、私とTPはHaukkalammentieのバス停まで。マリさんとの会話を聞いていたらしい、バスの乗客のひとがバス停はここだよ、コースの入り口はあっちだよと教えてくれます。キートス!

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もう周りの景色は、緑ばっかり、ときどき別荘、芝生。砂利道を歩いていると、森の方から車が何台もやってきます。土曜の夜に森でキャンプしたんじゃないだろうか?半袖でも十分、日差しが強いので帽子を被って、同行者もなくTPとふたりだけ、たまにすれ違うのは車だけの道を、てくてくあるき続けます。

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やがて森の入口、駐車場が出てきて、木に打ち付けられている赤い板の目印をめやすに、歩き始めるとすぐに湖が出てきました。トイレは入り口にしかないというのでちゃんと立ち寄ります。バイオトイレと書いてあるポットン式のトイレ、驚くほど臭いがありません。水道水を汲める蛇口もあって、水筒に補充して歩きます。

誰でも、そこにある薪を使って自由にバーベキューをしていいという場所が2つ。TPが「あそこにおるの、日本人みたいよ、日本語が聞こえた」と言うので、せっかく遠い場所で出会った日本人同士、声をかけないのもナンだなと言って、挨拶をして一緒に焼かせてもらいます。私たちが、ソーセージを買えずにホットドックを買ってきたと言うと、ちょうど良かった、2本余ってるんですよ、良かったら食べて行ってくださいとのこと、何だか催促したみたいでスミマセンとか言いながら有り難くいただきます。そのおいしいこと!!!フランクフルトソーセージみたいな、大きくて皮がパリッとしていて、ジューシーで。どうやらご主人の転勤でヘルシンキに来ているそう、今日は長崎から主人の母と妹、その娘が来てみんなでピクニックしているんです、とのこと。私たちも九州ですよ!と盛り上がります。お義母さんたちを案内するのに、昨日はシベリウス公園のカフェでシナモンロールを食べたそう。じゃあ私たちも行ってみます。冬に来たときは、この湖も全部凍っていて、知り合いの子どもからソリを借りてすべった、フィンランドの冬は毎日が灰色、本当にウツになりますよ、今週からようやく晴れて、本当にいい季節にいらっしゃいました、やっと野菜も出てきたし、キュウリや、アスパラガスも出てきたし、フィンランドのアスパラガス有名なんですよ、今が一番いい季節ですと言われてうれしくなります。長崎名物、福砂屋のカステラや食べだすと止まらないフィンランドのポテトチップスまでいただいて、お腹いっぱいで、また歩き出します。名前も聞かなかったけれど、とてもうれしい出会い。キートス!

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広い広い森だから、ほとんど誰ともすれ違わずに貸し切り状態で歩きます。

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ちょっとした坂道で、急に自分がプロゴルファー猿になったような氣がして、山道を駆け上がってみます。おーい、急にどうしたとー、と遠くからTPの声。

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駆け上がって、丘の上の眺めを堪能します。

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赤い目印のAコースもそろそろ終わり、そうだマリさんが言ってたHaltiaに向かいましょう、3キロくらいらしい。倒木が何本もあります。根こそぎとはこのこと。それにしても、マリさんが氣楽に進めてくれたように思える道でも、山あり谷あり、砂利道あり、絶景ありの素人にはなかなかハードなコース。

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途中からだんだん無口になって、水筒の水も残り少なくなってトイレにも行きたくなって、道なき道になって「マリ・・・」とか思います。ようやく、マリの勤める施設、ネイチャーセンターが見えてきて。受付にいたマリに「歩いてきましたよ、ありがとう、すごく素晴らしい体験だった」と心からお礼を言います。マリが「上のカフェに行った?」と教えてくれたので、カフェで休憩。絶景なのに写真も撮るのを忘れて、ひたすら身体を休めます。またマリにお礼を言って、TPはマリから帰りのバスの時間を教えてもらって、私はマリのピアスがとても素敵なので同じものを買って(本物の花が入っている丸いピアス)、バスに乗って駅まで。エスポーまでと言うと今度の運転手さんは「ヘルシンキ中央駅まで戻るのか?」と何度も聞いてきます。何でだろう?と思いながらまた8ユーロ払って切符を買って。エスポー駅でヘルシンキ中央駅までの切符を買って。どうしてバスの運転手さんがどこまで行くのにこだわったのか、よく考えてみました。そして地球の歩き方をよく読んでみると、どうやらゾーン内の切符は時間内ならどこまで行っても乗り降り自由、トラムもバスも電車も乗り放題だと書いてあります。しまった!行き帰りのユーロを損した!

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試しに、電車のチケットでトラムとバスに乗ってみると、チケットを見せるだけでそのまま乗れてしまいました。損しちゃった!フィンランドの夜は長い。いつまでも日が沈まない。リクさんおすすめのサウナに行ってみると、予約でいっぱいとのこと。明日の予約をして、バーで一杯飲みます。(ひ〜、ビール1本1200円くらい!)

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またバスで中央駅まで戻って、カンピ駅周辺を散歩。中古DVD屋さんがあるけれど、リビジョン?だか何だかの仕組みが違うようなので買いません。

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またトラムに乗って。リクさんちまで戻ると、末っ子トーマスひとが暗い中、子供部屋でインターネットゲームをしています。ハーイと挨拶すると一応、ハーイと返してくれます。子供部屋(だけでも私とTPの住むアパートと同じくらいの広さ)の奥に、もうひと部屋あるよう。2日連続で買いそこねたビールをKマーケットで買って冷蔵庫に入れて。

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トラムに乗って、リクさんおすすめのレストラン、ELITEまで。地元の料理が食べられるとのこと。

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ウェイターおすすめのアスパラガス、やった、アスパラガスが食べられる!自家製マヨネーズソースがおいしいこと。とにかく物価が高いから、前菜もひとつだけ、お酒も頼まずに水だけ、「料理はシェアしてもいいですか?」と聞くと快くノープロブレムと答えてくれます。ところがどういうわけか、前菜が2つ出てきちゃった、でも美味しいからいい。

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サーモン・・・フィンランドのサーモンってどうしてこうおいしいんでしょう、冷凍していないからかな?

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トナカイの肉。クセは無いのに、肉の味がしっかり。それにしても、歩き疲れたからでしょう、老夫婦のようにTPと黙り込んで、目の前のドリンクだけ頼んでいる客たちを眺めるだけ。TPに念のため「不機嫌?」と尋ねてみると「俺もあのおじさん見習って、ボーーーーっとしとったと」とのこと。

 

どうやらフィンランドのひとたちは、酒をガンガン開けてアッパー系の飲み方はせずに、1本だけ頼んだビールの小瓶、1杯だけ頼んだグラスワインを、ちびちびと、ゆっくり、私たちの食事が終わってもまだゆっくりボーッとしているほどのゆっくりさで飲んでいます。

 

とにかく夜の11時前にならないと暗くならないから、もう今が何時かわからなくなります。今やすっかり我が家のリクさんちに戻ると、誰もいないのかシーンとしていて、冷蔵庫にはゆでたパスタが鍋ごとあります。シャワーを浴びて、洗濯機を借ります。TPはベッドに倒れ込んで眠ってしまいました。洗濯が終わるまでの1時間、部屋で手帳を書いたりします。ピーッと鳴って洗濯が終わりました。部屋を出ると、電氣を点けない部屋でまたリクさんがソファーでタブレットをしているので、あら、帰ってたんですねとか会話。驚かしてごめん、もうひとつ玄関があるからそっちから帰った、ところで今日は、ちょっとこっち来てとヨット(リクさんの趣味)の帆をペンキで塗ったものを見せてくれます。そこからリクさんと15分ほど立ち話し。リクさんは、4年間アジアにいたってプロフィールに書いてましたよね?勤務先のホテルの転勤でマレーシアにいたんだ、そこからタイやインドネシアベトナムなんかを旅行して、あなたたちの部屋の絵もマレーシアで買ったもの、アジアの何が好きって、ひとつずつ違う、どの国も特徴があると言うので、私も今回そのことを思ったんです!スペイン、イタリア、ドイツ、オランダに行きましたが、特にイタリアとかはカフェに入っても自分たちのお喋りばっかりで、わたしたちのことは見てもくれないことがあったと答えます。リク「まさにそう、それが彼らのいいところでもあり、悪いところ。観光客が多いから、あまりかまってられない。特にフランスなんかは、フランス語を喋れないとわかるとシッシッ(手で追い払う仕草)と店にも入れてくれない」「でもフィンランドは、本当に皆さん、親切で、自然に応対してくれますよね」「フィンランドはまだ観光客を受け入れて20年くらいしか経っていないから、来てくれるだけでうれしい」「日本人と似ていると思いました」「そう、主張する方じゃないし、優しいし、家で酒を飲む」「あはは」「ところで、ペンキの臭い、きつくない?」思わず長話してしまったものの、もしかするとリクさんはそれだけを聞きたかったのかも知れない。恥ずっ。

 

「あ、そうだ、重要なこと。実は明日、急にドイツに出張になって、息子たちは母親の家に預けるから、君たちだけだよ」と言うので、へっ?残念ですと答えます。アパートの鍵は、テーブルの上に置いておけば良いそうです。

 

乾燥機もあるけれどもう夜も遅いから上の階からクレームが来ると、室内用の物干しを貸してくれました。

 

部屋で缶ビールを飲んで、TPも起きて来ないので眠ることにします。だってもう夜の11時30分なんだもの。明日は私たちだけか、ちょっとうれしいな、いや、とってもうれしいな。のびのびと過ごそう。