100万円

朝、父から電話。今日、休みかなーって思って電話してみた、とのこと。声の張りが全然違う。膀胱全摘を決めてから、生きるんだという意欲がようやく湧いてきたような声で。「母ちゃんは今、買い物。その間にかけてみたと」だそう。ちょっとぞっとするけれど、父は私の口座に100万円振り込んだと言います。はっ!?となりながら、父というひとは、これまで何度も自分の家族に対してのあれこれを、お金を突然くれるといいうことで表現してきたという事実を、噛み締めます。中学生の頃、突然に10万円くれたりして好きに使えと言ったり、私が東京に出てからも20万円、30万円、50万円などと、わざと大きいお金をくれるのです。それを本当に全部使っていた私。「もういらんよ、私、今までいーーーっぱい、全部買いたいもの買ってきて、今ようやく無駄遣いせんくなったけん」とか言っちゃって。

 

その舌の根も乾かぬうちに。私はこのところ、20年ほど前から使っているノンラップという製品名の、プラスチックの蓋のついた和食器についてずっと考えていました。何ヶ月か前にたまたま府中のあたりの島忠で見つけて買い足したものを毎日のように使いながら。もう家中の食器を、ノンラップにしたって良くね?くらいの勢いで。

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そこで、電車を乗り継いで、かっぱ橋へ。

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数年前にかっぱ橋で、このノンラップの食器が大量に売ってあったのを覚えていたので。

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何だか急に、パン箱を買いたくなるのをぐっと我慢。

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かっぱ橋の、いい感じのマンションを見つけて、ここで暮らせたら夢のようだとうっとりしながら、

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結果として。ノンラップの器は、もう売られていませんでした。正確には、たった一種類が2サイズだけ。思わず店の方に「何年か前に、たっくさん種類があったんですけど、もう無いんですよね?」と尋ねてしまう始末、「はい、大小2種類だけ、すみません」と謝らせてしまう始末。いえいえ、また来ますと嘘を言って、TPの朝食用のお盆だけ買います。

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ノンラップの食器を買いにわざわざ出かけてきたのに買えないだなんて。ひたすらに歩いて上野駅まで。途中の神社で、初めて、父の体調が快適になりますようにと祈ります。己のことでは何度も豊川稲荷東京別院に出かけて、500円玉やら1000円札やら入れて真剣に祈っていたのに、父のことでは神社に行くという発想がなかったという真実。

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ふと、上野駅の交差点で。突き上げるような悲しみが。「海外旅行に行きたい!ここ2年、都内のビジネスホテル泊まりでお茶を濁してきたけれど、やっぱり海外旅行に行きたい!」と思ってもいなかった感情が爆発して、交差点の真ん中で己のエゴを叫びたくなります。

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さて、私はあさイチを毎回録画していて、その中で出てくるザルが欲しかったから、かっぱ橋で見つけて買っていたのでした。買えて良かった。

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録画していたあさイチで見た、牛肉の時雨煮(肉を煮るのは、1分✕3回だけ。後は煮汁の方を煮詰める)の作り方をそっくり真似して。天才かな?と思うような仕上がりに…。今、食べたいものがある。今、欲しいものがある。今、行きたい場所がある。父は氣の毒なほど不器用で見栄っ張りなひとだけれど、私の欲を喜んでくれているのを感じます。欲があるってのがいいな、とか言っています。私はもらった100万円を何に使うのかな。使わないだろうな。