秋の思い出

朝、ほっぺたを遠慮がちに指で突かれて起きます。今朝も同伴出勤。一日一回は外をちゃんと歩くと決めたので、半分眠ったままで無理やり起きます。片道15分、バイバイッとTPを見送ってドトールでアイスコーヒー。窓からの眺めは西武新宿線、山手線、湘南新宿線、埼京線。色んな電車が右から左、左から右。まだ昨日の夜から続いている千鳥足と、出勤する重たい足どりが交差しています。

お休みなのについ、お仕事が氣になっちゃう。こんなことなら仕事すればいいのに、自分でもそう思って2件メールを返します。どういうわけかLANケーブルの調子が悪くなったので神様からのお告げか知ら?とノートパソコンを閉じます。テレビでは停電のニュース。朝、ドトールから眺めた西武新宿線もダイヤが乱れているらしい。

ところで。黒柳徹子ちゃんのインスタがあまりにも可愛く、餃子の写真がとても美味しそうだったので晩ごはんは餃子にします。

ただし、餃子を自分で作りたくない氣分なので冷凍餃子です。50個入りで300円台。ちょっとくらい段ボールが入っていても仕方ないお値段。餃子のことを考えていると、すっかり記憶の底に沈んでいたけれど、子どもの頃、突発的に餃子を作るぞと宣言した父から、包む作業を嫌々手伝わされたことを思い出しました。スプーンですくったあんが多過ぎると怒鳴られて。具はちょっとでいいんじゃ!ワンタンの日もあったっけ。もうひとつ、手伝わされて恐怖だったのは山芋に出汁を少しずつ入れてすり鉢でする作業です。自生している掘りたての山芋を頂くことがあったのか、山芋を掘るのがどれほど大変かの説明から延々と聞かされて、まずは山芋をすりおろすことについての講釈、それからすり鉢でするリズムへの見解、父がすりこぎでする山芋にお玉で、糸のように少しずつ出汁を注がねばなりませんでした。面倒臭いのでドボッと入れると烈火の如く怒られました。弟はすぐに逃げ出して、寝転がってマンガなど読んでいたっけ。

餃子やワンタン、山芋おろしが出来上がった後も、食卓では「どうや、旨かろうが?」が何十回と続いて食べた氣がしません。父のせいで、弟と私はほぼ同じ好みの舌になって、ここぞと言うときに選ぶおいしいものは必ず、魚は白身、肉は赤身、温度は熱々、まるで自分の舌に主導権を握られているよう。一時期、父は人からもらった鈴虫を数年に渡って育て続けていて、その世話(ナスを輪切りにして虫かごに入れたり、産卵前に砂を洗ったり)も父独自のルールで手伝わされて。夜に鈴虫が鳴き出すと、テレビも電氣も消されて、家族で聞き入らねばなりませんでした。どうや、鳴きよろうが?母だけはすぐに飽きて台所へ逃げ込んで好き勝手にしていたけれど。秋です。