ちくちく手縫いエプロン

TPを駅まで見送って、洗濯と掃除と昼寝をすませて、電車に乗って馬喰町へ行きました。ふと先日、思い立って洋服作家のひとの手縫いエプロンワークショップに申し込んでみたのです。本、雑誌などいくつも読んでいたのでドキドキワクワクです。

席に着くと、両隣りの女性たちがとても優しく、氣さくに話しかけてくれるので安心します。それほど大きくないギャラリーで、女ばかりが20人ほど集まっているんだもの、手縫いでエプロンを作ろうというひとたちはみんな優しそうで同時に何かを抱えていそうです。

講師の先生は、麻布と綿麻布をエプロンの型、ポケットの型に切って用意して下さっていました。赤い刺繍糸を刺繍用針に通して、あとは好き勝手に縁を縫って行くだけ。先生のお喋りはとどまることを知りません、そのパワーたるや。田舎暮らしのこと、習っている体操のこと、本を書いた心境、最初はへーとかはぁーとかうなずいて聞いていたひとたちも、ヤベ、これじゃエプロン縫い終わらない・・・と焦って、だんだんと顔を上げもせずにひたすらに、グイグイと太い糸と針を麻の布に挿して行きます。やがてお茶とマフィン。

どうやら、先生のファンが多く、参加者の自己紹介から悩み相談になって行きます。これがワークショップの醍醐味。それでも私は、都会は営業マンが売ろう売ろうとする場所だから自分が何かを作って暮らしているのがしあわせだという話題がでたときに、営業マンの味方をしたくなったりします。本だって作品だって、都会の誰かが売ろうとしてくれているからこそ買いたいひとたちに届くのだから、心の中で色々なものを売る営業マンたちを応援します。

女性同士のお喋りはホカホカと続いて、本来山猿の私は窓の外を見ては「日が暮れそう」とか、「その悩み、私の意見は!」などと心で思いながら、予定時間を1時間超えたところでお隣りの女性たちにこっそりと「お先に失礼しますね、今日はありがとうございました」と言って帰り支度をしました。あえて空氣を読まない作戦、私が席を立ったのを見て安心してくれたのでしょうか、数人のひとが私も、私もと帰路やお手洗いに立ち上がって。今日はつくづく、先生の出し惜しみの無さ、生徒たちそれぞれの抱える暮らし、仕事、環境、色んな女性と出会えたことがうれしくて、でも私はやっぱり都会の山猿で、色んな氣持ちがわーっとなって、ギャラリーを出てからわーっとひとりでひと駅、街を走り抜けます。早く家に帰りたい、日はもう沈んだ、早く帰りたい!タタタッと走って、結局作り終わらなかったエプロンのなりかけを抱えて、走って走って走ります。

電車に乗って帰って、勢いでエプロンを縫い上げて、本当は背中で結ぶタイプだけれど綿テープでお腹周りをぐるり、前で結ぶようにアレンジして、ポケットもつけて。今日習ったことは色んなことに活かせそう、右隣りの女性も、左隣りの女性も、大好きなタイプのひとたちだった、でもワークショップにまた参加するかどうかはわからない、今日習ったことはもっと自分の中で煮詰めて、習うことじゃないものを作ってみたい、そんなことを考えて。

縫い上がったエプロンを身に着けて、仕事から帰ってきたTPにもファッションショーをして見せて(へ〜、いいやん、とのこと)、いつかエプロンを手縫いしたいと思っていたんだった、そう思っていたことを思い出すように。このエプロンをつけて、近所を歩き回りたい。ボロボロになるまで、つかい続けようと思います。