ああ松島や

新幹線に乗って仙台へ行く日。TPが上野駅まで見送りに来てくれました。朝ごはんをハードロックカフェで食べようと検索してくれたらしいので、ハードロックカフェに入ってみます。TPは入場券まで買ってホームで見送ってくれます。冒険心かな、好奇心かな、それとも暇なのかな?

やって来た電車に乗り込んで、窓からTPに手を振りながら指定席に行くと、誰かの荷物が置いてあります。間違えたんだな?と先客に乗車券を見せて、あれ?同じ座席。「次の電車の切符ですね」と言われて、「えーっ、どうしましょう」と思わず答えると「次の駅で降りて、乗り換えたらいいと思います」と見知らぬひとに教えてもらいながらも、乗務員さんに「一本前の電車に乗っちゃったんですけど」と言うと空席を教えてくれました。みんな親切。

車窓からは富士山が見事に見えています。たった2時間ほどで仙台駅に。母とは改札前集合だったので、改札前でじーっと待ってみます。本来乗るはずだった新幹線が到着する時間を過ぎてもなお、母の姿が見えないなと思っていると、向こうの方から父が走って来る姿が見えました。お父さん!と声をかけると、改札2つあったとのこと。とにかく出会えてヨカッタねと、弟嫁の運転するワゴンに乗り込みます。久しぶりー!前に会ったときはまだ言葉が喋れなかった甥っ子も大きくなっています。こんにちは、と声をかけると見知らぬひとに怯えているのか、窓の外を見てなかったことにしている甥っ子。ぷっ、人見知りなんだね。

近況報告やらどの道路を通るやらでモジャモジャして、まずは松島へ行くことになっているよう、ただの客として最後尾に座りながら眺める景色、弟の3人めの奥さんは、とても自然に父とも母とも会話してくれている、何てありがたいことなんだろう。なんだかんだで、初びっくりドンキー。安くておいしい。(お金を出すのは父)



そもそも今回の目的は何だったっけ?とか少しだけ思いながら、ただ車に乗って松島へ。私が以前「松島のお寺の参道の、松の木が素晴らしかった」と言ったのを憶えていた父が「どこが松の木や」と言うので改めてが見たところ、まっすぐに伸びた杉の木だったので軽く驚きます。「松の木は、こんなに真っ直ぐやなかろうもん」いつもの洗礼。私が「松島に行くなら遊覧船乗らんとね」と言っていたことを憶えていた父が遊覧船に乗ろうと言うので、フェリー乗り場に行きます(お金を出すのは父)。父は「芭蕉はいいな、ああ松島や松島やって言っただけやろ」などと寒いオヤジギャグ。詠嘆ですよ。



甥っ子のS君が、おふね、おふねのるー?とかおふねたのしいねー、とか言っています。幼児言葉。父も母もすっかり爺婆の顔で甥っ子の面倒を見ています。甥っ子S君はとにかく乗り物好きな性質らしい、フェリーからずっと外を眺め続けています。父「どの島見ても一緒やな」


弟嫁が、出張中の弟が松島でどうしても好きなカステラがあるから買って帰りたいと言うお店でカステラやらお菓子やらをいくつも買って(お金を出すのは母、でも出処は父)、駐車場代を払って(お金を出すのは母、でも出処は父)、みんなで立ち寄り湯に寄ります(お金を出すのは母、でも出処は父)。弟嫁がシャンプーをしている間、母は前から私に話しをしたかったような顔で「もうお父さんと旅行せん」とか言っています。聞いてみると「飛行機のシートベルトが外んで、外れん、何とかしてって言ったのに、何もしてくれんやった。もうこのまま外れんでいいって座っとったら、スチュワーデスさんが外してくれた」とかどうでもいいことでした。お母さんはお腹周りが太くて、シートベルトを外すのも大変なんだね、でもそれくらいは自分で外せるようになったらいいのにね、甘えてるのね。


また車に乗って仙台市に戻って晩ごはんを食べて(お金を出すのは母、でも出処は父)、弟一家が暮らすマンションへ。少なくとも潔癖症ではない様子、雑然としていておもちゃだらけ、父は物置部屋に、私と母は普段の寝室に、出張帰りの弟と奥さんと甥っ子は居間に、部屋の割り振りが決まっていました。玄関前の廊下で父とタバコを吸いながら「物が多かろう?おもちゃやら何やら。俺はおもちゃ一切買ってやらん」とか言っています。でも今日は無事に出会えてヨカッタね、松島も行けてヨカッタね、とか言ってみます。

歯磨きをしてもまだ夜の9時。弟の3人めの奥さんは、息子である甥っ子にとても優しく接しています。私の弟はまだ出張中で帰りは夜中になるらしい。父はすぐに物置部屋に引っ込んでしまって。母はもう目が閉じそうで。私は父が買ってくれた日本酒を飲みながら、もう寝ましょうと言って寝室に引っ込んで。部屋の外ではまだまだ興奮攻めやらぬ甥っ子の声が響いていて。弟も深夜まで大変だな、帰ってくるころには眠っていたいな、弟は新しい家族と新しい生活を重ねているんだな、そう思いながら早々に寝ました。まだ9時!