片栗粉のお好み焼き

妖精になったとしても、金つぎした茶碗はもう使えます。コーヒーを淹れて、飲んでみます。まずーい。香りがしないのは、妖精だからこそ。

まだ元気だったときに、鴨居にねじ込んだネジを、眺めます。

毎日使うリュックをかける定位置です。

妖精は、近所の、コーヒーショップへ行ってみます。エスプレッソの豆を買って帰ります。

カズオ・イシグロ文庫を読み終えます。AIだからこその、人間の感情を学ぶという過程が描かれているので、わかるーと思います。人間として生まれてきたけれど、人間界のルールについて行けないような部分を持つ身としては、特に。

夜。突然に「お好み焼き食べたい!」と思いました。キャベツを刻んで、小麦粉と玉子を混ぜたつもりが、片栗粉でした。びっくり。それが、片栗粉の方が、もしかするとお好み焼きとして好きかも知れないという出来上がり。妖精になったって、料理の腕は落ちていないってところが、自画自賛です。うっとり。明日になったらまた、妖精の皮を脱ぎ捨てて、労働者として生きなければ行けない。がっかり。でも働く場所があるって、しあわせなことじゃない?と自分に言い聞かせながら、片栗粉のお好み焼きを、ムシャムシャ食べます。