長くない

朝、TPが1時間も早起きして、出勤前に私を駅まで見送ってくれました。「でも、案外長くないと思う」と言うと「そんなこと氣にせんで、できるだけ長くいい時間を過ごして」手を振って分かれる交差点、涙ちょちょぎれながら空港行きのバスへ。

 

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お腹が空いたので、コンビニでサンドイッチを買って食べます。「父はサンドイッチが好きだったな」とか思いながら。(まだ死んでないのに)

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空港で、飛行機に乗り込む時も「父は膀胱全摘手術を受けたら障害者申請をすることになっていたな、そうしたら機内に優先的に乗り込めたな」とか(まだ死んでないのに)。3席の座席の通路側で、残りは空席。いつの間にか横になって眠っていました。

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コーヒーをサービスされて、寝るのは構わないのでシートベルトだけ、ゆるく付けておいてと客室乗務員の方に優しく言われてまた熟睡して、目が覚めたら福岡!!!!!!!!!

 

福岡の景色が見えた瞬間、そして着陸した瞬間。父のことが心配で一度も食欲がわかなかったけれど、福岡の地面に自分が着地した瞬間に「うどん食べたい」と思いました。福岡のおうどんを。そして、もう何があっても大丈夫、そう思います。

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母が昨日「空港でPCR検査受けれるって」と突然連絡してきたものだから。到着後、すぐにPCR検査場に行ったら予約しないとダメって言われて。途方に暮れて歩いていると、迎えに来てくれた母と合流。(あ、背中の曲がったお婆さんになっとう)駐車場まで歩きながらも「コーヒー飲む?」とスタンドでコーヒーを買いながら、かかってきた電話に出て「そう、もう長くないみたい。でも娘が帰ってきて」みたいに涙ぐみながらもお会計する母。

 

家に戻りながらも「看護師さんに来てもらった。お父さん、辛そう」ダダ泣きしているし私も泣きます。「お父さんがさ、夜、辛いけんさっすてくれて言ってずっとさすったら、迷惑かけてごめんね、ありがとうとか言うんよー」と母号泣。ごめんってことないよー、いくらでもさするよとか言って号泣しています。「お父さんが手術できんて聞いてから、食べたものも戻すし、字も書けん」と言うので「私も、手術できんやったって聞いてから、字も書けんくなって、ご飯食べても吐いて」と言うと「へー、あんたは強いから泣かんと思っとった、◯◯(弟)は泣き虫やけど」とか言われてちょっと驚きます。私も泣き続けていたのに、母の中の私の評価って…ひどい!

 

久しぶりの実家。「ただいまー」と帰ると、「おかえり」と言ってくれる父は熱があって、介護用ベッドで、看護師さんに介護されながら「ふう、ふう」と荒い息をしながら「こんなに辛いもんとは知らんやった」と癌のことを話しています。「もう、日に日に悪くなると」と、3日前から、どんどん体調が悪くなって来ていることを教えてくれます。「そりゃそうやろ、お医者さんも匙投げるくらいやけん」「そう、ポーンと投げられて、放り出された」と辛そう。それでも熱を冷ます注射を打ってもらって、ちょっとは楽になった様子。「お前に、うまいもんを食べさせてやりたい。とにかくうまいもん食えよ」などと。でも私は食欲ナシ、でも痩せない、不思議。

 

私は、ワクチンをまだ打っていなかったので母からバイキン扱いされていて、母が電話してくれたワクチン接種を受けに、ひとり、地下鉄に乗って、天神からワクチン接種会場までのシャトルバスに乗ります。以前なら母は絶対に車で送ろうとしてくれていたけれど、母ももうお婆ちゃんなので「地下鉄で行ったら」とか言って。

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七隈線。だーれも居ない。平日の昼間。

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天神までのたった22分の長いこと。

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運良く、市役所前からのシャトルバスにすぐ乗れて、ワクチン接種を受けに。結構な人数が、接種会場には集まっています。どういうわけか、問診票を書く時にニッカポッカを履いたおじさんから「ここは署名するの?」「今年は2021だよね?」とか色々質問されて、偶然同じ列に並んでいるうちも「フリガナ、書いてなかった」とか言うので私もボールペンを貸したり、「1回め?俺は2回め。2回めの方がきついって言うよね」とか話しかけてくれるので、そうですねーと答えたり。大きい会場で、20列くらいあるけれど誰もお喋りしていないので、私とそのおじさんとの会話が周囲に響いていますが、こっちは父が余命1〜3ヶ月だし、怖いものナシだから、話しかけてもらえたら、私もちゃんとお喋りします。「注射、痛いですか?」と聞くと「?うん?いや、痛くないよ。でも打った後が痛い」とのこと。サンキュ、パイセン。

 

パイセンがまた振り向いて「来年あたり、3回め打たんといかんかもね」と言うので「あー、確かに!」とか答えて。お陰で数十分間の待ち時間を、退屈せずに過ごすことができました。

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福岡の空は広い!サンフランシスコのように。休憩して、接種会場でお喋りしたパイセンは60代のチェックボックスにチェックを入れ忘れたと言っていたっけ、そのおじさんが自転車で颯爽と家に戻っている姿を見ていると、父はもう自転車に乗れないんだなと思ったりします。

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帰り、シャトルバスまで35分も時間があったので、歩いて別のバス停を探します。汗を拭き拭き、たまらない氣持ちで。行きのシャトルバスから初めて見た、黄色い、長〜いバスに乗れて良かった。

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天神の地下街の美しさ。福岡県民の自慢です。

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元々、七隈線は私が福岡で暮らしていた頃には無い地下鉄。当時、地下鉄開通の署名集めに来たお婆さんが「15年後に開通します」と言って私も署名したけれど、このお婆さんは15年後には生きていないだろうと思ったりしたっけ。

 

そこからは、父はまだ介護用ベッドでふぅふぅ言っていて、私にうまいもん食べろと言っても食べたくなくて、母が2日前に作ったというおでんを温めて少し食べるだけ。私にビール飲ませろと父が言って、母と車で買いに出かけて。

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ビールを買って戻っても、父は辛そうで。それまでもWiFi借りにヤマダ電機行ったり、父の熱が高いからと別の看護師さんが来てくれたり、大忙し。ヤマダ電機ではWiFiは借りられず、母は「着信音が、前はSMAPやったのに勝手に変わってしまった」とお婆さん丸出しで売り場の青年に着信音を変えてもらったりしています。まじで迷惑なババーだな、とは言いません。

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夜、ひとりで近所を散歩します。今日は初めて父に紙パンツを履いてもらえた。尿が自然と漏れてしまうのに紙パンツを拒否していたそう、それでも寝ると言う父に、心配やけん念のため履いとってと言うと素直に履いています。たっぷりとお喋りをして、母もわけのわからないことを色々言っていたっけ。父から「お前、遺産はいくら欲しいか」と言われて、「いらん」と言うと「いらんって言ったら、行って返って面倒になる」と言うのでコンビニまで歩いて「どうせ大した額じゃないだろうに、何であんなこと言うのかな」と考えた末に、母50%、残りを弟と私で2対1がベストだな、そう決めます。私はもう嫁に出た身だから。

 

TPに電話。思ったよりも長々と私の家族のことをズルズル喋ってしまう。すまん。ま、でもそんな長くないけん、勘弁してくれよ。