たらい回し、ナイアガラ・フォールズ

早起きして、TPは都庁へ国際免許証の取得へ、私は掃除洗濯ブッキング・ドットコムで数日分のホテル予約とシャーロットタウンへの航空券の予約。戻ってきたTPと荷造りの最終チェックをして、冷蔵庫にあったキュウリの浅漬け4本を立て続けに丸かじりして、いよいよ出発です。

行きの電車でTPが「空港からナイアガラまでのバスさあ、要予約って書いてある」とか言っています。乗車時間は2時間、料金は片道100ドル、へ?ふたりで約2万円近くかかるってこと?そんな恐怖を抱えたまま、羽田空港で10分100円のパソコンで検索と予約をしようとしてみるものの英語のホームページで正式な都市名の選択もわけがわからずに断念、空港で円をカナダドルに両替して(1ドル95円!円安!)とりあえず飛行機に乗り込みます。

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チェックインでバラバラになっていた席もエアカナダのカウンターでTPと隣同士に変更してもらえました。

食べる女 [DVD]

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機内で観る映画は、キョンキョンがちゃんとおばちゃんを演じていてうっとりしますが、物語の何かが変、台詞が変なのか、出てくる男性がおもちゃにされているからか。長時間の飛行機でパニックにならない方法、この飛行機は永遠に到着しない、私は宇宙に放り出された人類で、このままここで永遠に暮らすんだと思い込むこと。 

コーヒーが冷めないうちに

コーヒーが冷めないうちに

 

永遠にどこにもたどり着かない機内ならこんな映画も観られちゃいます。少し泣いてみたりします。

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寝たり起きたりを繰り返しながら、夜食にカップ麺が出るというので楽しみにしていたところお湯を注いで20分置いたような麺、箸でつかむことも出来ないほどの柔らかい麺。少ないスープだけ、ちゅーっと飲んでみます。

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どこにも着かない機内でまた眠っていると、朝ごはんで起こされます。オムレツかおかゆかと聞かれてはっきりとオムレツと答えたけれどおかゆを渡されます。結構美味しい。

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13時間、いえ14時間ほど経ったのでしょうか。どこへ行くのかも忘れた頃に飛行機はトロント・ピアソン国際空港に到着しました。カナダは夕方。時計を12時間だか13時間だか戻したので、私たちには二度めの夕方。今日はナイアガラの滝の近くに安宿を予約しているから、ナイアガラ行きエアバスのカウンターへ。アジア系の女性から「予約してない?じゃあバスは無い。あっても5時間後」と冷たく追い払われそうなところを食い下がって、それではどうすれば?5時間待った方がいいですかと尋ねると、空港のビルの端っこにグレイハウンドバスがあるからそこに行きなさいとのこと。グレイハウンドのカウンターに行ってみると職員は誰もいません。階段を上がって空港のインフォメーションに行って「エアバスは予約でいっぱい、グレイハウンドバスには誰もいない」と伝えると「トイレに行ってるだけ、待っていなさい」また階段を降りて、じーっと良い子で係のひとが戻ってくるのを待ちます。10分ほどして戻ってきた女性に「エアバスは予約でいっぱい、ナイアガラに行くには」と尋ねると「グレイハウンドのバスは今日は無い。明日ならある」と言われて絶望しそうになります。「じゃあせめて街まで出て、そこからナイアガラに行くには」と聞くと「それはわからない。メガバスに聞いて。ここのビルの3階」言われた場所にはメガバスのカウンターが無く、また空港のインフォメーションへ。「エアバスもグレイハウンドバスもメガバスも無い」と言うと「ならタクシーね。でも高いわよ〜」すっかり日は落ちて、もう夜です。

これくらいのたらい回し、今までだって経験ある。TPと話し合います。予約したホテルを捨てて電車で20分くらいのトロントの中心街まで出て新たにホテルを探すか、5時間待ってエアバスに乗るか。よく考えて、冷静になって、もう一度エアバスのカウンターへ行くことに。今度は別の係のひとが座っています。インド系のおじさん。今夜の宿の予約票、明日のシャーロットタウン行きの航空券の予約票を見せながら、ナイアガラまで行きたいこと、明日にはこの空港に戻ってきたいことを伝えると「パーフェクト。わかった。ちょっと待っててね、大丈夫。あそこのソファーに座ってて」とゆっくりとわかりやすく説明してくれます。どうやらエアバスのキャンセルを調べてくれているよう。指定されたソファーでTPとふたりじっと良い子で待ちます。その間にもじゃんじゃんやって来る旅行者、誰もが予約したエアバスの乗車券を手に係員に誘導されてバスに乗り込んで行きます。しばらくするとインド系のおじさんが駆けてきて「エアバスの席が取れた」と2人で往復238ドルだかをカードで払って、あわててバスに乗せてくれ、運転手さんにも私たちが予約したホテルの住所を伝えてくれています。「ご親切に、本当にありがとうございます」ちゃんと目を見てお礼を言うと、インド系ならではの首をカクっと横に傾ける仕草で応えてくれます。

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満員のエアバスは、ナイアガラ・フォールズという街まで2時間、ぐったりとした旅行者たちを乗せて走ります。途中の駐車場で、別のバスに乗り換えているひとたちもいます。やがて高台のいかにも滝がありそうな場所、光まばゆいカジノの看板、ヒルトンとかマリオットとかハイアットみたいな高級ホテルでひとり、またひとりと乗客を降ろして、私たちが降りるのは裏路地の格安ホテル。最後の乗客までバスの運転手さんはちゃんと送り届けてくれました。時計は夜の9時近い時間を指しています。

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カウンターで75ドル支払って埃っぽい廊下、ガタピシしたエレベーター、ギシギシした通路を通って部屋へ。着いた〜

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荷物を置いて外に出てみます。受付で地図をもらって、ホテルからは徒歩10分ほどでナイアガラの滝へ行けるそう。そしてカナダでは、ビールやワインは専用の酒屋でしか手に入らないらしい。そして販売時間も決まっているらしい。まずは酒屋で缶ビールを買って、それほど食欲ないけれど何か食べようと店を探します。夜9時過ぎ、どんどん店が閉まって行きます。24時間営業のハンバーガー屋で、地元のヤンキーたちにチラッと見られながら片隅で晩ごはんを食べます。税込み8ドルと6ドルのコンボ。食べきれないポテトを手に持って帰ろうとすると、中南米系の店員の男の子が、持って帰るの?それなら箱に入れようか、そう言ってお持ち帰り用の紙箱に移し替えてくれます。じーん。

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何だかこの国には優しいひとが多いよう。「インド人のおじさんに出会えて良かったね。もしアジア系の女性やったら5時間後・・・」どうやらナイアガラの滝はシーズンオフ、ひとの通りも少なく5時間後だったらどんなに心細かったでしょう。「機内で観た映画さあ、おじさんが撮ったような映画やったね」とTPが言うので「まさにそう!」何かが変だと思ったけど、本当におじさんぽい映画だった。我が意を得たりとはこのこと。ひと氣の少ない大通りを歩いて宿に戻りましょう。

突然、横付けして止まる車、後部座席の窓が空いて、アメリカ人ぽいお婆さんが顔を出します。「ナイナフォー、ナイナフォー」みたいなことを、何度も繰り返しています。すみません、私は英語が得意では無くてと言ってみてもナイナフォーを繰り返しています。TPが「わかった、ナイアガラ・フォールズやない?」と言うと「そう!ナイアガラ・フォールズ」。それなら、この先の信号を右ですと教えると、にっこり喜んでくれるお婆さん。発進した車から身を乗り出すように手を降って去って行きます。「門ちゃん、今着いたばっかりの街で、行ったことも無いところを、よく堂々と教えられるね」「うん。確信があったっちゃん。多分あっち。あのお婆さんも喜んどったね」

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道を堂々と教えた手前、もう身体はくたびれてぐったりしているけれど、滝がありそうな通りを歩いて、夜のナイアガラ・フォールズを見てみることに。

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ドドドーっと滝が落ちる音、遠くに立ち上がる水しぶきの方向へ進んでみると、本当にナイアガラ・フォールズがそこにありました。ガイドブックで勉強していたTPが「手前がアメリカ滝、奥がカナダ滝って」と教えてくれます。え?これ?と思うくらい小さく見えるけれど、明日はもっと滝の近くまで行ってみましょう。ナイアガラって滝がふたつあることも知らんかったわ。それにしても、ひとまずナイアガラ・フォールズにたどり着けたし、手提げには缶ビールもあるし、ホテルには喫煙所もあるし、初日としては大成功でしょう。何とか着いた、ナイアガラ・フォールズ。エアバスのチケットを取ってくれたインド人のおじさんにも、道を聞いてくれた白人のお婆さんにもお礼を言って眠ります。