お腹タプタプ

起きると昼過ぎ、そしてTPは仕事に行っています。昨日の夜、白いごはんを食べたくて作ったおむすびと、大根の味噌汁を食べて出勤した様子。旅の隊長としてTPはよく計画を立ててくれました、本当にありがとうと思いながらまた二度寝します。

 

山のように作業を残して有給休暇へと突入したので、恐ろしくてパソコンを開くこともできません。晩ごはんは、豚とネギの鍋、ほうれん草のクタクタ煮スープ。多分、いえきっと。くたびれ過ぎているんでしょう、そして時差ボケ&元々のボケのせいでしょう。間違えて汁物を2つ作ってしまいました。

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どうしてこんなことになったんでしょう。お陰でお腹はタプタプです。

 

重なって膨らむ

映画を観たり、途中で止めたり、トイレに行ったり、眠ったり。3度めのトイレで、トイレ待ちしている陽氣な白人女性が「エクササイズよ」と腕を振り上げたり足踏みしたりしているので一緒になって踊ってみます。「カナダからいらしたんですか?」と尋ねると、トロント出身で日本に旅行に行くらしい。「あなた、日本人?」と言うのではいと答えると「でもあなたの顔、日本人じゃないみたい。ミックスじゃなくて本当の日本人?」とのこと。私はどこの国のひとに見えるんだろう、フランス人とかだったらいいなとか思います。

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行きの機内食でおいしかったので「おかゆ」を注文するとオムレツが出てきました。もう絶対に、思った通りのものは出てこないんだ、エアカナダでは。

 

絶対にどこにもたどり着かないと思っていた飛行機は、ちゃんと羽田に到着しました。リムジンバスに乗って、地下鉄に乗って、いつものアパートに戻ってきます。ただいま、いつものアパート!

 

今回の旅行では何度もTPと「日本に帰ったら、もう無駄遣いせんとこう」などと自分たちに言い聞かせたっけ。もう、どこに行くにも水道水を水筒に入れて持ち歩くし、無駄な外食も控えるでしょう。特別おいしいものとか、どうしても食べたいもの以外はなるべく家で食べるようにするでしょう。そして少しでも旅行のためにお金を使うようにするでしょう。こうして少しずつ感じたことや得たものが積み重なって、少しずつ旅は膨らんで行きます。

トロント発

もう今日はいったい何日だろう。でもやっぱり、日本に帰らないわけにはいかないから、早起きして宿をチェックアウトします。無人のカウンターに鍵を置いておくだけ、色々と情報を教えてくれたKさんに「ワーホリ、楽しんでくださいね」とメッセージを添えて。

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昨日下見しておいた、セントローレンスマーケットで朝ごはんを食べます。「ベーコンサンドイッチが有名」とTPが言うので、それらしきものがある店で。コーヒーまずっ。カナダにきてこんなに香りのないコーヒーを飲んだのは初めて、これならティム・ホートンズの方がいいわ!

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まだ朝なので、観光客の少ない市場をウロウロ歩きます。今回はあまり買い物をしなかったな、赤毛のアンのマグカップと、たまたま見つけたリュックだけ。

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カナダの人参は、ほぼゴボウの太さだということを知って、

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パンを買って持って帰ろうか悩んだけれどカチカチになるだろうから諦めて、職場へのお土産にチョコやクッキーなどを買って。あ、私、働いてたんだった。戻ったら仕事があるんだった。忘れとったわ、今の今まで。

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TPが「しまった!」どうやら、セントローレンスマーケット名物のベーコンサンドイッチは、朝食を食べたカフェじゃなくてマーケット内のテイクアウトの方だったらしい。「中国の団体が、みんな食べてる。しまった」私はTPがあまりにも可愛そうで「そっちも食べたら?もう来られんよ」と言ってみますが、さすがにお腹いっぱいだそう。外に出て、朝食のカフェの写真を取っていたところ、テイクアウトの店とカフェの店の名前は全く同じ、つまりTPが食べたベーコンバーガーも、その有名店のベーコンが入っていたのだとわかって、二転三転して、とにかく良かったやん。

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さよなら、トロント

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昨日、下見しておいたしチケットも買っておいたので、空港行きの電車に乗ると、アナウンスも無く電車はスーッと走り出します。

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初日と、翌日のシャーロットタウン行きの飛行機、今日。もう3度めのトロント・ピアソン国際空港、勝手知ったる我が家。待合室になぜかスズメが入ってきてしまっています。出発を待つ間、生ビールを飲んでみます。隣りのテーブルでひとりで食事していた韓国人風の女の子が、スマホ片手に、もう食べ終わりそうなハンバーガーの最後の部分を床に落としてしまって呆然としています。生ビールについていた紙ナプキンを手渡してみると、じっと私の顔を見て、とてもうれしそうにお礼を言ってくれます。しばらくして、サンキューと言いながら小分けしたクッキーとチョコバーみたいなお菓子をくれます。私は、小さいことで交流できたことがうれしい。ありがとう!とお礼を言います。

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いつの間にか離陸した飛行機で、また機内食。ホットティーと頼んだらウィスキーが出てきたので飲みます。通路側には、日本からの団体旅行の女性。TPが「すみません、お手洗いに行くときに通していただくかも知れません、なるべく回数減らしますんで」と挨拶すると「ダメよ、膀胱炎なっちゃう」と快く席を立ってくれそうです。

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ぐうぐう眠ったり、起きたりを繰り返していると、またカップヌードルタイム。今度はちゃんとスープがありました。全部食べてみます。カナダ、本当に行ったんだろうか。嘘だったんじゃないだろうか。でも足元には確かに花柄のリュックがあるし、TPのリュックの中には私の使い古したリュックがある。座席上の荷物入れには、職場へのお土産もある。どこにもたどり着かない飛行機に永遠に乗っているんだと言い聞かせて、永遠と思える時間を過ごします。

目に焼き付ける

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新しい朝が来た。さあ、リュックの中身をベッドの上に置いて、水筒に水道水を汲んで、身軽になってトロントの街歩きです。TPは2〜3日に一度取り替えていたらしいTシャツの最後の一枚を着ているよう。私は毎晩洗濯しているTシャツを下に着て、長袖を着て、薄手のジャンパーを羽織ります。トロントっ子たちに人氣だというコーヒーショップで、もうセントが何が何やらで手のひらに乗せてレジの女の子に「大丈夫、問題ないわ」と取ってもらった小銭で買ったブラックコーヒーとクロワッサン、ベリーのスコーンを頼んだけれど出てきたチーズのスコーンで朝ごはんです。すぐ隣りの工事現場へは、キャベンディッシュのガソリンスタンドにもあったコンビニ、Tim Hortonsという店でテイクアウトしたコーヒーを6杯、働くひとが買って運んでいます。思い返すと、いくつもの工事現場に何杯もテイクアウトされて持ち込まれる「Tim Hortons」の赤い紙カップがあったわ!長距離バスが途中停車するガソリンスタンドにもティム・ホートンズがたくさんあったわ!飲んでみたい、ティム・ホートンズのコーヒー。

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まずは、旅行前にトロント留学していたHさんが教えてくれたローレンスマーケットへ。今日はマーケットはお休みだから、場所だけチェックしておいて明日の朝、また来ましょう。

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次はユニオン駅。明日の朝、空港に戻るための電車が出る場所を確かめておきましょう。この、前もって場所を確かめておくことがとても重要、TPとそう言い合います。絶対にわかりそうな場所でも、当日行ってみると迷ったことが何度もあるから。今回も、ユニオン駅から思ったよりも遠い場所に、空港行きの電車のホームはありました。チケットを買っておきます。

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どこからでも見えているトロントタワーは、上るのにたくさんお金がいるようだから、下から見上げるだけにします。少しくたびれたので、タワーのふもとの花壇に座って水を飲んだりしている間、TPはひとりで散策しています。一服していると、遠くの方にTPが見えたので手を振ってみますが氣づかないよう、キョロキョロしながら歩いているTPの全景を、こちらも遠くから見ます。戻ってきたTPが「ブルージェイズの球場があった」と興奮しています。川崎はこんな街で野球をしていたんだ、球場の近くまで行って、じーんとします。

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歩いて、カナダで大人氣のスポーツ、アイスホッケーの競技場の近くをウロウロします。TPは、本当は野球やアイスホッケーを見てみたかったと言います。今はシーズンオフだから見られないけれど、その国でしか見られないものを観たいといつも言っています。「オペラとか、クラシックコンサートとか、サウナとか。全部、行ってみて良かったろ?」私はどれも最初は尻込みするけれど実際に行ってみると、誘ってくれたTPよりも感激しているタイプ。

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私がどうしても行きたいと主張したトロント島へ、ひとり8ドルの往復チケットで片道わずか15分の船旅です。トロント島には3箇所の船着き場があって、30分ごとにどこかに到着するよう。その仕組がわからないので、係の男性に「これは3往復するってことですか?」と尋ねると、違うよ、どこかの場所に到着したら、そこから30分とか40分歩いて、別の港からフェリーに乗ってもいいし、ゆっくりして同じ港からフェリーに乗って戻ってもいいんだよ、というようなことを、近くにいたお客さんも加わってみんなで教えてくれます。その、みんなが教えてくれたということだけで、じーんとします。

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複雑な地形の地図をさっと見て、

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「コヨーテが生息しています。普段は危険じゃないけれど」みたいな看板を見て、

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対岸のトロントの街を眺めて、

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実際に暮らしているひとたちがいる住宅街を抜けて、

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反対側の海岸へ。

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氣がつけば、無我夢中になって石を拾っていました。そしていつの間にか、石オーディションなど開催していました。「これ、職場のひとへのお土産にしよう」と言うとTPは「門ちゃん、石で喜ぶひとはあんまりおらんよ」とのこと、そうかしら、でもそう言われたらそうかも知れない。拾った石をいくつも元に戻します。

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トロント島の猫、全然人間を怖がらないんですけど。

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明日はもう、日本に戻るための乗らねばならないんだから。トロントの街をできるだけたくさん、細かく目に焼き付けておこう。

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トロント島にも食べられそうな野草がいっぱい。おいしそう。

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フェリーを降りたときには、あれほどたくさんいた観光客も、いつの間にか散り散りに、人っ子一人いなくなってしまいました。そして自分たちがどこを歩いているのかもわからなくなります。誰もいない場所で、全力で歌を歌ってみたりします。「このまーま、どこかとーく、連れてってくれないーか」ブルーハーツじゃなくてハイロウズ?いや違ったっけ、クロマニヨンズでもなくて何やったっけ?とか言いながら。

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別の船着き場へ行こうとしていたけれど結局たどり着けずに、また元の船乗り場からフェリーに乗ってトロントの街に戻ります。忘れたくない。トロント島の時間、全て忘れて頭がすっからかんになった時間。

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ぼーっとしたまま、地下街のフードコートへ。私が「重さで値段が決まるみたいよ」と言ってもTPもぼーっとしているのか、重たそうなハンバーグなど取っています。ふたつで2500円くらいのランチ。

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またティム・ホートンズがあって、長蛇の列。コーヒー飲んでみたい。

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トロントの街を隅々まで目に焼き付けるために、ひたすら歩きまわります。

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歩きに歩いて、大きい公園へ。ついにティム・ホートンズでコーヒーを買って。Lサイズでも1.8ドルくらい。何て安いの!カナダの物価に打ちのめされつつあった心も、すっかり元氣を取り戻します。

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カナダのスズメは、ほっぺたに黒丸が無いタイプ。そして日本のスズメの1.5倍くらいの大きさ、ぷくぷくと太っています。

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後で買いに来るよ、カナダの酒屋に心でそう言って、また歩きます。トロント大学の「ブックショップ」という看板があったので入ってみると、大学のオリジナルグッズやリュックや洋服を売っているショップでした。悩みに悩んで、私はリュックを、TPは試着をしてTシャツを買っています。「これからは、Tシャツは旅行先で買おう。そしたらお土産にもなるし、思い出にもなるやん」TPはうれしそうに言っています。TPは足を痛めたのか湿布を買っています。「サロンシップ買おう」とか言って。いい間違えているような氣がするけれど、くたびれて訂正する力も無いので、とにかくトロントを目に焼き付ける方に余力を使って。

印象的なこと。トロントには若いホームレスが多い。大声で叫びながら歩く危ないひとも多い。朝すれ違った叫ぶひとが、夕方もまだ叫んでいるので、本当にご苦労さまと心でねぎらってみます。旅行者では知り得ない、格差みたいなものとか歪みみたいなものがあるのでしょうか。 

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今日もまた、本を閉じるように突然夜がやって来ました。国土が広くて、山が遠いから突然に夜になるようです。歩き疲れて「もう、適当におそうざい買って、部屋に戻ろう」

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この国に来てから、ほとんどスーパーとかデパート的なものには入っていなかった、一体何をしていたんだろう、ほとんど移動していたんだろうか。

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どのおそうざいを買って良いものかよくわからないので、クスクス的なものと、パスタ的なものを選んで買います。そしてお店のひとはじっと目を見て私たちの注文を理解しようとしてくれるのだから、やっぱり優しいひとが多い国だとあらためて感じます。

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私は酒屋でビールを買い足して(ビールは日本とあまり値段が変わらない、少し高いくらい)、TPはジュースを買って、部屋で乾杯です。

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私は、無印のリュックを通勤にも旅行にも愛用していたけれど、花柄のリュックを見つけてしまったからにはもう、一応悩みに悩んでみたものの、絶対に買うしかなくなりました。65ドル。使うリュックは常にひとつだけと何故か決めてしまっているので、「この使い古したリュックを捨てんといかんくなるし」と悩んでいると「それなら俺がもらおうか、そのリュック。街歩き用に」とTPが言ってくれたので、目がパチっと開いたようになって速攻で買ったリュック。早速、旅の荷物を全部入れ替えます。タグにはビンテージフラワーと書いてあります。そうだ、私はこのビンテージな感じの花柄に滅法弱いんだ。

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またしても、TPが寝落ちしたので、ひとりでエントランスで一服しがてら、宿の中を散策します。共用のキッチンを覗くと、昨日受け付けてくれたKさんと他の泊り客がいたので少し話します。そう言えば、昨日の夜中、パーカーにパンツいっちょの女のひとが突然、部屋のドアをたたいて「すみません・・・すみません・・・電話貸してください」と言われたんだった、「部屋の中に、鍵も携帯も、財布も、全部置いたままロックしちゃって、締め出されちゃったんです。Kさんに電話したくて」と言ってたっけ、あまりにも深夜のことで夢かと思っていたことを思い出してKさんに聞いてみると「そうだったんですか!あのひと、常習犯なんですよ。ヤバくない?部屋に来たんですか?」とのこと。結局はロビーに電話があるのでそこから寝ているKさんに電話があって、部屋の鍵を開けてあげたそう。色んなひとがいるな。キッチンにはKさんの他に20代の女性が2人、それぞれワーホリと語学留学の長期滞在中らしい。パスタなどゆでて食事しています。(そうだ、TPがワーキングホリデーのことをワーカーホリックとか言い間違えていたけれど、それを訂正するよりも余力はトロントを目に焼き付けることに使ったんだったっけ、明日にでも言い直してあげねば)

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キッチンを出て、ベッドに入って本を読もうとしたらもう、限界が訪れたことがわかったので、おとなしく電氣を消して、寝ました。バタンキューっと。

 

トロントの宿

明け方の4時頃でしょうか、目を覚ましたTPが腹減ったーと言っているので「机の上にクロワッサンあるよ」と言うと喜んで食べています。夕べ、念のため近所のコンビニで買っておいたのです。私も10時には眠ったけれど、まだ眠り足りないので二度寝します。

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ホテルの受付には、昨日とは違うおじさん。朝提供されるというコーヒーをもらいに行くと「これから入れるから、ちょっと待っててね」ととても優しい感じで言ってくれます。外で一服して、マグカップになみなみとコーヒーをもらって部屋に戻ります。

 

モントリオール。まだ夕べ到着して、ホテルを探して2時間ほどウロウロしただけの街。そして今日はトロントに移動する予定です。トロントからシャーロットタウンまでは飛行機、シャーロットタウンからトロントまではイシュマエルさんに送ってもらってから長距離バス、夜行列車、長距離バス、長距離バスで行きます。そのほとんどが直接つながってはいないから、例えば銀座に着いて東京駅から乗る、渋谷に到着して中野からバスに乗る、みたいな距離感で何とか移動できています。

最後のトロント行きのバスは、10時間もかかるチケットは見つけたけれど、5時間で行けるというメガバスの乗り場はまだ見つけていないから、朝8時にはチェックアウトを済ませて、昨日バスチケットをキャンセルしてくれた無愛想なお姉さんに食い下がって書いてもらった「Bonaventure」駅、本当かどうかもう一度バスディーボに行って、別のお姉さんからも無愛想に「Bonaventure」駅と言われて、本当かなと思いながら地下鉄で3駅。

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改札の案内板に「Mega Bus」の文字を見つけて小躍りします(本当だった、バスディーボのお姉さん、疑ってごめん)。それでも実際にメガバスの乗り場を見るまでは。でっかい駅ビルの周りをウロウロ、右往左往、まだひと氣の少ない都会を、アジア人夫婦がうろつきます。f:id:monna8888:20191006222503j:plain

ようやく見つけたメガバスは、半地下にあるところ、すでにたくさんのお客さんがロビーでおとなしくバスを待っています。受付で「トロント、大人2人、13時発、片道」と書いた紙を見せながら、13時発だと到着は8時、12時発だと到着は5時だと教わって、12時のバスチケットを買います。2枚で130ドルくらい。

さあ、これで最後の長距離移動もつながった。本当にトロントに戻れることがわかったので、モントリオールの街歩きです。12時までと時間が無いので、なぜか速歩きになります。

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時間が無いので、3回使うと元が取れる一日乗車券を買って(1枚8ドル)、地下鉄で、TPがどうしても食べたいと言うローストビーフサンドを食べに行きます。旅行者や地元のひとたちがすでに並んでいます。

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並びながらも、誰もがわくわくしていることが伝わります。店の中で食べるとまたチップであたふたするので、テイクアウトすることに。地元のおじさんの中には、テイクアウトでもカウンターにチップを置いているひともいます。

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商店街のベンチで食べるローストビーフサンドイッチは、あまりにも肉肉しいので、もっとマスタードをたくさんつけてもらえば良かったと悔しくなります。そして、外で食べているとミツバチがしつこく寄ってきて頭に止まったり、ローストビーフサンドイッチに止まってしまったりします。ハチをよけながら何とか食べ終えます。

またTPがどうしても食べたいと言うベーグルを探して、商店街から1〜2本入った通りをウロウロします。そうこうしているだけで、もう11時近くになっています。歩けども歩けどもベーグル屋が見つからないので、TPはベーグル屋をあきらめて、また地下鉄の駅へ。地図を見ていると犬の散歩をしているおじさんが「エニシングヘルプ?」と声をかけてくれ、曲がる通りを教わります。

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カナダはどこを歩いてもリスだらけだから私はもう飽きているけれど、TPは何とかリスの写真を撮ろうと毎回がんばっていました。ついに激写。「シャーッ」とか言いそうなリスが撮れて満足げ。

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地下鉄を降りて、モントリオールの大聖堂。はい、見ました。

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また地下鉄に乗ってメガバスの乗り場へ。カナダの地下鉄の車輪は、鉄じゃなくてタイヤなのだろうか。タイヤにしか見えないし、本当にタイヤに見える。

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メガバス乗り場へ戻ると、もうバスが到着していました。2階席もあるバスは、自由席で、ほぼ座席も埋まっているのであわてて座ります。お手洗いの横の席しか空いていないのでそこに座ります。

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2時間ほど走ると、またバスセンターで休憩「5分しか無いよ」とアナウンスされて、何人かがここで降り、何人かが乗ってきて、またバスは走り出します。

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5分休憩を終えて席に戻ると、私とTPが座っている窓にミツバチがいます。斜め前の女子大生たちが見つけてくれて、ひとりが運転手さんに声をかけに行ってくれて、乗降口を開けてもらって無事、ミツバチは飛び去ります。「ヒーズゴーン」ミツバチは男性なんだろうか。運転手さんに声をかけに行ってくれた女子大生と目が合ったので、サンキューの「サ」を、舌をちゃんと歯に挟む感じでサンキューと声に出るか出ないかの感じで伝えてみると、ウェルカムと答えてくれます。カナダでは、サンキューと言うとウェルカムと本当に返ってきますが、他の国ではシュアーとかモゴモゴっと別の言葉が返ってきているように思います。私たちが学校で習った英語は、カナダ英語が基本なんだろうか。

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そしてまた、バスの車内では、見知らぬひと同士が隣りの席のひとから話しかけられてしばらく会話をしています。女子大生も隣りのおばさんに「何の勉強してるの」とか話しかけられて、目を見て答えています。この、目を見て答えるということについて重要だとあらためて思ったりします。じーっと見る必要は無いけれど、ときには私もちゃんと目を見て答えたりしよう。

草原、森、草原、1本道の高速道路を抜けて、あっと言う間にバスは大都会へ吸い込まれます。

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カナダでは、カーテンをシャッと閉めるかのように日が落ちます。私もTPも、暗くなると小さい文字が見えづらくなっているので、あらかじめバスの中でメモに書き写していたとおり、Art Gallery of Ontarioが見えたらMacauo.Stを右、3つめのBatduoin.Stを左に行ったところの宿で空き部屋を尋ねます。トイレとバスは共同で1泊140ドル+タックスで158.2ドル!高い!もしかしたら戻りますと伝えて、今度はSpadiana.Stを右、College.Stを左に進みます。もう真っ暗で何が何やら、とにかくトロントは大都会なので、中心地は1泊2万円くらいするので、チャイナタウンの方へ。バックパッカーが集まる通りで2軒ほど尋ねてみても満室。大通りに戻って日本人と結婚した夫婦が営む宿、鍵のかかったフェンスのピンポンを押すと出てきたのはワーホリ中だという20代の女性、オーナーに電話してくれて「120+タックスなら空きがあります。トイレもシャワーも部屋にあります」とのことで、今日から2泊、こちらでお世話になることに。

 

ワーホリ中のKさんから地図をもらって、おすすめの食堂やビールを買える場所(でももう閉まっている)を教わって、窓の無い部屋にチェックインします。宿も決まったー。

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荷物を置いて、Kさんが教えてくれた中華料理屋へ。これまで、どこもかしこも1食1200円とか1500円とかだった物価が、チャイナタウンでは700円あたりで食べられそうです。行列もできる大人氣の店、テーブルでたくさんのひとが注文している黒酢あんかけみたいなかた焼きそばがおいしそうなので、列の後ろのアジア系の男の子たちに「エクスキューズミー」あのひとたちが食べているのはこのメニューのどれですか?と片言英語で尋ねたところ、ひとりの青年が「日本語でも大丈夫ですよ」と言うので驚きます。どうやら、地元のトロント大学に通っているようで、韓国や中国の留学生たちと評判が良い店にみんなで来たらしい、残念ながら中国人の男の子もメニューのどれが黒酢あんかけかた焼きそばなのかわからないとのことでしたが、日本人の男の子の笑顔がとても爽やかでうれしくなります。声をかけて良かった。

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カナダに来て、色んなひとたちに声をかけたり、かけられたりしているけれど、全部が良かった。これまでの旅行と違うところは、声をかける前に一拍、よしっと勇氣を入れる瞬間が薄らいで、自然と尋ねたり話しかけられたりしています。これはカナダだからか、それとも自分たちの経験値がわずかばかり上がってきているのかはわかりません。

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チャイナタウンには、酔っ払った危ない感じのひともウロウロしています。行列を勝手に抜けて入って、ひとのテーブルのものをタダ食いしようとしている危ない男が、中国系の店主から追い出されています。安くておいしいものを食べて、そろそろ夜の9時頃。少し歩いて宿に戻りましょう。バックパッカー街のような飲み屋街のような通りを通って、酒屋さんが開いていたので入ります。ビールはありますかと尋ねると、ここはワインだけ、でもこの通りを右に行ったところの何とかブリュワーならビールが買えるよと教えてくれます。お礼を行って店を出るときに「小さい店だから氣をつけて」と言ってもらって、その何とかブリュワーで、地ビールだという缶ビールをゲットします。「お酒があれば天然色、お酒がなければ白黒」

大通りでは、大声で喧嘩しているカップルがいます。路上でゴミと一体化して寝ているひともいます。歩いているとまた別の男性がフードをかぶって路上で寝ています。プリンスエドワード島では日本の12月くらいに寒かった氣温も、トロントでは10月の後半くらいの心地よさ。

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最初に到着したときよりも、少し街歩きをして戻ってきた部屋は、空氣が淀んで感じます。どうやらトロントに流れ着いた日本人留学生やらバックパッカー、ワーホリのひとたちが長期滞在している宿のよう。玄関で靴を脱いで、共用のサンダルに履き替えます。靴の臭い、他人の足の臭い。

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缶ビールを開けて、TPと乾杯します。私はプリンスエドワード島で買った、赤毛のアンに出てくる水差しのようなマグカップで。TPは今日もシャワーを浴びずに眠ってしまいます。(いったい、この旅で何度寝落ちしているんだろう、このひとは)きっとまた朝の4時頃に目を覚まして6時頃にシャワーを浴びるんだろう、それがカナダでのTPのリズムなんだろう。私はトロントで連泊できる宿に入れたことに感謝しながら、コクコクとビールを飲みます。

宿のエントランスで一服していると、日本人の男の子が日本人の女の子を隠すように連れ込んで行きました。こんばんは、と声をかけると、ちょこっと頭を下げて通り過ぎます。鍵のかかったフェンスの外の通りでは、日本よりも街灯の光量が少ない道を、仕事終わりのひとや学生らしきひと、ベビーカーを押すひと、色んな皮膚の色の色んな年代のひとたちが通り過ぎています。そして、ものすごくアジア人が多い街のようです。

 

城壁の外

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寝ては起きて、寝ては起きての長距離列車もようやくケベックに到着しました。ハーメルンのひとたちは、出会ったばかりなのに抱き合って眠ったりしていましたが、ケベックで降りるひとと残るひとに別れて散り散りになって行きます。行きずりのひとたち。明け方、車掌さんがあと10分で到着するとTPを起こしに来てくれたそう。私はポケットに入れておいたカメラを落としたと慌てると、TPはしばらく探した後で、そうだ夜中に拾ったんやったとカバンからカメラを出してくれます。疲れがたまっているのでしょうか。

誰もが眠たそうな駅では、日本人女性がひとり、あれ?日本人ですか、と少しだけ立ち話しします。彼女はワーホリでハリファクスに来ているそう。ケベックからモントリオールに行くところまでは同じです。移動手段が違うので、またお会いするかも知れませんね〜と手を振って別れます。

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モンクトンからVIA鉄道に乗って到着する方のケベックは、郊外のサントフォア駅という駅、ここから市バスに乗ってダウンタウンに向かいます。運転手さんがフランス語なまりの英語で、途中で100番か108番に乗り換えなさいと教えてくれます。それにしてもこの国はナイアガラ・フォールズも、モンクトン行きも、ここでも必ずバスを乗り換えさせるんだな。バスの案内表示も一氣にフランス語だけになりました。

ダウンタウンったってどこで降りればいいとかいな?何となく城壁が見えてきて、高速道路が見えたので地図を凝視しながら適当な駅で降りてみると、白髪の女性が声をかけてくれました。パレ駅に行きたいと言うと、駅舎の方向を教えてくれます。

荘厳な駅の中、静かにパレ駅からの電車を待つひとたち、お年寄りが多いよう。バスのマークが見えたので行ってみると、モントリオール駅までのバスチケットも買えることがわかりました。ここはフランス語兼なので「モントリオール」と言っても通じずに(本当は通じているかも知れないけれど面倒くさそうに)紙に書いてとメモを渡されたので、モントリオールのスペルと、Adult✕2、OneWayと書いて出すと大きく頷き、一枚60ドルくらいのチケットを発券してくれました。4番乗り場から昼の12時発。まだ朝の7時台だから、昼までケベックシティを散策だ!

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評判の良い店で朝食、一番安いパリジャンコンボ、パンはクロワッサンを選んだつもりがフランスパンとクロワッサンが2つずつ出てきてしまってお腹いっぱい。広い店内で列車移動で疲れた身体を温めます。

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ケベックの中心地、城壁に囲まれた街。まだ観光客はほとんどおらず、誰もいない観光地をTPとウロウロ、ぶらぶら、ぼんやりとキーンを履いて歩き続けます。立ち止まると寒いので、日向を目指して。丘の上に上がると、港が見えます。

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カナダのゴミ袋は巾着状になっていてあまりにもかわいいので写真を撮ります。

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城壁の下に降りて、また歩きます。カナダのひとたちは園芸が好きなんでしょうか。あちらこちらに鉢植えがあります。f:id:monna8888:20191005223904j:plain

8時を過ぎると、ようやく観光客たちが街に出てきます。

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もうそろそろハロウィン、街のあちこちにカボチャがどーんと置いてあります。

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ふと、城壁の周りを歩いてみたくなります。TPも付き合うと言うので、城壁に沿って海沿いを歩いてみます。

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城壁の外は、海。海沿いを歩くと一般の住宅。窓辺に立てかけてあるマリア様の像の水色に目を引かれます。

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高い城壁の内部に戻る道は2〜3本しか無いのかしら?木の階段があったので上がってみます。列車で眠れなかったというTPは無口で灰色の顔になっています。長い長い階段を、休み休み上がります。欧米人はジョギング姿でダンプカーのように駆け上がって行きます。馬力が違うんだろうか。

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木の階段を上がると、思いがけず芝生の広場に出ました。ガイドブックの地図には「戦場公園」とあります。寝不足と疲労で灰色のTPは、氣持ちが悪くなったとベンチに寝転んでしまいました。それを見て通り過ぎるひとがニコッとしてくれます。

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一体こんなところで私たちは何をしているんだろう?今日は何日め?よくわからなくなってきます。

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古いレストランで11時からランチを食べられるそうなので、開店を待って10分前に並びます。アメリカ人夫婦が「あなたたちはラインの最後?」と聞くので「いいえ、先頭です。店は11時開店」と答えます。

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よくわからないけれど1675年がどうこうとか書いてある看板、読んでみたい。

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開店と同時に通された店内、外のメニューで決めていた食前酒、ポークの辛子ソース(門)と、ミートパイ(TP)、デザートを選びます。

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素朴で優しい味。お会計のとき、店のひとが「インクルード、サービス」どうやらサービス料込だからチップは要らないと教えてくれます。店を出ると、早朝のサントフォア駅で立ち話しをした日本人女性がいたのでまた立ち話しします。ケベック在住の友人オススメの店で、待ち合わせをしているんだそう。「もしかしたらモントリオールで」とまた手を振って別れます。

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パレ駅に戻って、トイレを済ませて長距離バスに乗り込みます。

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やっと雨の無い日になりました。3時間から4時間、ゆったりしたシートでぐうぐう眠って到着した街、モントリオールは都会でした。到着したバスセンター(バスディーボ)で、明日のトロント行きのバスチケットを買います。2枚で189.51ドルを払ってチケットを見ると、到着まで10時間かかることになっています。乗り換えが1回あるそう。窓口で「このガイドブックには、5時間で行けると書いてあります」と地球の歩き方をかかげると、このバスディーボから出るバスは直行でも8時間かかる。ここから3駅離れたところの「メガバス」に行きなさい、このチケットはキャンセルする?と聞いてくれたので、そのよくわからない駅でチケットを買うことにして、ここではキャンセル手続きを済ませます。

写真を撮るのも忘れて、宿探しです。あっちもこっちも満室の張り紙、空き部屋があっても140ドル以上。さあ、今日からは宿の予約の無い旅、どうしましょう。すぐに日は暮れてしまいます。140ドルと言ったアジア系女性の宿に戻って、試しに120で交渉してみると負けてくれました。部屋に戻るなりTPは「明日からの旅程を調べよう」そう言って、ガイドブックを枕元で広げたまま、眠り込んでしまいます。・・・また?

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私は、今日も洗濯を済ませて、シャワーを浴びて、街にビールを買いに出かけます。宿内は禁煙なのでホテル前で一服します。

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TPは今日も夢の中。ひと休みしたらバスセンターのひとが教えてくれた、地下鉄で3駅離れたBonaventureとやらに行ってみようと言っていたけれど今日は無理そうだな。宿のひともメガバスの停留所は知らないと言っていたし。ここは本当にモントリオールなんでしょうか。夜、もう一度外に出て一服しながら、お向かいの5つ星ホテルを眺めます。大型の観光バスが、何台も止まっています。 

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)

 

リュックに詰めていたカナダ人作家の本を取り出して読みます。図書館で借りた本。分厚いので旅の最後まで持つでしょう。ケベックモントリオールトロントと行ったことのある街が出てきます。実感があるようで無いけれど、やっぱり本当にカナダにいるんだと前のめりで読んでみます。

ハーメルンの笛吹き

夕べ、TPはチェックインしてから眠りっぱなし、私も夜10時には寝たので朝の5時頃にふたりとも本格的に起き出してしまいます。TPは夜中にも起きて、松本侑子の本を読んだそう。ここまで来られた過程、同じ宿にサンダーバードみたいな夫婦がいること、星がすごかったことなどあれこれ小声でおしゃべりしながら、もういっそのこと朝だから散歩に出ましょう。誰ともすれ違わない遊歩道を海の方に向かって歩いて、野生のリンゴの実が落ちているのを見て、拾って食べようか少し悩んだけれど、ほとんど腐っているのであきらめます。

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海に行けそうだけれど、熊よけみたいな電線が張り巡らされているので、ここで熊に襲われたら旅行が続けられないからと、海まで歩くのは自粛します。

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宿の近くまで戻って、

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四つ角にあるモンゴメリーさん夫婦のお墓にもう一度ご挨拶して、

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モンゴメリーさんの銅像のある公園へ行ってみます。ひとっこひとりいない村。

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宿に戻って、8時から開いているという朝食バフェッ、やっぱりひとっこひとりいません。置いてあるソーセージやパン、玉子などを皿に取って、食べ始めます。

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やがて宿のオーナーだか誰だか女性が突然現れて、ハーイ、エブリシングオーケー?と声をかけてくれます。ナイアガラ・フォールズでも、シャーロットタウンでも、ケチャップとマスタードが必ずテーブルにあったので、マスタードはありますか?と尋ねると、無い、とのこと。びっくり。ケチャップとマスタードはカナダの必須アイテムなのかと思っとった。ついでに、ワインオープナーはありますか?と聞くと、あるとのことで持ってきてくれました。結局誰も食堂に降りて来ず、TPとふたりっきりで朝食を食べ終わって、部屋に戻って、ワインのコルクを開けて、水筒とペットボトルに移し替えます。これでPEI産のワインがやっと飲めます。TPは朝シャワーを浴びています。昨日も一昨日も、旅の隊長の任務を全うすることで精根尽き果てたのか、TPは連続して朝シャワーです。

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今日はまたシャーロットタウンまで戻って、モンクトン行きのバスに乗らねばなりません。チェックアウトを済ませて、せっかくなので、海まで車を走らせます。雨。(毎日雨!)

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シーズン中なら有料だという国立公園、シーズンオフだから誰も係のひとがおらず、どこが入り口かわからずに道に迷っているうちに、ポンッと海に出ました。傘をさして海岸まで歩きます。赤い土の海辺、これこそが赤毛のアンの世界、映画の世界、本の世界、雨に打たれたってどうってことないほど、胸いっぱいに空氣を吸い込みます。観光バスでやってきた日本人の女性たちともすれ違って挨拶します。何となく、ロブスターの店からずっと同じコースのような顔ぶれ、彼女たちは一体どこに泊まったんだろう?

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TPは昨日、チェックインした直後にこの辺りでたった一軒のコンビニにひとりで出かけたそう、私は時間差でワインオープナーはあるかと尋ねたそのコンビニのお爺さんが経営するガソリンスタンドで、ガソリンを入れることに。「あのお爺さんが、この辺は何も無いだろうって声かけてくれて、イエスって言って、少し話した」とのこと。お爺さんが優しいから、もう一度寄ってみたくて。ガソリンタンクの開け方がわからず、同じお爺さんに尋ねてみると「おかしいなあ、プッシュするだけで開くはずだけど」と言うので、本当にガソリンを入れるところをプッシュするとカパッとタンクの入り口が開いたので3人で大笑いします。無事にガソリンを入れ終えて、同じ道を通って、シャーロットタウンまで戻ります。約30分。昨日はTPの運転が恐ろしすぎて目を閉じていた道を、今日はゆっくりと眺めながら戻ります。

11時。約束の12時10分よりも早めにシャーロットタウンのPEIカーレンタルに戻ると、イシュマエルさんの相棒の男性が「ハーイ!おかえり。キャベンディッシュはどうだった?」と声をかけてくれ「君たちはバス停まで行くんだろう?」と言うので、この辺りでランチして、12時10分にまた戻りますと伝えます。f:id:monna8888:20191005000203j:plain

私はスープ、TPはオムレツセット。シャーロットタウンは海辺の街、雨も上がってキラキラとしています。日本なら20分ほどで食べ終わりそうなお店でも、出てくるまでのんびり、食事やお茶しているひとたちものんびり、この国のチップを研究しているTPは、地元のひとが食べ終えた後に「あのおお爺さんと婆さん、テーブルにチップを置いて帰った。10%でいいかな」と2ドル置いてカードでお会計しています。席を立ってお爺さんお婆さんが置いていたチップを見てみると、25セントが2枚。食事していたはずなので、50セントのチップではガイドブックにある10%〜15%のチップには足りないけれど、チップって本当に難しいとあらためて思います。

ランチを終えてPEIカーレンタルに戻ると、イシュマエルがいました。おかげさまで戻りました、とお礼を言って、本当にモンクトン行きのバス会社まで送ってもらうことに。レンタカー屋さんには、車を借りるひとだけではなく、やたらと親しそうに入ってくるひとたち、どかっとソファーに座って楽しそうにしているひとたちがいます。イシュマエルさんの相棒(旦那さんかな?)がTPのことを「彼は本当に日本人?トルコっぽいね」と言うので、濃いめの顔のTP、西郷隆盛銅像っぽい顔のことを思って「西の方では伝統的なかも」などと答えます。

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イシュマエルさんが、さあ時間だからバス会社まで行きましょう、ただし運転は彼ね。そう言うのでえーっ!と驚くとみんなで大笑い、せっかくキャベンディッシュの往復でようやく慣れない海外での左ハンドルの役目を終えたと安心していたTPは、また運転させられる羽目になって不思議そうに鍵を受け取っています。「お店に来ていたひとたちは、お客さん?それともお友達?」「みんな友達よ」プリンスエドワード島でレンタカー屋を営むイシュマエルさんたち、仕事中にお友達がやってきては、座っておしゃべりしたりしている風景、ああいう風に余裕のある仕事をしたい、そんなことを思います。

地下駐車場から、TPがイシュマエルさんの赤い車の運転席に向かって、助手席と後部座席の鍵が開かずにあたふたするのをイシュマエルさんと私は声を上げて笑いながら、駐車場から出るときにゲートで「ヘルプボタンを押して、PEIカーレンタルって言って」と言うのでTPはヘルプボタンを押して「ピー・アイ・イーカーレンタル」と言われるがままに間違っているけれど言っています。無事にゲートも開いて、バス会社まで約2キロの道。「ライト」「レフト」日本から来た左ハンドルに慣れない運転、イシュマエルさんも怖いだろうに、まるであらかじめ覚悟を決めているかのように穏やかな声、そしてTPにもう一度シャーロットタウンを運転させて、思い出にしてほしいと願っているかのように、静かに「レフト」「ライト」と道案内をしてくれます。私もじーっと黙って後部座席に座っています。

やがてバスセンターに到着して。緊張して無口になっていたTPが車を停車。「いい経験でした」「イエス!」イシュマエルさんと私は大笑い、TPは安堵の笑い。「本当にありがとうございます」イシュマエルさんと握手して別れます。

バスケ部みたいな少年たちや、用事がありそうなお婆さん、おじさん、ギターを抱えた少女、彼女のともだちで一緒に旅行するのかサボテンを鉢ごと持ってきている少女。バス会社の待合室には色んなひとたちが集まってきます。初対面のはずなのに、何となくおしゃべりが始まっているのが不思議。「私は37歳でおばあちゃんになったのよ」とか「どこに行くの」とか、見知らぬ人同士でずーーっとおしゃべりしています。午後1時、バスにみんなで乗り込みます。

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モンクトンまでは3〜4時間ほど。イシュマエルさんたち、不思議なひとたちだったな、親切なだけじゃなくてよく笑うひとたちだった。生まれる前から知り合いだったかのように。

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バスの運転手さんがチケットのチェックをします。QRコードを、スマホでピッと読み込んで回ります。「このバスはモンクトンまで直行ですか?」と尋ねると「途中で乗り換えだよ」と教えてくれて、少し慌てます。1時間半ほど走ると、ガソリンスタンドにバスは停まります。ここもキャベンディッシュのガソリンスタンド兼コンビニと同じTim Hortons。15分の乗り換え兼休憩時間、みんな、コーヒーを買って飲んでいます。私は灰皿があったので一服します。見知らぬひとに話しかけられてライターを貸したりします。

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地元のひとに乗り換えのバスを教えてもらって、新しいバスに乗って。色んな人種のひとたちが乗るバスはモンクトンに向けて走り出します。

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ぐうぐう眠っていたら、モンクトン駅にバスは到着しました。どういうわけか、ロブスターから朝のキャベンディッシュの海岸、むしろ初日のシャーロットタウンで泊まった宿から一緒の日本人のツアー客の女性たち、またここでも待合室で一緒になります。モンクトン発、ケベック行きの寝台列車に乗るのでしょう。

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カナダを紹介するらしい、日本のテレビクルーも来ています。シャーロットタウンでもすれ違ったひとたち。

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ふと不安になって、駅の係員のひとに、もしかしてケベックタイムゾーンが違います?と尋ねると、1時間戻すとのこと。聞いて良かった。

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きっと日本のツアー参加者の女性たちは、ちゃんとした寝台の個室なんだろうけれど、財布の紐をギューッと縛った個人旅行の日本人夫婦は、普通の座席です。車両は5割ほどが埋まっています。アナウンス無くスーッと発車する列車。やってきた女性車掌さんに、またチケットを見せてバーコードをピッとされます。TPが車内を冒険してきてくれ、食堂車があると教えてくれます。食堂車は、どう見ても初対面のひとたち同士がビールを飲んで盛り上がっています。私もビールを買ってみます。「2種類あるけどどっちがいい?」と聞かれて「わからない、どっちがおすすめ?」と答えると「わかんない。未成年だから」と店員さんに言われて呆然としていると「絶対にこっち。あっちはウェー」と舌を出して教えてくれたのは、後ろに並んでいたジプシー系の女性。彼女にお礼を言って無事ビールを買うことができます。TPはハンバーガーを買っています。まだ夜の6時。これからが長い。ケベックに到着するのは明日の早朝。もう一度、食堂車に行ってみると、さっきおすすめビールを教えてくれたジプシー系の女性もいて、その場のみんなが「そろそろスモーク!」スモーキングタイムだとにぎやかに、車両の乗降口に向かっています。私も、タバコを吸えるのならと一緒にくっついて行ってみると、彼らが手にしているタバコというのは、吸口も無いような紙で何かを巻いてひねってあるタイプのもの。これってもしかして。列車が停車してどーっと降りる陽氣な男女、みんな初対面らしい人たちのグループに混じって私も降りてみると、誰?みたいな声が聞こえてきて、車掌さんがあと2分よ!と声をかけてくれて、あわてて一服してまた電車に乗り込みます。後ろの方で「彼女はもう私の友達よ」などと聞こえてきます。この一団はどういう集まり?席に戻って、もう寝ているTPを起こして、ハーメルンの笛吹きみたいなのに着いていったら、何か不思議なひとたちやったと報告して、私も眠りに着きます。すぐに電氣も消えて。真っ暗な車内。前席の男のところに、ジプシー系の女性がやってきて、ふたりは抱き合って眠り始めました。あまり見ないようにしよう。寝たり起きたりしながら、TPも寝ているはずだけれど足を伸ばせないのが辛そうだから、別の空席に移って2席分を確保して眠ってみたりしながら、列車はケベックに向けて移動しています。他の乗客もみな、空いている席に移って2席分に寝転がっています。いつの間にか、お向かいの席にも知らない男のひとが寝ていてギョッとします。真夜中、窓の外を覗いてみると、どこまでも続く野原と、オリオン座がくっきりと見えています。寝坊しないように、持参した目覚まし時計を朝6時にかけて、何度も寝たり起きたりします。

そうさなあ、ワインオープナーは無いなあ

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真夜中に到着したホテルのカーテンを開けてみると、雨です。外の喫煙所で一服していると、カナダ人の女性が声をかけてくれます。「どこから来たの」日本と答えて少しお喋り。プリンスエドワード島には、妹を訪ねて車で2年に1回は来るの。でも今度から春に来ることにする、だって寒いんだもん、とのこと。私のつたない英語、途中で言葉に詰まっても「大丈夫、意味はわかるわよ、ノープロブレム」と励ましてくれるおばさん。私は夫とふたりで旅行に来たこと、8日間滞在すること、これからアンの村に行くけど、夫の運転は心配、だって左ハンドルだからとか言うと「わかるわー、あなたの国は左側通行で反対なのよね」と笑ってくれます。

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今日の宿は朝ごはん付き。ビュッフェのことをカナダのひとたちは「バフェッ」と発音しています。バフェッで、パンやら玉子やらウィンナーやらを取って、リンゴもあったので取って齧ってみます。ジューシー。

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他の観光客のひとたちも皆、空港近くのシャーロットタウンからプリンスエドワード島の端っこ、モンゴメリーさんのふるさと、キャベンディッシュに行くんだろうか。

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TPは、見知らぬおじさんから英語で使い方を教えてもらいながら、自分でワッフルを焼いています。食堂に集まってきたひとたちからは、日本語も聞こえてきます。どうやらツアーに参加している日本人の女性たちのよう。会話から、彼女たちが個人旅行で、ほぼ初対面なことがわかります。女のひとたちがプリンスエドワード島に憧れて、ひとりでツアーに参加するって素敵だなと思います。

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今日はここから車で30分ほどの、キャベンディッシュという赤毛のアンの村に行きたい、そして明日はまたシャーロットタウンに戻ってきてバスで3時間ほどのモンクトンまで行きたい。なぜなら今日の宿と、明日のモンクトン発ケベック行きの深夜列車を予約しているから。朝食を食べて、チェックアウトして、何の宛もなく歩き出す道。宿でもらった地図を見ながら歩いていると、ホーランド大学というレンガ造りの大学の向こうに、大きい虹が見えます。雨も上がったし、何とかなるさ。まずは街のインフォメーションを目指します。

インフォメーションで、係のひとに今夜のキャベンディッシュのホテルの予約票、明日の列車のチケットを見せながら、この近くのレンタカー屋さんと明日の長距離バスのバス停などを教わります。バスセンターにも電話してくれますが、誰も出ないとのこと「レンタカー屋で、この番号にかけてもらったらいいわよ」とメモをくれますが、本当にレンタカー屋さんが関係のないバス会社に電話してくれるんだろうか、そのことをまたレンタカー屋さんに私はつたない英語で伝えられるんだろうか。少し心配になりながら、PEIカーレンタルへ。デルタホテルの1階に、そのレンタカー屋さんはありました。

受付で、黒髪の中年女性がにっこりと迎えてくれて安心します。車を借りたいこと、ただキャベンディッシュから戻ってきてバスに乗れるかわからないことなどを伝えると「良かったらバス会社に電話しましょうか」と申し出てくれます。何度か電話してつながったところで「今私たちのところに来ている旅行客が、明日、バスに乗ってモンクトンに行きたいと言っているけれどバスの予約は必要?」などと私たちにもわかりやすいようにゆっくりとした英語で聞いてくれています。電話を切って、どうやらモンクトン行きのバスの予約は必要ないこと、出発は午後の1時、でもバス停がここから歩いて2キロのところにあることを教えてくれます。お礼を言うと、明日、12時10分にここに戻ってきて、バス停まで車で送って行くとまで言ってくれます。何てありがたい!遠慮せずにご厚意に甘えることにします。

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PEIカーレンタルの女性の名前は、イシュマエルさん。イシュマエルさんの相棒の男性が地下から車を出してきてくれ、簡単にキャベンディッシュまでの道も教わっていざ出発、しようとしても車はフォード、小さいコンパクトカーと言われたけれど日本人から考えると高級な自動車、左ハンドル、大きい車です。運転席のTPは、シートを前に出そうとボタンを押すとシートが上がってしまったり倒れてしまったりしています。サイドブレーキの外し方がどうしてもわからず、イシュマエルさんの相棒も去った後なのでまたPEIカーレンタルに戻ってイシュマエルさんを呼んできて、サイドブレーキの外し方を教わります。ギアの横のボタンを指でちょんと引っかけて上げるだけで外れるらしい。いよいよ出発。最初の道を右。ウィンカーを出すはずが、ワイパーがバタバタと動いているからヒヤヒヤのドライブの始まりです。

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ワイパーが動いたままのドライブ、本当に雨が降ってきてくれて、安心します。

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道路の標識で、TPはキャベンディッシュのCの文字に目をこらして、片道一車線の道を進んでいます。私は恐ろしくてたまらないけれど運転の邪魔をしないように、口も目も閉じています。20分ほど走ると、赤毛のアンの村っぽい景色になってきます。開けたところに車を停めて、地図を確認。予約した宿はまだ開いていないので、真ん前のインフォメーションセンターへ。村の地図をもらって、訪ねた方が良い場所と、この島名物のロブスター料理を食べられるレストランの場所、酒屋などを教わります。この村で作られたという紫色のカップが、赤毛のアンに出てくる水差しのような形で素敵だったので、自分へのお土産に買ってみます。30ドルプラス税。

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教わったロブスターの店へ。

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ひとり29ドルのランチコースを注文します。ミヤコ蝶々のようなお婆さんが、一品ずつ運んでくれては、どう?おいしい?と声をかけてくれます。

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奥の方には、日本人女性たちが10人ほど、ツアーで旅行しているようで、15分後に出発でーすなどと日本語が聞こえてきます。

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クラムチャウダーもおいしいけれど、次に出てきたサラダのドレッシングがめちゃめちゃおいしい。蝶々さんにドレッシングの材料を尋ねると、ワインビネガーだとすぐに教えてくれます。

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ムール貝が大量に出てきます。TP「ムール貝をこんなに大量に食べるの、人生で初めて」そもそも私もTPも、ムール貝自体をほとんど食べたことが無いんじゃないかしら。

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大量のサラダとムール貝を食べてしまうと、身の詰まったロブスターを入れる空きスペースが、ほとんど残っていないけれどこれが目的なんだからと無理やり胃にに詰め込みます。でもおいしい〜

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サラダとムール貝とロブスターでお腹いっぱいのところ、大きいデザートが出てきて、また無理やり詰め込みます。さすがの食いしん坊TPも、大量のフレンチフライポテトを「テイクアウトできますか」と尋ねて、持ち帰り用の紙パックをもらっています。それを見た別のテーブルの旅行者たちも、紙パックをもらっています。

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夕方4時には閉まるという酒屋で、ビールとワインを買ってみます。PEI産のワイン、おっといけない、プリンスエドワード島を略して、この島のひとたちはPEIと言うらしいし、あちこちにPEIの文字も出ています。「日本に帰って、どこに行ったのか聞かれたらPEI、あ、プリンスエドワード島ですって答えよう」などとTPが言っています。TPはこの旅でずっとキャベンディッシュのことをキャンベルディッシュと言っていますがそのことには触れずにおきます。

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インフォメーションセンターをキャベンディッシュの中心と考えると、海に向かって右端にロブスターと酒屋、中心に戻って少し左にグリーン・ゲイブルズ、つまり赤毛のアンの世界を再現した村があります。それにしても、村にはバスもないし、この距離を移動するには車を借りるしかなかった、TPありがとう、運転怖いとか言ったけど本当に助かったわ、そう言ってみたりします。

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入場料を払って入るグリーン・ゲイブルズには、1階にマシューの部屋と台所があります。マシューの帽子だ!

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わかった、あれがいちご水、アンがダイアナに誤って飲ませてしまったお酒!

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そして2階にはアンの部屋が・・・見た瞬間に、涙がぶわーっと吹き出て来ます。マシューが買ってくれた提灯袖の茶色いドレス、アンが提げていた絨毯生地のバッグ、ギルバートを叩きつけた黒板、マリラが用意してくれた実用的な普段着・・・どれもこれも本で読んだとおり、映画で見たとおり。アンがマリラとマシューに出会って本当に良かった、アンがこの窓から眺めた景色、物語とは思えないほど自分の思い出かのように血肉となって私を作り上げているもの、アンと一体化したかのように。マリラの部屋のブローチも、客間も、雇ったフランス少年の寝床も、全てが記憶のように胸に蘇ってきます。「連れてきて良かった〜。さっき、門と同じようにアンの部屋見て号泣しよった女のひとがおったよ。違う国から来てアンの部屋見て号泣する女がふたり」TPがそう言っています。

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恋人たちの小径も。

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おばけの森も。孫と娘に支えられるように歩くお婆さん、ひとりで物思いに耽っているひと、とにかく女性たちはうっとりと、誘われるように敷地内を自分の世界に入り込んで夢を見るような顔で歩いています。彼女たちに連れられてきたであろう男性たちは、あちこちのベンチに腰掛けてただ時間が過ぎるのを置物のようになって過ごしています。

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おばけの森を抜けると、そこにはモンゴメリーさんのお墓がありました。

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世界中のモンゴメリーファンのひとたちが、小さい贈り物を墓石の上に置いて行っています。小さくて、きっとモンゴメリーさんが喜ぶような小物たちを見ていると、胸がポーっと温かくなります。

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観光バスが去ってしまうと、ほとんど誰もおらず、私とTPだけになります。

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モンゴメリーさんが結婚式を挙げたという教会や

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野原の珍しい花を見て。

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ホテルのチェックインが、14時から17時の間だったので、ホテルに行ってみます。ぽっちゃりしたハスキーボイスの少女が受付をしてくれます。ずいぶん古い建物。傾いた廊下をギシギシ言わせて上がって、部屋に荷物だけ置いて、また出発です。f:id:monna8888:20191004044043j:plain

モンゴメリーさんの生家へ。「世界中で翻訳された本があるのよ」と受付のお婆さんが本棚を案内してくれます。私も何度も読んだ、赤い背表紙の文庫本もあります。モンゴメリーさんが作ったというスクラップブック、キレイな絵と小説の切り抜きが山程あります。

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この部屋でモンゴメリーさんが生まれたのか、じーんとしながら。

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また車に乗って、今度は輝く湖水へ。もう18時過ぎ。一旦ホテルに戻りましょう。帰ってみると外には鍵がかかっていて、受付は無人で電氣も消えています。

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無人のロビーを抜けて

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階段を上がってみたり、1階のロビーを探検してみたり。

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チェックインが14時から17時って、それを過ぎたひとたちは自分で外に張り出されている鍵を取って部屋に入るってことなんだ。つまりセキュリティ不要の宿なんだ。

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少し散歩してから部屋に戻るなり、慣れない運転でぐったりと寝付いてしまったTPを残して、テラスで一服しながら缶ビールを飲みます。宿に置いてあった松本侑子の本を広げてみると

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何とまあ。私たちがいるこの宿が、レイチェル・リンド夫人のモデルになった、モンゴメリーの親戚の家だと書いてあって、椅子から転げ落ちそうになります。

赤毛のアンへの旅〜秘められた愛と謎

赤毛のアンへの旅〜秘められた愛と謎

 

沈みゆく夕日を眺めながら、読み耽ります。 

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今朝見たばかりのホーランド大学、あそこにモンゴメリーさんが通っていたこと、世界中の文学の引用が赤毛のアンには入っていること、それが隠喩になっていること。そして老いたマシューにアンが「私が男の子だったら」と言ったとき『「わしは一ダースの男の子よりも、アンの方がいいよ」マシューはアンの手をとり、掌でぽんぽんと優しくたたいた。「いいかい、一ダースの男の子よりもだよ」』このところでもう涙腺崩壊。私は2階に駆け上がって、寝ているをゆすり起こして「この宿、レイチェル・リンド夫人の宿やったってよ」「この本にマシューの台詞があるよ」などと泣きながら訴えます。寝ぼけ眼でチラッと写真を見たTPは「本当、良かったね」と言ってまた眠ってしまいます。運転おつかれさま。

ホテルの周りを見渡しても、シーズンオフで一軒のレストランも開いていない村。何時間経ってもTPは起きないし、私もロブスターでお腹いっぱい。ビールだけを飲みながら、誰もいない宿のテラスで、誰も通らない道を眺めます。波の音がずーっと聞こえています。とっぷりと日もくれて。ところでPEI産のワイン買ったはいいけど、コルクを抜く手段がない。近所を歩いてみると、一軒だけ開いているコンビニが店じまいをしています。店のお爺さんに、ワインオープナーはありますか?と尋ねると「そうさなあ、年に2〜3回は聞かれるけど、ワインオープナーは無いなあ。ちょっと考えてみよう、いや、やっぱり無いなあ」と優しく答えてくれます。マシューの口調で。

夜10時、寝る前にもう一度部屋を出てテラスに降りると、ロビーでサンダーバードに出てきそうないかにもアメリカ人的な中年夫婦と出会います。外に引っかけてあった鍵で入って来たんだな。ハイと声をかけたものの、ハイとだけ返してくれた後はもう目も合わせようとしないので、私も目を合わせようとせずに真っ暗なテラスに出ます。一服しながら、夜空を見上げます。水平線のわずか上、目の前に北斗七星があります。ザザーッと波の音だけが聞こえています。TPはもう起きないのかな。晩ごはん、結局食べなかったな。