今回の旅行準備は、リュックを出しているTPに向かって「ちなみにあたし、荷物小さいよ」手ぶらのブームがなかなか去らないので、パンツと靴下をひと組だけ、後は日記帳だけをずた袋に入れます。見るからにメラッと嫉妬心を燃やしたTPも、それならオレも!と通勤用の小さな肩掛けカバンに本とパンツだけを入れて出発しました。身軽っていい。
今日も朝からお布団畳みのおじさんは「道って何であんなに混むんだろ。やってらんねーよ、帰りは3時間かかる」と愚痴たっぷりに布団を蹴るように畳んで押し入れに戻して行きます。さ、朝風呂に浸かろう。そして宿を後にしよ。人生のほろ苦さを味わわせてくれた旅館、もう二度と来ることはないけれど。到着したとき、鍵のあまりの大きさに二人で腰が砕けるほど笑わせてくれたし。
風邪薬を飲んでも熱が引かない。すぐ近くのロープウェーを上って熱海の街を眺めていると、この風邪も熱海のせいに思えてくる。楽しみにしていた秘宝館も、春画以外はワンパターンで何だか元氣が奪われて行く。下界に戻って海沿いを歩いているうちに、小さな声で「あたし・・・熱海、ダメかも」と言ってしまいました。楽しんでいるTPを傷つけてしまうことを承知で。ちゃんと言わないと、二人で暮らしているのだから、我慢が積み重なることほど辛いことはないから。でもそのことでTPもあたしの陰氣さに嫌氣がさすかも知れない。それでも。
TPは私を海沿いのベンチに座らせておいて、ひとりでサンデッキの先までテクテクと歩いて行って、しばらく海を覗いて写真を撮っている様子。長い時間が経って遠くからおいでおいでと手を振っているので近寄ってみると、青い熱帯魚の群れがそれはキレイに集まっていました。
じっと海を眺めていて氣づいたのは、あたしの心が閉じているんだ、ということでした。胸をすっと張ってみます。海の風を胸いっぱいに吸い込んで、波のキラキラを眺めて、砂浜を裸足で歩いているとあら不思議、心がすっかり軽くなっています。駅前の味のある喫茶店でお昼を食べて、思いきって新幹線に乗って帰ることにしました。二人で新幹線に乗ることは初めてです。乗り込んでみると、あれほど長い時間をかけてやってきた熱海ですが、ビュンビュンと品川まですっ飛ばして電車は走り続けます。二人でニコニコと、やばいね、新幹線にはまりそうやね、と途中で富士山を眺めながら、アッと言う間に品川へ到着していました。到着は2時10分。晩ごはんの駅弁を買って、いつもの部屋に戻るといつもの日曜日に戻る。ぐうぐう昼寝して起きると日が暮れていました。非日常ってたまには良いものですね。海って、人を癒す絶大なパワーがあるんだな。
帰ってみると高校時代の友人やRCやがお誕生日メールをくれていました。これからも共に「変化してゆく世界」を楽しみましょう*と。明日からもがんばろ。そして色んな感情を差別したり無理に閉じ込めたりせずに、素直に生きて行こう。変化を恐れずに味わおう、どの感情も全部が丸ごと、この身でしか得られないかけがえのないものなのだから。誕生日旅行は、私を少しだけ大人にしてくれたのかも知れません。プッまた風邪引いちゃって、効かない薬で少しセンチメンタルになっている、それだけの今だけの感情かも知れないけれど。明日はどんな日になるかな?楽しみー