MOCA

帰りの便が違うので、YちゃんもKちゃんも帰った、今日はひとりで行動するんだろうなーと思いながら二度寝三度寝でロビーに降りてホテル前で買ったアイスコーヒーを飲みながら、現代美術館「MOCA」への行き方についてネット検索していると、Y君が降りてきました。「今日、みんなどうする感じなんでしょうね」。そりゃそうでしょう、不安でしょう。団体行動すべきか、それとも別行動すべきか。私もそのことがとても氣がかりだったので、あえてひとり行動をするつもり。

Y君には、現代美術館に行くと言うと、面白そうだなー、自分も行ってみたいなーと言うので、一緒に行く?と聞くと「他のひとにも呼びかけてみましょう」とチャットでグループを作って居残り組に「観光行くひと」などと呼びかけています。あまり人数が増えても。昨日一緒に踊ったI君と、No.1キャバ嬢のようなMちゃんが、コースにはウィークエンドマーケット入っていますか?などと参加を表明しています。4人ならいいか。ちょうどウィークエンドマーケットはMOCAのある駅と同じだし、いざとなったらMちゃんI君、Y君の3人で買い物してもらって、私ひとりで現代美術館に行けばいいかな。それはそれで。

ところが、一度は行くと言ったはずのMちゃんは、二度寝してしまったのか既読になりません。仕方ないので近所のスーパーを冷やかしたり、BTSの1日乗車券を買ってみたりしてもMちゃんとは連絡がつきません。Mちゃんが宿泊しているはずの駅まで戻ってみます。1時間半も経ったでしょうか、Mちゃんが「ロビーで他のひとたちと合流したので、誘ってもいいですか?」との連絡。私は携帯を持っていないので、いいよと答えてもらっても、また音信不通。しばらくして「先に行ってください、後から追いつきます!」との連絡が。Mちゃんを誘ったI君は、何だかすみませんなどと言っていますが、いいじゃないの3人で、行きましょう!とBTSに乗り込みます。どうする?ふたりはマーケットがいい?と尋ねても、ふたりとも滅多に美術館へは行かないから行きたいと言ってくれるのでうれしい。

MOCAがあるのは、BTSの終点。だんだんと高層ビルがなくなって、ゴミゴミした住居になって、王宮やら学校やらスタジアムやら公園やらが見えて、またしばらくすると再開発された地域になって。3人ともバラバラの席に座って、ウトウトするころようやくモチットと読めるような駅に到着しました。

ここからはタクシーで向かいます。駅を出ると巨大な公園。3人で芝生に寝転がります。何だか楽しい。池の巨大ナマズに餌をやったりします。もうお昼。アジアでは屋台が平氣なひととそうでないひとがいるので氣を遣うところですが、3人とも屋台が平氣なのでマーケット前の屋台で昼ごはん。


おいしい〜!食べ放題の菜っ葉をガンガン入れて、魚肉団子の入った春雨スープを食べ干します。私とは世代の違うY君、I君と一緒で氣を遣うかな?と心配していましたが、だんだんと楽しくなってきました。マイペースで喋ることができます。

来る前に宿の受付で教えてもらったのは、トゥクトゥクには乗らない方がいいとのこと。前にTPと来たときはトゥクトゥクばっかり乗っていたけれど、もう時代は変わったんだ。I君がウーバーでタクシーを手配してくれて、郊外だけれど再開発されているらしい道を通っていよいよMOCAへ。入場料の250Bを払って入場した瞬間、6階建てビルのエントランス、吹き抜けの天井、アイボリー色に塗られた壁、出迎えてくれる彫刻、どれを取っても「来てよかった〜!」と思える雰囲氣、Y君など足が張り付いて動けなくなっています。それぞれに、一定の距離を保ちながらもときどきおしゃべりをして、それぞれに好きな絵を探します。

嬉しいことに、ふたりとも好きな絵を見つけて、写真に撮ったり動けなくなったりして、ハマりそうなどと言っています。あー、よかった。私も美術館に来ると同僚との緊張感なんかすっかり消え去って、自由にどこまでも心が伸び伸びとします。来る前は、1時間くらいでサクッと観ようなどと言っていたのに、最後の階までたっぷりと観て降りると、3時間以上が経っていました。またウーバーを呼んでもらって、来てよかったね〜、楽しかったね〜と言いながら帰りのタクシーに乗り込みます。

本当は、もう帰ったひとにお勧めされた「マンダリンオリエンタル」のカフェに行こうと言っていましたが、ホテルに預けた荷物を受け取ると、もう日が暮れかかっています。現地の支社のひとと偶然会って、これから3時間ほどお勧めの場所ありますか?と尋ねると、ちょっと考えたあとで「・・・!、ルーフトップバー、絶対に行ってください。ここから歩いて行けるマリオットホテルの最上階にあるんですけど、今の時間が最高です。夕日が沈む前に、ドリンクが高いので1杯だけ飲んで、1000円くらいだと思います、でも絶対にお勧め」とのことで、暮れかかった夕焼けを追いかけるように、隣りの駅まで歩きます。

おー、最後の夕日が沈むところに間に合った。夜が広がって、一杯ずつ頼んだカクテルを飲みあいこして、写真を撮って。こんな景色、TPも連れてきたいな、もしまた来ることがあったら絶対に一緒に来よう。今日は良かったね〜、何から何まで楽しかったね〜

あと2時間くらい。どうやらこのあたりは日本人街らしく、周りには日本食レストランしかありません。奥の方に進むと、夜のお姉さんたちが出勤前に利用しているテント張りの食堂がありました。瓶ビールを1本ずつ頼んで、夜のお姉さんたちに話しかけたり、仕事の話しをしたり結婚の予定があることを教えてもらったり注文に苦労したりしながら、この食堂にはトイレが無いというので目の前の高級そうなホテルに宿泊客のフリをして忍び込む冒険を順番にやって、なんでもかんでも、アハハッと笑って楽しい。普段は同期入社の若者というカテゴリーに入れてしまっていたのかも知れない、こうして接してみると何とふたりとも個性豊かなこと、I君は一見お祭り好きの美人好きだけれど会うひとを大切にするタイプ、Y君はじっくりと消化して自分の考え方と照らし合わせるタイプ。この国に来る前は、何で行くと言ったんだろうと後悔しきり、来た後もひとりで行動することばかり考えていじけていたけれど、まさかこんな時間が得られるとは思ってもみなかった。

またウーバーでタクシーを呼んでもらって、いつの間にかギリギリになってしまった搭乗時間、ゲートに駆け込んでそれぞれ別の席に座ります。帰りは5時間だそう。キャバキャバなMちゃんは「わざわざホテルの駅まで来てくださったんですってね、本当にすみませーん!次回は絶対に門さんツアーに参加させてください」と営業トークで話しかけてくれます。私はオヤジ扱い?最高なのは、3人がけの隣りの席に誰も来なかったこと。手すりを上げて、毛布を被って、ほぼフルフラットにして寝ながら帰ります。

夜食のサンドイッチは、チーズが分厚い素朴なスナックでした。コンコンと眠りながら、機上の人は羽田に向かいます。