運命を信じる

はっきり言って、おつとめさきに行きたくない。おはじきをポーンと弾き飛ばすように異動させられて、座席表を見たらひとりだけぽつんと離れた席で。だからこそ1時間早く出社します。自分の運命を信じよう。元の席からパソコンやらお人形やら石やらセロテープ、カレンダーをリュックに詰めて、ひとり、引っ越しです。

 

誰もいないオフィス、新しい席をウェットティッシュで拭いて、キャビネットは要らないから空いているデスクに移動させて足元を広くして、グループチャットに「本日◯◯に引っ越して参りました。どうぞよろしくお願いいたします」とメッセージを送信。ぽつぽつとハートマークのお返事が届いてひとまずホッとします。

 

しばらくすると新しい上司が出勤「どうしてそんな離れたところに座ってるんですか、こっち来てくださいよ」と自分の隣の席を空けてくれ、今まで喋ったことのないチームのひとたちも出勤してきて「この部署ひとが少なかったんでうれしいです」とか言ってくれて、朝礼にも参加しちゃって馴染みます。

オフィスビル内の公共のベンチでゆっくりとコンビニ弁当を食べて、バラバラになった元同僚のひとたちの席にも行ってみたりして、辞めたいというひとのしごとのうち、やらなくて良いものを決めて、勝手に決めたひとたちの責任だから無理することないよとかおしゃべりして。

 

元上司数人からの慰めを受け、新上司の上司もわざわざ挨拶に来てくれ、元同僚からヘルプを受けて問題解決して喜ばれて。いじけ心で凝り固まっていた気持ちが、少しずつほぐれて、新しい場所に染み込んで、馴染みます。おやつなんかおすそ分けしてもらったりして。運命を信じる。人生はそう悪くない。